商品説明
森田 竜義編著
判型: A5 並製
頁数: 304
ISBN: 978-4-8329-8204-8
Cコード: C3045
発行日: 2012-10-24
●本書の特徴
帰化植物は駆除の対象として論じられることが多い。帰化植物は,とりわけ都市に生活する人々のまわりに,こんなにもはびこっているのか? どのような習性をもつがゆえに,帰化植物となりえたのか? 読者の帰化植物に対する眼差しが変わる1冊である。
●版元から
従来の帰化植物観を一新する最新の知見12章
●目次
口 絵
はじめに
第I部 「放浪」と「侵略」を概観する
第1章 帰化植物の生活史戦略——なぜ帰化植物になることができたか?………森田竜義
1.帰化植物概観
2.帰化植物の生活と都市化—セイヨウタンポポはなぜ都市に生えるのか?
タンポポ属の帰化種と在来種の生育地 / 対照的な生活史
3.キク科の放浪種
放浪種とは何か / 「空間的に予測不可能なギャップ」をねらう / 群れからの自由 / 同じ
場所にとどまることも重要な戦術
4.さまざまな生活史戦略
生活史戦略の類型 / 攪乱依存種のもうひとつのタイプ / ネイチャーエネミイとなりうる
競争的攪乱依存種
第2章 帰化植物の孤独な有性生殖——その受粉様式を見る………田中 肇
1.何に花粉を運ばせたら有利か
2.動物に花粉を運ばせるには
マルハナバチと帰化植物の接触は稀だ / 帰化するならハナバチと手を結べ / ガは利用し
やすいスペシャリスト
3.風媒受粉は勝者の象徴
4.もっと確実な方法,同花受粉
5.そのほか
第II部 帰化種と在来種の比較生態学
第3章 オランダミミナグサとミミナグサの比較生態………福原晴夫
1.オランダミミナグサとミミナグサ
2.都市環境に分布するオランダミミナグサ
オランダミミナグサとミミナグサの分布 / 土壌条件
3.生活史の比較
4.小さな軽い種子で分布を広げるオランダミミナグサ
5.両種の種子発芽の特徴
発芽温度の幅はオランダミミナグサの方が広い / 明条件で発芽 / 休眠期間はオランダミ
ミナグサの方が長い / 高温はミミナグサの発芽を抑制 / 真夏の発芽を避けるオランダミ
ミナグサ
6.オランダミミナグサが分布を広げる生物学的要因は何であろうか?
7.オランダミミナグサは都市化の指標種となり得るか
第4章 コスモポリタンな寄生植物アメリカネナシカズラの繁殖戦略………古橋勝久
1.ネナシカズラ属はどのように寄生するか?
2.アメリカネナシカズラの宿主の多様さ
3.宿主植物の抵抗
4.生育地と成長パターンの特徴
5.ネナシカズラの仲間は寄生するのに光を利用する
6.ネナシカズラ属の寄生根誘導に対する光感受性を調べる実験系の開発
7.寄生根誘導に対する光感受性の差異
8.花芽誘導と種子形成の特徴
第5章 踏まれてもなお生き残る,オオバコとセイヨウオオバコの生活史戦略………松尾和人
1.オオバコとセイヨウオオバコの見分け方
2.類似した生態的位置
3.両種の分布特性
4.生育地環境の特色
5.生活史特性の比較
発芽特性 / 成長と乾物分配 113/光環境の変化への反応 / 生育型と葉形
6.森林地域にオオバコが多くセイヨウオオバコが少ない理由
7.“colonizer”としてのセイヨウオオバコの生活史戦略
第III部 攪乱の生態学
第6章 ミチタネツケバナの分布拡大過程をたどる………工藤 洋
1.ミチタネツケバナの生活環
2.ミチタネツケバナの発見
3.帰化植物か?
