商品説明
鳥の自然史 ― 空間分布をめぐって
樋口広芳・黒沢令子 編著
定価:3,300円(本体価格3,000円+税)
判型:A5 並製
頁数:270
ISBN:978-4-8329-8191-1
Cコード:C3045
発行日:2009-10-10
●本書の特徴
本書は,第1部「日本の鳥類とその由来」,第2部「分布の変遷とその影響」,第3部「分布のあり方を探る」,第4部「広域分布研究と保全・管理」の4部,全体で13章からなっている。空間分布をめぐる研究は,近年,保全をめぐる動きのなかでも注目される生態学の中心課題のひとつである。とくに,希少種の生息条件の解明,生息域の分断・孤立化が個体群の存続に及ぼす影響評価,新たな生息地創出に向けての環境管理,分布や個体数の動向を監視する調査手法の開発などのかかわりのなかで重要な役割を果たしている。本書はこうした問題をも視野にいれながら全体を構成している。担当する執筆者は,関連分野で活躍する17人の主に若手から中堅の研究者である。本書により,読者は鳥類の空間分布をめぐる研究の現時点での到達点を知ることができるだろう。また,章ごとに記述されている課題と展望から,今後の研究の方向性についても知ることができるに違いない。
●目次
口絵
はじめに
〔第1部 日本の鳥類とその由来〕
第1章 日本の鳥類の分布と独自性………樋口広芳・黒沢令子
1.日本列島の自然環境
2.日本の鳥類相の特徴
3.生態的特徴の変化
4.今後の課題
第2章 陸鳥類の集団の構造と由来………西海 功
1.集団の構造と由来とは?
2.形態学的分析
3.DNA分析によるアプローチ
4.生物地理区の境界線
5.今後の課題と展望
第3章 移動能力の高いカモメ類の遺伝的構造………長谷川 理
1.移動能力の高さと遣伝的構造
2.ウミネコとオオセグロカモメの遺伝的特徴の違い
3.大型カモメ類の種間の遺伝的差異
4.カモメ類の形態的特徴と遺伝的分化
5.高い移動能力をもつ生物の遺伝的構造から見えてくるもの
〔第2部 分布の変遷とその影響〕
第4章 遺跡から出土した骨による過去の鳥類の分布復原………江田真毅
1.遺跡から出土する鳥類の骨
2.遺跡出土試料から見たアホウドリ科の分布
3.アホウドリ科の遺跡試料の同定とアホウドリ科の分布
4.アホウドリの分布の現在,過去,未来
5.今後の展望と課題
第5章 オナガの分布域拡大にともなうカッコウとの新たな関係………高須夫悟
1.托卵鳥と宿主の関係
2.托卵鳥と宿主の軍拡競争型共進化
3.カッコウとオナガ
4.オナガとオナガ・カッコウの今後
5.まとめと今後の展望
第6章 外来鳥類ソウシチョウの生態と在来鳥類へ与える影響………天野一葉
1.日本の外来鳥類の現状
2.ソウシチョウとウグイスの営巣環境選択と繁殖成功
3.ソウシチョウと在来鳥類の採食ニッチの違い
4.定着に成功した他の要因
5.在来鳥類への影響
6.外来鳥類の問題と対策
〔第3部 分布のあり方を探る〕
第7章 鳥類の空間分布のあり方………百瀬 浩
1.生息環境から鳥類の空間分布を予測する
2.鳥類の空間分布予測の保全への適用:猛禽類の営巣密度分布
3.鳥類の空間分布予測の個体群管理への適用:カラスの営巣密度予測
第8章 周辺環境が鳥類の生息に及ぼす影響………山浦悠一・加藤和弘
1.生息地パッチの連結性が鳥類に及ぽす影響
2.コリドーによる孤立化の緩和
3.鳥類にとってのマトリクスの役割
第9章 鳥の階層的生息地選択と分布決定プロセス………藤田 剛
1.はじめに
2.スケールと階層性
3.分布決定プロセスのスケール依存性
4.採食地選択
5.繁殖地選択:コロニー営巣とレック繁殖する鳥の分布
6.生息パッチスケール以上の分布決定プロセス
7.「マルチ・スケール生態学」
〔第4部 広域分布研究と保全・管理〕
第10章 広域における生息環境評価と保護区の設定………鈴木 透・金子正美
1.景観生態学の概念
2.GISと空間解析
3.保護区の設定:ギャップ分析
4.北海道におけるクマタカの生息環境評価とギャップ分析:ケーススタディー
5.今後の展望
第11章 広域長期モニタリングにもとづく鳥類分布の時間的空間的変化………植田睦之
1.国外で行われている広域長期の鳥類相調査
2.日本で行われている広域長期の調査
3.広域長期モニタリングヘの新しい手法の導入
第12章 衛星追跡と渡り経路選択の解明………島崎彦人・山口典之・樋口広芳
1.衛星追跡手法の概要
2.渡り鳥とその生息環境の保全に向けた衛星追跡手法の応用
