商品説明
交差する日台戦後サブカルチャー史
押野武志・吉田司雄・陳 國偉・涂 銘宏 編著
定価:3,300円(本体価格3,000円+税)
判型:四六 並製
頁数:360
ISBN:978-4-8329-3414-6
Cコード:C1095
発行日:2022-03-31
●本書の特徴
文学、映画、オタク文化、ミステリなど、台湾において戦後日本のサブカルチャーがどのように受容され土着化していったのか、また、台湾から日本のサブカルチャーは何を逆輸入しようとしたのか。戦後から現代にいたるサブカルチャー史を、日本と台湾双方の観点から明らかにする。
●目次
序:歴史と記憶をめぐる日台戦後サブカルチャー研究………押野武志
従来の研究と本書の目的
歴史と記憶の交差
本書の構成と概要
〔1 歴史の交差〕
1950年代初期の禁書政策と中国語通俗出版………張 文菁
はじめに
1 40年代末から50年代初頭の台湾図書市場
2 空洞化する50年代の図書市場
3 台湾通俗小説の出現へ
おわりに
1970年代アジア系女性アイドル論………押野武志
はじめに──南島オリエンタリズムの回帰
1 1970年代前半のアジア系アイドルの登場とその背景
2 南沙織と南国イメージ
3 鄧麗君と「何日君再来」
おわりに─アイドルと愛国の現在形
台湾ニューシネマにおける歴史表象──侯孝賢とエドワード・ヤンを中心に………趙 陽
1 『悲情城市』における歴史表象の再考
2 『台北ストーリー』における台北の歴史
3 『牯嶺街少年殺人事件』におけるロックンロールの歴史
おわりに
台湾ノスタルジアを超えて──東山彰良と北方謙三………吉田司雄
1 台湾ノスタルジアの流行
2 北方謙三『望郷の道』
3 東山彰良『流』
感情労働からパフォーマンス労働へ──台北「メイド喫茶」の民族誌研究………李 明璁・林 穎孟(大塚麻子 訳)
1 はじめに
2 参照文献と概念分析
3 研究方法
4 研究報告
5 まとめ
〔2 表象の交差〕
台湾は『マジンガーZ』で何をしたのか………横路啓子
1 台湾における「日本」の意味
2 『マジンガーZ』から『無敵鉄金剛』へ
3 子供の頃の思い出としての『無敵鉄金剛』
4 記号としての「無敵鉄金剛」
5 成り上がる文化
SF・ヘテロトピア・グローバルな近代性──映画「神龍飛俠」シリーズのSF的想像力………楊 乃女(熊 雨青 訳)
はじめに
1 視覚論的転回とグローバルな近代性
2 台湾語SF映画と「神龍飛俠」シリーズ
3 SF映画と近代性
おわりに
日台神仏図像学──キャラクター化する神仏と現代メディア………今井秀和
1 現代日本のキャラクター文化
2 伝統的な神のキャラクター化
3 架空の神のキャラクター化
4 いわゆる「神様」図像
5 日本の流行神とグッズ
6 台湾の神仏キャラクター
7 日台の神仏キャラクターと信仰
ドキュメントコミック、ジェンダー、そしてポスト3・11における情動の政治………涂 銘宏(藤井得弘 訳)
1 災難を表象する図像とエクリチュールの倫理
2 3・11の記録におけるジャンル/ジェンダーの政治
3 萩尾望都とゆうみえこの漫画における3・11の情動の政治
4 ドキュメントコミックにおける「災禍の表象」への省察
おわりに
〔3 ミステリの交差〕
モンスターの越境──台湾ミステリにおける犯罪リビドーの科学的想像力と身体に潜む恐怖………陳 國偉(李 珮琪 訳)
1 科学はミステリ世界の神か、それとも悪魔か?