4.分布の拡大
5.自然分布
6.どのように広がったのか
7.ミチタネツケバナとタネツケバナの生態的な違い
8.日本のミチタネツケバナ
9.新たな研究材料としての可能性
第7章 全世界の耕地で最近問題化してきたヒメムカシヨモギ………伊藤一幸
1.どんな小さな穴にも生える植物
2.どんな農耕地に生えるのか
3.日本で見つかったパラコート抵抗性生物型
4.アメリカ合衆国におけるグリホサート抵抗性生物型の出現
5.コスモポリタン植物の生存戦略
第8章 セイタカアワダチソウは悪者か………榎本 敬
1.類似種との区別点
2.いつ来てどのように広がったのか
3.なぜ急速に分布を拡大しえたのか
生育地 / 風散布種子による侵入 / 地下茎による株の拡大と栄養繁殖 / 地下茎の養分に
よる急速な成長
4.他感作用と自家中毒
5.打つ手はあるか
第9章 観賞用水草ミズヒマワリの恐るべき増殖力………須山知香
1.水槽から飛び出したミズヒマワリ
2.脅威的な増殖力
3.密生できるのには理由がある
4.分布域は拡大する
5.逸出報告が続々と
6.なぜ根絶は困難なのか
7.ミズヒマワリと私たちのこれから
第IV部 新環境への適応のメカニズム
第10章 帰化能力を進化させた球根植物タカサゴユリ………比良松道一
1.モモ・クリ3年,チューリップ8年,タカサゴユリ?年
2.近縁種テッポウユリの起源
3.タカサゴユリの起源
4.タカサゴユリの帰化能力を高めた別の要因—自家和合性への転換
近縁種テッポウユリでも早咲き性は発現する / 球根休眠性の欠失・弱勢化 / 種分化にと
もなう開花期のシフト
第11章 雑種タンポポ研究の現在——見えてきた帰化種タンポポの姿………森田竜義・芝池博幸
1.雑種タンポポの発見
2.雑種タンポポはどのようにして発生するのか?
3.「セイヨウタンポポのほとんどが雑種」は本当だった
4.予想通り三倍体と四倍体の雑種を確認
5.葉緑体はニホン,核はセイヨウ?
6.「雄核単為生殖雑種」の見直し
7.雑種タンポポの外部形態
外総苞片の反曲の程度 / 外総苞片の角状突起と縁毛 / 花粉の有無
8.雑種タンポポの出現頻度と分布
9.雑種タンポポはなぜ広がったのか?
第12章 シロツメクサのクローン成長と集団分化………澤田 均
1.姿かたちを変えるクローン植物シロツメクサ
2.シロツメクサのクローン成長
クローン成長 / 大葉型と小葉型 / 生理的統合
3.クローン成長の分化
シバ-シロツメクサ共存草地 / 大葉型と小葉型のどちらが有利か? / 競争実験 / なぜ小
葉型は排除されないか? / 2通りのパッチ形成経路 / パッチ内のクローン間競争と種子
生産の矛盾 / 草地の魅力
4.シアン化物発生の集団分化
シアン化物発生の仕組み / シアン化物発生の集団分化 / クローン成長と化学的防御
5.人間に翻弄され始めたシロツメクサ
引用・参考文献
索 引
●著者紹介
森田 竜義
1945年 兵庫県宍粟市に生まれる
1971年 東京大学大学院理学系研究科植物学専門課程博士課程修了
現 在 新潟大学名誉教授 理学博士
第1・11章執筆
主 著 花の自然史(北海道大学図書刊行会,1999,分担執筆),雑草の自然史(北海道大学図書刊行会,1997,分担執筆),あさがおのなかはみずがいっぱい(福音館書店,1997),現代生物学大系 高等植物A(中山書店,1983,分担執筆)など
伊藤 一幸
1949年生まれ
神戸大学農学部卒業
神戸大学大学院農学研究科教授 博士(農学)
第7章執筆
榎本 敬
1946年生まれ
岡山大学大学院自然科学研究科博士課程修了
岡山大学資源植物科学研究所准教授 農学博士
第8章執筆
工藤 洋
1964年生まれ
京都大学大学院理学研究科博士課程修了
京都大学生態研究センター教授 博士(理学)
第6章執筆
澤田 均
1956年生まれ
北海道大学大学院農学研究科博士課程単位取得退学
静岡大学農学部教授 農学博士
第12章執筆
芝池 博幸
1964生まれ
京都大学大学院理学研究科博士課程修了
農業環境技術研究所・主任研究員 博士(理学)
第11章執筆
須山 知香
1971年生まれ
金沢大学大学院自然科学研究科博士課程修了
金沢大学自然科学研究科博士研究員を経て岐阜大学教育学部准教授 博士(理学)
第9章執筆
田中 肇
1933年生まれ
都立紅葉川高校卒業
ナチュラリスト
第2章執筆
比良松 道一
1965年生まれ
九州大学大学院農学研究科修士課程修了
九州大学大学院農学研究院助教 博士(農学)
第10章執筆
福原 晴夫
1947年生まれ
名古屋大学大学院理学研究科博士課程修了
新潟大学名誉教授 理学博士
第3章執筆
古橋 勝久
古橋 勝久(ふるはし かつひさ)
1940年生まれ
名古屋大学大学院農学研究科博士課程修了
元新潟大学理学部教授 農学博士
第4章執筆
松尾 和人
1954年生まれ
北海道大学大学院環境科学研究科博士課程修了
農業環境技術研究所・上席研究員 博士(環境科学)
第5章執筆