3.渡り性猛禽類の特殊な移動経路とその適応的意義の解明
4.鳥インフルエンザウイルスの宿主となる鳥種の複雑な渡り経路構造
第13章 地球温暖化と鳥類の生活………小池重人・樋口広芳
1.生物季節の変化
2.温暖化による個体数の減少と増加
3.今後の調査の必要性
引用・参考文献
索引
●著者紹介
樋口 広芳(ひぐち ひろよし)
1948年生まれ
東京大学大学院農学系研究科博士課程修了
東京大学大学院農学生命科学研究科教授 農学博士
第1章・第12章・第13章執筆
主著:
飛べない鳥の謎:鳥の生態と進化をめぐる15章 (1996, 平凡社自然叢書),保全生物学 (編著, 1996, 東京大学出版会),これからの鳥類学 (共編, 2002, 裳華房),鳥類学辞典 (共編, 2004, 昭和堂),鳥たちの旅:渡り鳥の衛星追跡 (2005, NHKブックス) など
黒沢 令子(くろさわ れいこ)
1954年生まれ
北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了
NPO法人バードリサーチ研究員 博士(地球環境科学)
第1章執筆
主訳書:
よみがえった野鳥の楽園:英国ミンズミア物語 (1995, 平凡社),フィンチの嘴:ガラパゴスで起きている種の変貌 (樋口広芳と共訳, 2001, ハヤカワノンフィクション文庫),鳥たちに明日はあるか:景観生態学に学ぶ自然保護 (2003, 文ー総合出版),鳥の起源と進化 (2004, 平凡社) など
天野 一葉(あまの ひとは)
1972年生まれ
九州大学大学院比較社会文化研究科博士課程修了
滋賀県立琵琶湖博物館特別研究員 博士(理学)
第6章執筆
植田 睦之(うえた むつゆき)
1970年生まれ
東京農業大学農学部卒業
NPO法人バードリサーチ代表
第11章執筆
江田 真毅(えだ まさき)
1975年生まれ
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了
鳥取大学医学部助教 博士(農学)
第4章執筆
加藤 和弘(かとう かずひろ)
1963年生まれ
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了
東京大学大学院農学生命科学研究科附属緑地植物実験所准教授 学術博士
第8章執筆
金子 正美(かねこ まさみ)
1957年生まれ
北海道大学大学院環境科学研究科博士課程修了
酪農学園大学環境システム学部教授
第10章執筆
小池 重人(こいけ しげと)
1951年生まれ
宇都宮大学教育学部卒業
新潟県立新潟養護学校教諭
第13章執筆
島崎 彦人(しまざき ひろと)
1971年生まれ
長岡技術科学大学工学研究科修士課程修了
国立環境研究所NIESポスドクフェロー
第12章執筆
鈴木 透(すずき とおる)
1975年生まれ
北海道大学大学院農学研究科博士課程修了
酪農学園大学環境システム学部助教 博士(農学)
第10章執筆
高須 夫悟(たかす ふうご)
1967年生まれ
京都大学大学院理学研究科博士課程中退
奈良女子大学理学部教授 博士(理学)
第5章執筆
西海 功(にしうみ いさお)
1967年生まれ
大阪市立大学大学院理学研究科博士課程中退
国立科学博物館研究主幹 博士(理学)
第2章執筆
長谷川 理(はせがわ おさむ)
1972年生まれ
北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了
エコ・ネットワーク研究員 博士(地球環境科学)
第3章執筆
藤田 剛(ふじた ごう)
1963年生まれ
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程中退
東京大学大学院農学生命科学研究科助教 博士(農学)
第9章執筆
百瀬 浩(ももせ ひろし)
1956年生まれ
京都大学大学院理学研究科博士課程修了
中央農業総合研究センター鳥獣害研究サブチーム長 博士(理学)
第7章執筆
山浦 悠一(やまうら ゆういち)
1976年生まれ
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了
森林総合研究所森林昆虫研究領域日本学術振興会特別研究員 博士(農学)
第8章執筆
山口 典之(やまぐち のりゆき)
1972年生まれ
九州大学大学院理学府博士課程修了
東京大学大学院農学生命科学研究科特任助教 博士(理学)
第12章執筆
(本書刊行時の情報です)