2 モンスターを作る
3 日本を翻訳する歴史
4 科学の他/牠者化と身体の恐怖
「言えない秘密」をいかに翻訳するか──叙述トリックから見る台湾における日本ミステリの受容………金 儒農(李 珮琪 訳)
1 はじめに
2 「言えない秘密」──世界に対する不信任投票
3 台湾における「言えない秘密」
4 おわりに──叙述の壁は存在するか
妖怪から見る台湾現代ミステリの社会的位置づけ………瀟 湘神(張 可馨 訳)
1 台湾における妖怪ブームの文脈
2 台湾妖怪のブームがなぜ生まれたのか
3 妖怪は近代と共存できるか
4 ミステリの近代性
5 妖怪の近代化
6 結び
あとがき
●著者紹介
押野 武志(オシノ タケシ)
1965年、山形県生まれ。北海道大学教員。
専攻は日本近代文学。
著書に『童貞としての宮沢賢治』(2003年、筑摩書房)、『文学の権能』(2009年、翰林書房)、編著に『日本サブカルチャーを読む』(2015年、北海道大学出版会)、共編著に『日本探偵小説を知る』(2018年、北海道大学出版会)など。
張 文菁(チョウ ブンセイ)
1970年、台湾台南市生まれ。愛知県立大学教員。
専攻は台湾文学、中国語圏通俗小説。
著書に『通俗小説からみる文学史─1950年代台湾の反共と恋愛』(2022年刊行予定、法政大学出版局)。論文に「1950年代台湾の通俗出版をめぐる文芸政策と専業化」(『日本台湾学会報』2016年8月)、「1950年代台湾の通俗小説研究─『聯合報』副刊の連載小説を中心として」(『野草』2018年12月)など。
趙 陽(チョウ ヨウ)
1986年、中国咸陽市生まれ。西安建築科技大学教員。
専攻は映画論、芸術論。
論文に「『牯嶺街少年殺人事件』における画面外」(『層』11号、2019年)、「電影影像的運動与知覚的「現代性」」(『北京電影学院学報』2019年2月)など。
吉田 司雄(ヨシダ モリオ) ※「よし」は正しくは新字(土に口)
1957年、東京都生まれ。工学院大学教員。
専攻は日本近代文学。
編著に『探偵小説と日本近代』(2004年、青弓社)、論文に「代替歴史と情報ネットワークの時代」(『昭和文学研究』2018年3月)など。
李 明璁(リー ミンツォン)
1971年、台湾台北市生まれ。
ケンブリッジ大学キングスカレッジ社会人類学研究科博士課程修了。国立台北芸術大学非常勤講師。サーチライト・カールチャー・ラボを創立、文化研究及び各種応用創作を推進。
著書に『物理学』(2021年、大塊文化)、『読みながら歩く』(2018年、麥田)など。
林 穎孟(リン インモン)
1983年、台湾台中市生まれ。国立台湾大学社会学研究科修士課程修了。
現在、台北市市会議員として教育文化、観光経済、ジェンダー平等、移行期正義等の政策を推進。
共著に『アニメ漫画社会学』(2015年、奇異果文創)、『人間社会学』(2014年、群學)など。
横路 啓子(ヨコジ ケイコ)
1967年、栃木県生まれ。翻訳家。
専攻は台湾文学、日中比較文化。
著書に『抵抗のメタファー』(2013年、東洋思想研究所)、『日台間における翻訳の諸相─文学/文化/社会から─』(2015年、致良出版社)、共著に『異郷としての日本』(2017年、勉誠出版)など。
楊 乃女(ヨウ ナイジョ)
1973年、台湾彰化生まれ。国立高雄師範大学教員。
専攻は英米SF文学、ユートピア文学、ポストヒューマン理論。
論文に「Normality, Death and Posthuman Bodies in Ghost in the Shell and Great North Road」(2020年、『英美文學評論』)、「Time, Mathematization and Hyperobjects in Interstellar」(2020年、『淡江評論』)、編著に『後人文轉向』(2018年、国立中興大學出版中心)など。
今井 秀和(イマイ ヒデカズ)
