商品説明
ウェルビーイングの社会学
櫻井義秀 編著
定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
判型:A5 並製
頁数:320
ISBN:978-4-8329-6887-5
Cコード:C3036
発行日:2022-11-10
●本書の特徴
ウェルビーイングという言葉を初めて聞いた方もおられるでしょう。ウェルビーイング(Well-being)は「幸福」とも訳されますが、人が健康で安心して暮らせる状態を示す言葉です。そのために支援する制度が福祉や社会保障です。パピネス(Happiness)ほどの高揚感はないかもしれませんが、安寧といったおちついた心持ちが幸せの実感に近いかもしれません。
本書は、従来の社会学の面目を一新するウェルビーイングのライフコース的アプローチとその課題について概説するという新しい社会学のテキストです。現代社会の課題を他人事ではなく、自分の問題として受けとめ、幸せに生きられるようになるために、世界中の苦難に直面する人々に対して想像力を働かすことができるようになるため、生き方に生かしていただきたいと思います。
●目次
「ウェルビーイングの社会学」を学ぶ人のために
第1章 ウェルビーイングとライフコース――その視点と射程………櫻井義秀
1 ウェルビーイングとは何か
2 ウェルビーイングの国際比較
3 ライフコースと世代
4 人新世のウェルビーイング
第2章 誕生から思春期まで――「子ども」、「家族」、「教育」の変容と多様性………猪瀬優理・川又俊則
1 社会的に作られる自己
2 社会における発達と教育
3 多様な子ども観と多様な子ども
4 ウェルビーイングと育ちとの関係とは
第3章 子どもの貧困――社会が子どもの権利を守るために………遠山景広
1 子どもの生きる社会と貧困問題
2 貧困の基本的な考え方
3 子ども期の貧困とその影響
4 日本社会の中の貧困
第4章 若者のウェルビーイング――多様化する若者とその幸福像………カローラ・ホメリヒ・清水香基・翁 康健
1 「若者」をとりまく社会状況
2 不平等な競争と見えない先行きの中の若者
3 若者のウェルビーイング
4 若者とインターネット空間
第5章 生きがいの探求とカルト――メンタル・キャピタルとレジリエンス………櫻井義秀
1 カルト問題とは何か
2 精神の呪縛――マインド・コントロール
3 メンタル・キャピタルを高める
4 精神のレジリエンス
第6章 職業生活とストレス………佐藤千歳
1 職業生活のウェルビーイング
2 国際比較からみた日本の労働環境
3 職場のストレスとハラスメント
4 働く人の権利と労働組合
第7章 社会のバロメーターとしての自殺現象――個人レベルと集団レベルから自殺を考える………樋口麻里
1 メンタルヘルスと自殺
2 自殺の起こりやすさに影響する社会の力
3 自殺が起こりやすい社会とは
4 自殺リスクへの対応
第8章 結婚――多様化するライフコース・家族と幸せのかたち………工藤 遥
1 結婚とは
2 結婚の個人化
3 家族の多様化
4 結婚と個人の生き方
第9章 キャリアとワーク・ライフ・バランス――家事・育児とジェンダー………坂無 淳
1 キャリアとは
2 ワーク・ライフ・バランス
3 性別役割分業
4 子育てとライフキャリア
第10章 障がいとウェルビーイング――障害者の暮らし・学び・就労………中西尋子
1 日本における障害者
2 障害者にとって生きやすい社会か?
3 障害者の学び・仕事
4 障害があっても暮らしやすい社会に
第11章 病いと向き合う人々のウェルビーイングと支援のあり方………道信良子
1 病いと社会科学
2 病いと子ども
3 重い病いを抱えて生きる
4 子どもの日常と社会的支援
第12章 社会保障とソーシャルサポート――超高齢多死少子社会における介護問題………横山 穰
1 社会保障とは何か
2 介護とはなにか
3 介護保険制度を利用する
4 ソーシャルサポートと自発的組織
第13章 老いの諸相と居住環境――役割なき役割と準拠集団………片桐資津子
1 ライフコースからみた団塊の世代
2 ライフサイクルにおける高齢期の困難
3 居住環境
4 役割なき役割と準拠集団
第14章 東アジアの高齢者扶養と社会保障――福祉レジーム、家族支援型福祉の限界………金 昌震・伍 嘉誠
1 東アジアにおける人口変動とその問題点
2 福祉レジーム論
3 韓国の高齢者扶養
4 香港における高齢者介護の課題と対策
第15章 人生の最終段階とグリーフケア――最期まで生きることを支える支援のあり方………横山聖美・竹中 健
1 人生の最終段階とは
2 残された時間を生きる
3 終末期を支える資源
4 死別による悲嘆とグリーフケア
第16章 データから見る日本と世界のウェルビーイング――指標を通して考えるこれからの社会とウェルビーイング………清水香基
1 ウェルビーイングを測るという視点
2 経済的な豊かさと心の豊かさ
3 各国のダッシュボード開発への取り組み
4 多様なウェルビーイングのかたちを考える
索 引
執筆者紹介
●著者紹介
櫻井 義秀(サクライ ヨシヒデ)
北海道大学大学院文学研究院・教授
専門:比較宗教社会学
〈主要著書・論文〉
『東アジア宗教のかたち:比較宗教社会学への招待』(2022)法蔵館.
