商品説明
ヒグマ学への招待 ― 自然と文化で考える
増田隆一 編著
定価:3,960円(本体価格3,600円+税)
判型:A5 並製
頁数:384
ISBN:978-4-8329-7415-9
Cコード:C1045
発行日:2020-03-31
●本書の特徴
ヒグマ学は、ヒグマをキーワードとして、その生物学にとどまらず、ヒグマが生息する北海道や北ユーラシアの自然環境や生物多様性の保全、そしてヒトの文化や現代社会との関係を考える学際的な学問である。ヒグマ学を通して、私たちが自然とどのように共存していくべきかを考える。
●目次
はじめに
序 章──ヒグマ学とは何か………増田隆一
1 動物としてのヒグマ
2 文化におけるヒグマ
3 ヒグマ学におけるヒグマ
4 『ヒグマ学入門』から『ヒグマ学への招待』へ
5 本書の構成と概要
〔第1部 ヒグマと自然環境〕
第1章 ヒグマの生態………山中正実
1 ヒグマは「森のクマさん」じゃない
2 日和見主義の雑食動物
3 サケ・マスを食べるヒグマは大きい
4 春から夏の食物と生息環境
5 秋の食物と生息環境
6 冬眠を行う生活年周期
7 オス・メスの行動および繁殖
8 シカは恵みか災いか
第2章 世界のヒグマと移動の歴史………平田大祐
1 世界のヒグマ
2 ヒグマとホッキョクグマの関係
3 ヒグマとホラアナグマの関係
第3章 想像を超えたヒグマとサケのつながり──互いに影響する生態と進化、そして生態系全体へ………小泉逸郎
1 サケの特徴的な形態と進化
2 クマがサケに与える影響
3 サケがクマに与える影響
4 クマとサケだけでは終わらない─生態系全体への波及
5 研究の注意すべき点──地域差や種差
6 おわりに─生態系管理に向けて
第4章 北海道におけるシマフクロウとヒグマ………竹中健
1 はじめに
2 ブラキストン線を代表する生物
3 アイヌ民族との関わり
4 北海道の開発と生息地の減少
5 シマフクロウの保護
6 シマフクロウの要求する環境とは
7 生息環境の改善の取り組み
8 アンブレラ種としてのシマフクロウ
第5章 市街地とヒグマ………早稲田宏一
1 札幌市における市街地出没
2 市街地出没の背景を探る
3 札幌市におけるヒグマと人の関わりの歴史
4 これからの対策
〔第2部 文化の中のヒグマ〕
第6章 クマ信仰・儀礼はなぜヒグマで顕著なのか………天野哲也
1 はじめに
2 ホッキョクグマ信仰・儀礼
3 クマ信仰・儀礼の古さ
4 おわりに
第7章「熊送り」の動物考古学………佐藤孝雄
緒言
1 「熊送り」の概要
2 「熊送り」儀礼の考古学的痕跡
3 今後の課題
4 結言──期待される研究の新展開
第8章 口承文芸からみたアイヌ文化のクマ………児島恭子
1 アイヌ口承文芸からクマをみるにあたって
2 動物としてのクマ
3 人を殺すクマ
4 守護神としてのクマ
5 口承文芸の中のクマ
第9章 古文書の中のヒグマ………松本あづさ
はじめに
1 17—18世紀の古文書に記された熊皮・熊胆の利用
2 蝦夷地に滞在した和人の古文書
3 19世紀なかばにおける新たな動向
おわりに
第10章 木彫りとなったヒグマ──八雲町の木彫り熊を中心として………大谷茂之
1 はじめに
2 北海道における木彫り熊の発祥
3 旭川近文アイヌ集落における木彫り熊と,道内の様相
4 おわりに
〔第3部 ヒグマとの共存〕
第11章 現代社会におけるヒグマ………間野勉
1 春グマ駆除廃止までのヒグマ管理の歴史を振り返る
2 春グマ駆除廃止前後のヒグマ管理
3 ヒグマという動物
4 事件に学ぶヒグマ管理の考え方
5 渡島半島地域ヒグマ保護管理計画の策定
6 特定鳥獣管理計画へ
7 交通安全対策に学ぶヒグマ対策
第12章 この土地を理解する鍵としてのヒグマ………伊藤健次
1 フィールドでヒグマと出会う
2 野生という存在
3 人の記憶・土地の記憶
4 海と森をつなぐもの
第13章 ヒグマの生活史──飼育と観察記録からの探求………前田菜穂子
1 飼育の歴史
2 のぼりべつクマ牧場での研究の歴史と社会的背景
3 繁殖の記録
4 野外で冬ごもりの実験
5 ヒグマの成長と体測定値
第14章 動物園におけるクマ類の飼育管理と種の保存………福井大祐
1 はじめに
2 動物園で学ぶクマ類の生物学
3 動物園におけるクマ類の個体群管理と種の保存
4 クマ類の飼育管理とアニマルウェルフェア
5 クマ類の疾病、感染症と保全
6 おわりに
第15章 ヒグマを通して自然を学ぶ………表渓太
1 はじめに
2 ヒグマとインタープリテーション
3 博物館でのインタープリテーション
4 ヒグマを観察する
5 ヒグマの痕跡を読み解く
6 安全管理
終 章──これからのヒグマ学………増田隆一
1 北海道から発信する「ヒグマ学」
2 新しい視野を開く学際研究
3 「ヒグマ学」の未来
おわりに
索 引
執筆者紹介
●著者紹介
増田 隆一(マスダ リュウイチ)
1960年 岐阜県に生まれる
北海道大学大学院理学研究科博士後期課程修了(理学博士)
アメリカ国立がん研究所研究員等を経て、
現在 北海道大学大学院理学研究院教授
専門 分子系統進化学、生物地理学
2019年 日本動物学会賞、日本哺乳類学会賞受賞
〈著作〉
『ユーラシア動物紀行』岩波新書、2019年.
