商品説明
労働をめぐるシスターフッド ― プロレタリア文学・フェミニズム・労働研究
辻 智子・水溜真由美 編著
定価:4,950円(本体価格4,500円+税)
判型:A5 並製
頁数:240
ISBN:978-4-8329-6903-2
Cコード:C3036
発行日:2025-03-25
●本書の特徴
多くの女性にとって、生きることは働くことでもあった。戦間期における女性労働の多様化は女性たちの中に分化と序列を生んだ一方で、その立場の脆弱性を浮き彫りにした。女性たちはこの状況にどう向き合ったのか。「文学」「運動」「研究」の分野で活躍した7名の女性と「無名」の女性労働者たちに光をあて、労働が媒介した女性同士の連帯の一端を明らかにする。
●目次
凡例
序章 戦間期日本における女性労働とシスターフッド………執筆者一同
はじめに
1 戦間期における女性労働
2 連帯へのアプローチ:文学・運動・研究
3 本書の構成
4 女性同士の連帯:シスターフッドへの模索
おわりに
第1章 中本たか子:『モスリン横丁』における女性知識人と女性労働者のシスターフッド………水溜真由美
はじめに
1 1929年、亀戸に集う女性知識人
2 作品の梗概と本章の観点
3 女性知識人と女性労働者の関係
4 愛情の問題と女性間の軋轢
5 女性知識人間のライバル関係
おわりに
第2章 佐多稲子:女性労働の空間におけるコミュニケーションへの着目………上戸理恵
はじめに
1 搾取の空間への着目と孤立からの離脱:「キャラメル工場から」、「お目見得」、「怒り」、「レストラン洛陽」
2 労働争議における言語実践:「女店員とストライキ」、東京モスリン労働争議五部作
おわりに
第3章 松田解子:「おりん」三部作における女性労働者像………水溜真由美
はじめに
1 鉱山における女性労働
2 鉱山における女性労働をめぐるジレンマ
3 鉱山事務所のタイピスト
4 鉱山における小学校教師
おわりに
第4章 奥むめお:「家庭婦人」と「職業婦人」を架橋する女性たちの協同運動………亀口まか
はじめに
1 新たな女性運動の道へ
2 協同運動への模索
3 婦人セツルメントの開始
4 働く婦人の家の設立
5 消費組合運動の継続
6 協同運動の試み
おわりに
第5章 桟敷ジョセフィン(よし子):倉紡万寿工場の女子寄宿舎・教化係として………岸 伸子
はじめに
1 桟敷よし子と日本女子大学校社会事業学部
2 「先進的」倉紡万寿工場の特徴:寄宿舎と自治制
3 企業内厚生事業を担った「桟敷良子」
4 「産業合理化」に直面した桟敷よし子と女子労働者
5 争議団621名とともに“起つ”
おわりに
第6章 丸岡秀子:『日本農村婦人問題』が描いた悲惨な農村母性………広瀬玲子
はじめに
1 丸岡秀子の生い立ち:原点としての農村
2 丸岡重堯との出会いと理論の模索時代
3 産業組合中央会に勤務:全国の農村を歩く
4 権利としての母子保護:「母子保護の一視角」
5 『日本農村婦人問題』初版の序文
6 『日本農村婦人問題』の概要
7 農村母性の悲惨
おわりに:悲惨にあえぐ農村婦人へのエールとして
第7章 三瓶孝子:『日本綿業発達史』が描いた紡績女性労働………広瀬玲子
はじめに
1 三瓶孝子の生い立ちと女性労働への関心の萌芽
2 『日本綿業発達史』に見る女性労働の叙述
おわりに
第8章 女性労働者たち:繊維産業における労働運動と表現………辻 智子
はじめに
1 女性労働者にとっての読み書き
2 東京モスリン紡織沼津工場と労働組合
3 女性労働者たち
4 労働組合の教育運動
5 地域の婦人運動としての広がり
おわりに
あとがき
ならべ読み年表:本書でとりあげた女性たちの歩み
執筆者紹介
●執筆者紹介
上戸 理恵(うえと りえ)
札幌大谷大学社会学部講師。
専門は日本近現代文学、現代女性文学。
著作に、「松田青子『持続可能な魂の利用』論」新・フェミニズム批評の会編『〈パンデミック〉とフェミニズム』(翰林書房、2022年10月)、「佐多稲子「お目見得」論」『札幌大谷大学社会学部論集』(12号、2024年3月)など。
亀口 まか(かめぐち まか)
龍谷大学文学部教授。
専門はジェンダー研究、社会教育史。
著作に、『河田嗣郎の男女平等思想』(白澤社、2020年)、「女性労働と児童保護の視点からみる1944年保護者不在家庭児童調査の成立過程」『社会教育学研究』(第58号、2022年6月)など。
岸 伸子(きし のぶこ)
札幌女性史研究会代表。
専門は地域女性史(社会運動)。
著作に、「「王子主婦連」の成立と意識変革」『クァドランテ四分儀』(第17号、2015年3月)、「社会運動家を志した保健婦桟敷よし子への“旅”」『女性史研究ほっかいどう』(第4号、2010年8月)など。
辻 智子(つじ ともこ)
北海道大学大学院教育学研究院教授。
専門は教育学(青年期教育・社会教育)、女性史。
著作に、『繊維女性労働者の生活記録運動』(北海道大学出版会、2015年)、矢口徹也・辻智子『日本の文化と教育』(放送大学教育振興会、2023年)など。
広瀬 玲子(ひろせ れいこ)
北海道情報大学名誉教授。
専門は近代日本思想史・女性史。
著作に、『植民地朝鮮における愛国婦人会』(有志舎、2023年)、『帝国に生きた少女たち』(大月書店、2019年)など。
水溜 真由美(みずたまり まゆみ)
北海道大学大学院文学研究院教授。
専門は日本近代文学・思想史。
著作に、『日本の近代思想を読みなおす4 女性/ジェンダー』(東京大学出版会、2024年)、『堀田善衞乱世を生きる』(ナカニシヤ出版、2019年)など。
(本書刊行時の情報です)
試し読みはこちらからどうぞ↓
https://note.com/hokkaido_up/n/nc6bd85b79a20