『これからの仏教 葬儀レス社会:人生百年の生老病死』(2020)興山舎.
『宗教とウェルビーイング:しあわせの宗教社会学』(2019)北海道大学出版会(編著).
『しあわせの宗教学:ウェルビーイング研究の視座から』(2018)法蔵館(編著).
猪瀬 優理(イノセ ユリ)
龍谷大学社会学部・教授
専門:宗教社会学
〈主要著書・論文〉
『敗戦から高度成長へ:敗戦~昭和中期』(2021)春秋社(第5章).
『宗教とウェルビーイング:しあわせの宗教社会学』(2019)北海道大学出版会(第7章).
『ともに生きる仏教:お寺の社会活動最前線』(2019)講談社(第5章).
「新宗教におけるジェンダー:信仰体験談と生命主義的救済観」(2019)『宗教研究(Journal of religious studies)』93(2)、213-240.
「ジェンダーと宗教:そのかかわりを問う問いに着目して」(2018)『現代宗教』2018、201-223.
Gender and New Religions in Modern Japan, 2017, Japanese Journal of Religious Studies 44 (1), 15-35.
川又 俊則(カワマタ トシノリ)
鈴鹿大学学長
専門:宗教社会学、教育社会学
〈主要著書・論文〉
『仏教の底力:現代に求められる社会的役割』(2020)明石書店(第2・4・5章).
『宗教とウェルビーイング:しあわせの宗教社会学』(2019)北海道大学出版会(第10章).
『岐路に立つ仏教寺院:曹洞宗宗勢総合調査2015 年を中心に』(2019)法蔵館(共編著).
『健康を科学する実践研究:読めばできる!養護教諭の研究ガイド』(2018)大学教育出版(共編著).
遠山 景広(トオヤマ カゲヒロ)
札幌大谷大学短期大学部保育科・講師
専門:家族社会学
〈主要著書・論文〉
「子育てサロンの利用状況にみる母親の子育て意識の相違」(2020)『現代社会学研究』33、23-42.
カローラ・ホメリヒ(Hommerich, Carola)
上智大学総合人間科学部社会学科・教授
専門:社会的・主観的ウェルビーイング
〈主要著書・論文〉
Social Change in Japan, 1989-2019 : Social Status, Social Consciousness, Attitudes and Values, 2021, Routledge(編著).
『分断社会と若者の今』(2019)大阪大学出版会(第5章、共著).
Determinants of Interdependent Happiness Focusing on The Role of Social Capital: Empirical Insight from Japan, 2022, Japanese Psychological Research, 64(2), 205-221.(共著)
Impact of COVID-19 Pandemic on Household Income and Mental Well-Being: Evidence from a Panel-Survey in Japan, 2021、『理論と方法』36(2)、260-278(共著).
清水 香基(シミズ コウキ)
北海道大学大学院文学研究院・助教
専門:宗教社会学
〈主要著書・論文〉
Modernization in Asia: The Environment/Resources, Social Mobilization, and Traditional Landscapes Across Time and Space in Asia, 2021, World Scientific(Chapter 8).
『宗教とウェルビーイング:しあわせの宗教社会学』(2019)北海道大学出版会(第6章、共著).
「宗教団体への所属が幸福感に及ぼす影響:『宗教と主観的ウェルビーイング』に関する調査データの分析から」(2020)『現代社会学研究』33、1-22.
翁 康健(オウ コウケン)
北海道大学大学院文学院・博士後期課程
専門:宗教社会学、華僑華人研究
〈主要著書・論文〉
「脱共同体社会における民俗宗教のダイナミズム:タイ華人宗教の動態からみる」(2022)『北海道大学大学院文学院研究論集』21、197-216.
