商品説明
樋口広芳・黒沢令子編著
判型: A5 ソフトカバー
頁数: 306
ISBN: 978-4-8329-8196-6
Cコード: C3045
発行日: 2010-09-10
●本書の特徴
18人の第一線の研究者が,4部15章構成で多角的に紹介する。第I部はカラス科の系統関係に関する紹介である。第II部では,生息環境と環境利用に焦点を当てる。第Ⅲ部ではカラスの食性や,その採食行動が生態系に与える影響などを解き明かしていく。第Ⅳ部では,カラスの社会性や文化,認知能力に関する興味深い知見を紹介する。
●目次
口 絵
まえがき
第I部 系統と進化
第1章 カラス類の系統進化史………Alexey Kryukov・鈴木 仁・Elisabeth Haring
1.カラス科の種の多様性と起源
2.カラス科の分子系統
3.カラス類の地理的分化——ユーラシア大陸における東西分化
4.ハシボソガラスの地理的構造
5.サハリンのカラス類
第2章 カラスの種分化と地理的変異………山崎剛史
1.種の定義と一般系統概念
2.種分化のメカニズム
3.日本のハシブトガラスの地理的変異
4.体サイズの地理的変異とベルクマンの規則
5.カラス類の種分化の特徴
第II部 生態分布と環境利用
第3章 農村におけるカラス2種の環境利用と種間関係………吉田保志子・百瀬 浩
1.営巣の環境利用
2.繁殖成績は何に影響されているのか
3.都市と農村の繁殖状況を比べる
4.ハシボソガラスとハシブトガラスの種間関係
第4章 都市におけるハシブトガラスの局地移動………森下英美子・樋口広芳
1.都市にすむハシブトガラスが嫌われるのは
2.都市にすむカラスの追跡法
3.カラスの背中にPHSを乗せるために
4.飛び立ったカラスはどこへ?
5.カラスの暮らし
6.安定的な食物と不安定な食物
7.都会はカラスの楽園なのか?
第5章 日本におけるミヤマガラスの越冬分布とその変化………髙木憲太郎
1.渡るカラス
2.分布が拡がったミヤマガラス その経緯を探る
3.分布拡大の原因
4.分布の拡大,なぜ東北で折り返したのか?
第III部 食生活と生態系内の役割
第6章 栄養塩の供給から見る,都市におけるハシブトガラスの役割………藤田素子
1.都市環境の生態学的な特徴
2.なぜ都市でハシブトガラスの個体数が増加したのか
3.ねぐらに落とされる窒素・リンはどこから来るのか
4.糞の化学
5.カラスによる施肥効果
第7章 海辺におけるハシボソガラスの採食とその生態学的意義………堀 正和
1.海辺のカラスたち
2.冬—夏——繁殖期前から繁殖期にかけての採食行動
3.夏—秋——巣立ちから繁殖期後の採食行動
4.カラスの採食行動の生態学的意義
第8章 カラスの果樹園
——伊豆諸島におけるハシブトガラス島嶼個体群の生態寸描………長谷川雅美
1.カラスの数と位置を記録する
2.食物を探る
3.カラスが果樹園をつくる?
4.カラスとの交信
5.なわばり内の果樹本数
6.畑のカラスと街のカラス
7.他の島ではどうか
第9章 カラスの特異な食習性と地域食文化………樋口広芳
1.地域と結びついた特異な食習性
2.カラスにとっての地域食文化
3.文化の伝播
第IV部 社会と行動
第10章 伊那谷におけるハシボソガラスの社会………吉田保晴
1.捕獲方法
2.個体識別の方法
3.相手を追い出し,なわばり確保
4.なわばりを持つことができない個体の採食地への出現
5.ねぐらへの集結
6.ねぐら場所の変遷
第11章 集団ねぐらから見たカラス社会の二重構造………中村純夫
1.なわばりを持つものと持たざるもの
2.カラスの一生というのはどのようなものなのだろうか?
3.カラス社会の季節的変動を反映する季節ねぐら
4.季節ねぐらの成立・消滅を,いつ,だれが,どのように決めているのか?