1979年、東京都生まれ。大東文化大学非常勤講師、蓮花寺佛教研究所研究員。
専攻は日本近世文学、民俗学、比較文化論。
著書に『異世界と転生の江戸』(2019年、白澤社)、訳・解説に『天狗にさらわれた少年』(2018年、KADOKAWA)、『世にもふしぎな化け猫騒動』(2020年、KADOKAWA)など。
涂 銘宏(ト メイコウ)
1969年、台湾台南市生まれ。台湾淡江大学教員。
専攻は西洋近代哲学、東アジア思想、テクノロジーとサブカルチャー論。
共著に『アニメーション文化55のキーワード』(2019年、ミネルヴァ書房)、『後人文轉向』(2018年、国立中興大學出版中心)、『圖像敘事研究文集』(2016年、書林)など。
陳 國偉(チン コクイ)
1975年、台湾基隆市生まれ。台湾の文化研究学会代表理事、国立中興大学台湾文学・トランスナショナル文化研究科教員・ディレクター、同大学台湾人文創造学部学位プログラム主任。
専攻は台湾現代文学、大衆文学、ミステリー、ポップカルチャー、映像論、日台比較文学研究。
著書に『越境と翻訳ルート』(2013年、聯合文學出版)、『ジャンルの風景』(2013年、國立台灣文學館)、編著に『韓国の台湾文学研究』(2018年、中興大學人文與社會科學研究中心&書林出版)、『대만문학:식민의 기행부터 문화의 지평까지』(2017年、한국외국어대학교출판부 지식출판원(HUINE))など。
金 儒農(キン ジュノウ)
1981年、台湾高雄生まれ。中興大学中国文学研究科博士後期課程修了。中山大学「社會實踐與發展」研究センター博士研究員。
専攻は台湾現代文学、大衆文学、ポップカルチャー、カルチャースタディーズ、文学とテクノロジー、ニューメディアと新物質主義。
論文に「大衆文芸雑誌は如何に時代を創出し、さらに保存するのか」(2019年、『台灣文學研究學報』第29期)、『現代科学技術環境における台湾小説の新しい美学の構成』(2018年、博士論文)など。
瀟 湘神(シャオ シャンシェン)
本名は羅傳樵。1982年、台湾屏東生まれ。作家・妖怪研究者。
台湾大学哲学研究科東洋哲学講座修士課程修了。サークル「臺北地方異聞工作室」主催メンバー。台湾史、台湾民俗の研究を行いながら、エンタテインメント小説を創作。
著書に『臺北城裡妖魔跋扈』(2015年、奇異果文創)、『帝國大學赤雨騷亂』(2016年、奇異果文創)、『金魅殺人魔術』(2018年、奇異果文創)、『都市傳說冒險團:謎樣的作家』(2020年、東立)、『魔神仔』(2021年、聯經出版)、エッセイ『植民地の旅』(2020年、衛城出版)、共著に『唯妖論』(2016年、奇異果文創)、『尋妖誌』(2018年、晨星)、アンソロジー『おはしさま』(2021年、光文社)など。
大塚 麻子(オオツカ アサコ)
神奈川県川崎市生まれ。台北在住アート系翻訳者。
女子美術大学卒業後、1997年より台湾に居住。アーチストとして嘉義市立美術館やMOCA台北当代芸術館、水戸芸術館等に出展。国立故宮博物院、台北花博等で日本語翻訳を手掛ける。
熊 雨青(ユウ ウセイ)
1997年、中国貴陽市生まれ。北海道大学大学院文学院修士課程在学。
藤井 得弘(フジイ トクヒロ)
1982年、北海道旭川市生まれ。北海道大学大学院文学院専門研究員。
専攻は中国近現代文学。
共著に『中華文化生活誌(ドラゴン解剖学 竜の生態の巻)』(2018年、関西大学出版会)、論文に「清末小説『鴉片案』論」(『中華文藝の饗宴 『野草』第百号』2018年、研文出版)など。
李 珮琪(リ ハイキ)
1976年、台湾新北市生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。
名寄市役所経済部交流推進課主査。
翻訳に『世界屠畜紀行』(2014年、麦田)など。
張 可馨(チョウ カケイ)
1997年、中国信陽市生まれ。北海道大学大学院文学院修士課程在学。
(本書刊行時の情報です)