「福建省出身の老華僑と新華僑の協力による神戸普度勝会の継承」(2020)『北海道大学大学院文学院研究論集』19、293-311.
「中国宗族組織と民間信仰:祖先崇拝と神祇祭祀の相補的機能を中心に」(2018)『現代社会学研究』31、1-18.
佐藤 千歳(サトウ チトセ)
北海商科大学商学部・教授
専門:現代中国研究、宗教社会学
〈主要著書・論文〉
『中国・台湾・香港の現代宗教:政教関係と宗教政策』(2020)明石書店(第4章).
『アジアの公共宗教:ポスト社会主義国家の政教関係』(2020)北海道大学出版会(第2章).
「宗教の「利用」から「監督」への後退:習近平政権の宗教政策からみる政教関係の変化」(2019)『21世紀東アジア社会学』2019(10)、11-27.
「基督教信仰和残障児童教育(プロテスタント信仰と障がい児教育):面対弱勢群体主内草根機構的挑戦和可能性」(2018)『中国法律與宗教観察』10(2)、61-78.
樋口 麻里(ヒグチ マリ)
北海道大学大学院文学研究院・准教授
専門:社会的排除論、福祉社会学
〈主要著書・論文〉
『いまを生きるための社会学(いまを生きるためのシリーズ)』(2021)丸善出版(第2章).
Social Change in Japan, 1989-2019 : Social Status, Social Consciousness, Attitudes and Values, 2020, Routledge(Part 2, Chapter 6).
「人々の脆弱性が社会にもたらすのは負担だけか:フランスの精神医療福祉従事者への質的調査を通した『ケアの互酬性』の再考」(2022)『北海道大学文学研究院紀要』167、31-74.
工藤 遥(クドウ ハルカ)
拓殖大学北海道短期大学農学ビジネス学科・助教
専門:家族社会学、福祉社会学
〈主要著書・論文〉
「地域子育て支援におけるNPOの役割:東京都世田谷区の事例から」(2021)『拓殖大学論集 人文・自然・人間科学研究』45、45-64.
「『子育ての社会化』施策としての一時保育の利用にみる母親規範意識の複層性」(2018)『福祉社会学研究』15、115-138.
「都市部における地域子育て支援の利用実態:ひろば型支援の利用者と非利用者の母親の社会的・階層的属性」(2018)『次世代人文社会研究』14、197-218.
坂無 淳(サカナシ ジュン)
福岡県立大学人間社会学部・講師
専門:社会学、ジェンダー研究
〈主要著書・論文〉
『変容するアジアの家族:シンガポール、台湾、ネパール、スリランカの現場から』(2022)明石書店(第2章).
『社会はこうやって変える!:コミュニティ・オーガナイジング入門』(2020)法律文化社(共訳).
「大学院生の悩みとメンタルヘルス:ジェンダーの観点からの統計分析と支援策の検討」(2022)『福岡県立大学人間社会学部紀要』30(2)、1-18.
「女性の労働者協同組合による移民女性のエンパワーメントと連帯─ロンドン・タワーハムレッツ区の事例から」(2020)『社会分析』47、43-5.
中西 尋子(ナカニシ ヒロコ)
大阪公立大学大学院文学研究科都市文化研究センター・研究員
専門:宗教社会学
〈主要著書・論文〉
『社会再構築の挑戦:地域・多様性・未来』(2020)ミネルヴァ書房(第20章).
『異教のニューカマーたち:日本における移民と宗教』(2017)森話社(第10・11章).
「韓国キリスト教の日本宣教:在日大韓基督教会と韓国系キリスト教会群の連続性(研究ノート)(2016)『宗教と社会』22、33-41.
「『女性性』の回復:ある新宗教教団における集団結婚式参加者たちの結婚と結婚生活」(2006)『ソシオロジ』156、103-118.
道信 良子(ミチノブ リョウコ)
福井県立大学看護福祉学部社会福祉学科・教授
専門分野:医療人類学、グローバルヘルス、エスノグラフィ、ヘルス・コミュニケーション
〈主要著書・論文〉
「健康と医療」(2021)『文化人類学 第4版』医学書院(第6章).
『ヘルス・エスノグラフィ:医療人類学の質的研究アプローチ』(2020)医学書院.
「保健医療行動─文化的背景」(2022)『講義と演習で学ぶ保健医療行動科学 第2版』日本保健医療行動科学会、26-27.