『哺乳類の生物地理学』東京大学出版会、2017年.
『日本の食肉類』編著,東京大学出版会、2018年.
『生物学』共著、医学書院、2013年.
『地球と生命の進化学』分担、北海道大学出版会、2008年.
『ヒグマ学入門』共編著、北海道大学出版会、2006年.
『動物地理の自然史』共編著、北海道大学出版会、2005年.
『保全遺伝学』分担、東京大学出版会、2003年.
『Biodiversity Conservation Using Umbrella Species』分担、Springer、2018年.
『The Wild Mammals of Japan』分担、Shoukadoh、2009年.
ほか
山中 正実(ヤマナカ マサミ)
1987年北海道大学大学院水産学研究科博士後期課程中退。博士(人間科学)。
現在、公益財団法人知床財団 事務局長・統括研究員
平田 大祐(ヒラタ ダイスケ)
2017年北海道大学大学院理学院自然史科学専攻博士後期課程修了。博士(理学)。
現在、サンクトペテルブルク大学テオドシウス・ドブジャンスキーゲノムバイオインフォマティクスセンター・博士研究員
小泉 逸郎(コイズミ イツロウ)
2003年北海道大学大学院農学研究科博士後期課程修了。博士(農学)。
現在、北海道大学大学院地球環境科学研究院准教授
竹中 健(タケナカ タケシ)
1998年北海道大学大学院環境科学研究科博士後期課程修了。学術博士。
現在、シマフクロウ環境研究会・代表
早稲田 宏一(ワセダ コウイチ)
1999年北海道大学大学院地球環境科学研究科修士課程修了。
現在、特定非営利活動法人EnVision環境保全事務所研究員
天野 哲也(アマノ テツヤ)
1978年北海道大学大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程退学。博士(文学)。
元北海道大学教授
佐藤 孝雄(サトウ タカオ)
1994年慶應義塾大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。
現在、慶應義塾大学文学部教授
児島 恭子(コジマ キョウコ)
1985年早稲田大学大学院文学研究科史学(日)専攻博士後期課程単位取得満期退学。博士(文学)。
現在、札幌学院大学人文学部教授
松本 あづさ(マツモト アヅサ)
2008年北海道大学大学院文学研究科歴史地域文化学専攻博士後期課程修了。 博士(文学)。
現在、藤女子大学文学部准教授
大谷 茂之(オオヤ シゲユキ)
2011年名古屋大学大学院情報科学研究科博士課程前期課程修了。
現在、八雲町郷土資料館・木彫り熊資料館学芸員
間野 勉(マノ ツトム)
1992年北海道大学大学院農学研究科農業生物学専攻博士後期課程修了。博士(農学)。
現在、地方独立行政法人 北海道立総合研究機構環境科学研究センター自然環境部長
伊藤 健次(イトウ ケンジ)
1991年北海道大学経済学部経営学科卒業。写真家
前田 菜穂子(マエダ ナオコ)
1975年北海道大学理学部生物学科動物学専攻卒業。
現在、ヒグマ学習センター代表
福井 大祐(フクイ ダイスケ)
1998年北海道大学獣医学部卒業。博士(獣医学)。
現在、岩手大学農学部共同獣医学科准教授/一般社団法人 未来を創るどうぶつ医師団理事長
表 渓太(オモテ ケイタ)
2016年北海道大学大学院理学院自然史科学専攻博士後期課程修了。博士(理学)。
現在、北海道博物館学芸員
福井 大祐
1998年北海道大学獣医学部卒業。博士(獣医学)。
現在、岩手大学農学部共同獣医学科准教授/一般社団法人 未来を創るどうぶつ医師団理事長
表 渓太
2016年北海道大学大学院理学院自然史科学専攻博士後期課程修了。博士(理学)。
現在、北海道博物館学芸員
(本書刊行時の情報です)