第12章 ハシブトガラスの群れにおける個体間関係とその行動・認知メカニズム………伊澤栄一
1.カラスの社会
2.ハシブトガラスの個体間優劣関係
3.個体間の優劣関係維持の行動メカニズム
4.コンタクトコールを用いた個体認識メカニズム
5.今後に向けて
第13章 ハシブトガラスの識別能力………杉田昭栄
1.実験結果を知る前に知っておくべき事項
2.色の識別能力
3.カラスは○や×などの模様の区別をどれだけできるのか?
4.人の顔写真を見分ける能力
5.識別能力に影響を与える色や空間
6.カラスはグループ分けができるのか?
7.カラスは数や量の識別ができるのか?
8.記憶の長さ
第14章 カラスの遊び………黒沢令子・樋口広芳
1.「遊び」とは—定義
2.カラスの「遊び」事例
3.カラスの遊びのカテゴリー
4.なぜ遊ぶのか?
5.カラスの遊び研究の課題
第15章 人とカラスの文化的共進化………John M. Marzluff・黒沢令子
1.文化的共進化
2.人とカラスの文化的共進化
3.変わる人の自然観
引用・参考文献
索 引
●著者紹介
樋口広芳
1948年生まれ.東京大学大学院農学系研究科博士課程修了.東京大学大学院農学生命科学研究科教授 農学博士.主 著:飛べない鳥の謎—鳥の生態と進化をめぐる15章(1996,平凡社自然叢書),保全生物学(編著,1996,東京大学出版会),これからの鳥類学(共編,2002,裳華房),鳥類学辞典(共編,2004,昭和堂),鳥たちの旅—渡り鳥の衛星追跡(2005,NHKブックス)など.
黒沢 令子
1954年生まれ.北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了.NPO法人バードリサーチ研究員 博士(地球環境科学).主訳書:よみがえった野鳥の楽園—英国ミンズミア物語(1995,平凡社),フィンチの嘴—ガラパゴスで起きている種の変貌(樋口広芳と共訳,2001,ハヤカワノンフィクション文庫),鳥たちに明日はあるか—景観生態学に学ぶ自然保護(2003,文一総合出版),鳥の起源と進化(2004,平凡社)など
伊澤 栄一
1975年生まれ 名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程修了慶應義塾大学大学院社会学研究科准教授 博士(農学)
杉田 昭栄
1952年生まれ
千葉大学大学院医学研究科博士課程修了 宇都宮大学農学部教授 医学博士・博士(農学)
鈴木 仁
1956年生まれ
東北大学理学部生物学科卒業 北海道大学大学院地球環境科学研究院准教授 学術博士
髙木 憲太郎
1977年生まれ
立教大学大学院理学研究科修士課程修了 NPO法人バードリサーチ研究員
中村 純夫
1947年生まれ
静岡大学理学部物理学科卒業 野鳥観察者
長谷川 雅美
1958年生まれ
東京都立大学大学院理学研究科博士課程中退 東邦大学理学部生物学科教授 理学博士
藤田 素子
1978年生まれ
横浜国立大学大学院環境教育学府博士課程修了 京都大学東南アジア研究所特別研究員 博士(環境学)
堀 正和
1974年生まれ
北海道大学大学院水産科学研究科博士課程修了 水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所研究員 博士(水産科学)
百瀬 浩
1956年生まれ
京都大学大学院理学研究科博士課程修了 中央農業総合研究センター鳥獣害研究チーム長 博士(理学)
森下 英美子
1958年生まれ
愛媛大学農学部環境保全学科卒業 文京学院大学環境教育センター研究員
山崎 剛史
1974年生まれ
京都大学大学院理学研究科博士課程修了 山階鳥類研究所研究員 理学博士(京都大学)
吉田 保志子
1971年生まれ
筑波大学大学院環境科学研究科修士課程修了 中央農業総合研究センター主任研究員
吉田 保晴
1955年生まれ
上越教育大学大学院学校教育研究家修士課程修了 駒ヶ根市立飯島小学校教諭
Elisabeth Haring
1960年生まれ
ウイーン大学卒業 ウイーン自然史博物館 Doz. Mag. Dr.