Children's decision making in cancer therapy: A long-term observational study, 2021, Pediatric International 64 (1), e14700(共著).
横山 穰(ヨコヤマ ユズル)
北星学園大学社会福祉学部福祉臨床学科・教授
専門:社会福祉援助技術、社会福祉理論。社会福祉の思想と哲学
〈主要著書・論文〉
『ソーシャルワークの実践と理論:その循環的発展を目指して』(2016)中央法規(第5章).
『ソーシャルワーク・スーパービジョン論』(2015)中央法規(第9章).
『人物で読む社会福祉の思想』(2010)ミネルヴァ書房(第29章).
『人間福祉の哲学』(2004)ミネルヴァ書房(第6章).
「ソーシャルワーク研究における理論研究法」(2004)『ソーシャルワーク研究』29(4)、270-277.
「社会福祉の哲学に関する一考察」(2002)『北星学園大学社会福祉学部北星論集』39、1-10.
片桐 資津子(カタギリ シズコ)
鹿児島大学法文学部・教授
専門:老年社会学、福祉社会学
〈主要著書・論文〉
『宗教とウェルビーイング:しあわせの宗教社会学』(2019)北海道大学出版会(第8章).
『しあわせの宗教学:ウェルビーイング研究の視座から』(2018)法藏館(第7章).
「尊厳死の支援体制に関する比較研究:米国のオレゴン州、ワシントン州、バーモント州の事例分析」(2018)『現代社会学研究』31、19-35.
「活動的高齢女性の生きがい獲得とその変遷過程─内省と創発の概念に注目して」(2016)『ソシオロゴス』40、17-40.
金 昌震(キム チャンジン)
札幌大学女子短期大学部・准教授
専門:比較社会学(家族福祉・地域福祉)
〈主要著書・論文〉
『現代中国の宗教変動とアジアのキリスト教』(2017)北海道大学出版会(第2章).
「韓国における少子化と子育て支援:ソウル市の子育て中の親に対するインタビュー調査を通して」(2020)『札幌大学総合論叢』50、41-57.
「過疎地域における高齢者福祉とソーシャルキャピタル:莞島郡における高齢者福祉施設を事例に」(2017)『日本文化研究』62、93-116.
伍 嘉誠(ゴ カセイ)
北海道大学大学院文学研究院・准教授
専門:宗教社会学、社会運動論
〈主要著書・論文〉
『多文化社会学解体新書:21世紀の人文・社会科学入門』(2021)松本工房(第9章).
「香港における新型コロナについての:考察:市民社会の力」・「【コラム】香港におけるコロナと宗教」(2020)『ポストコロナ時代の東アジア:新しい世界の国家・宗教・日常』勉誠出版.
『中国・台湾・香港の現代宗教:政教関係と宗教政策』(2020)明石書店(第6章).
「香港における抗議活動と新型コロナウイルスへの一考察:「マスク」と「集会」をめぐる議論を中心に」(2021)『日中社会学研究』28、29-46.
「現代アジアにおける宗教の役割と多様性:環境政策、移住民支援、社会運動、ウェルビーイング」(2019)『宗教と社会』25、223-232.
横山 聖美(ヨコヤマ サトミ)
天使大学看護学科・講師
専門:看護学(グリーフサポート)
〈主要著書・論文〉
「【連載】緩和ケア口伝─現場で広がるコツと御法度 地域でグリーフサポートを行うためのネットワークづくりに関する課題」(2019)『緩和ケア』29(6)、537.
「地域でグリーフサポートを行うためのネットワーク作りに関する課題:『グリーフを学ぶ会』勉強会参加者アンケート自由記載からの分析」(2018)Palliative Care Research 1(13), Suppl, 466(共著).
「子育て中にがんで配偶者を亡くした母親が死別後に子どもと生きていく生活の中での体験」(2017)『日本がん看護学会誌』31、82-91.
竹中 健(タケナカ ケン)
九州看護福祉大学大学院看護福祉学研究科・教授
専門:医療社会学、福祉社会学
〈主要著書・論文〉
Why would she act as a volunteer in a Children's Hospice? : One woman's experience in a Scottish Community, 2020, Kyushu Journal of Social Work 3, 19-24.
Why Japan's Hospital Volunteer Program Has Failed: Civil Society or Mobilization?, 2014, Bulletin of Hiroshima Kokusai Gakuin University 47, 1-10.
(本書刊行時の情報です)