商品説明
攪乱と遷移の自然史 ― 「空き地」の植物生態学
重定南奈子・露崎史朗 編著
定価:3,300円(本体価格3,000円+税)
判型:A5 並製
頁数:268
ISBN:978-4-8329-8185-0
Cコード:C3045
発行日:2008-06-25
●本書の特徴
本書は,5部13章から構成されている。
第Ⅰ部では,攪乱とは何かを整理し,ついで,攪乱後に始まる侵入についての数理モデルを紹介する。
第Ⅱ〜Ⅴ部までは,火山噴火初期,火山性荒原,湿原,高山・砂漠・極地における各執筆者の研究成果をもとに具体的事例を紹介する。各章は,大規模から中規模までの攪乱と遷移過程の主要なタイプを網羅している。つまり,第Ⅱ部では火山噴火による遷移初期の植物群集の特徴を,大陸・島,熱帯・温帯・冷温帯に区分し,解説する。
第Ⅲ部では,火山噴火により形成された荒原における植物群集構造にとって,種子植物のみならず地衣類や菌根菌の定着が重要である点について述べる。
第Ⅳ部では,湿原での遷移の特徴と,湿原における火山噴火や火災の影響について述べる。
第Ⅴ部では,継続的に 攪乱を受けている高山・極地・砂漠における植物群集の構造について述べる。
14人の研究者たちが魅力に充ちた研究の最前線を紹介する。地球と生命の相互作用」の視点から,地球進化と生物進化を連結させて自然界の多様性と進化を包括的に理解する新しい自然観を構築する。 宇宙の誕生,地球の誕生,そして生命の誕生から人類の進化、現在までを年代順に体系的にまとめた,地球史・生命史に関する教科書の決定版。
●目次
はじめに
〔第1部 攪乱と遷移の論理〕
第1章 攪乱と植物群集………露崎史朗
1.攪乱直後の植物群集を知ろう
2.それぞれの攪乱の位置づけ
3.植物の起源
4.種数と群集の変化
第2章 数理を通してみた攪乱と生物多様性………重定南奈子
1.パッチ・ダイナミクスーニ次元コンバートメントモデル
2.パッチ内競争とパッチ間移動のパラメータ設定
3.シミュレーションの結果
〔第2部 火山噴火による攪乱と遷移〕
第3章 軽石・火山灰噴火後の植物群集遷移:軽石は軽くない………露崎史朗
1.遷移:世紀にわたる変化を知るには
2.火山
3.有珠山で驚いた
4.セントヘレンズに行ってみよう
5.駒ケ岳が噴火した
6.火山における遷移:とくに,軽石・火山灰堆積地
第4章 熱帯火山の遷移:クラカタウ諸島の120年………鈴木英治
1.島の地形と歴史
2.噴火後の植生遷移
3.どうやって島にやってきたか
4.クラカタウ諸島のこれから
第5章 火山島の一次遷移:三宅島における攪乱と遷移………上條隆志
1.三宅島の噴火の概要
2.三宅島の溶岩上の一次遷移
3.三宅島2000年噴火後の遷移
〔第3部 火山性荒原の攪乱と遷移〕
第6章 菌根菌による植生遷移促進機構………奈良一秀
1.菌根菌とは
2.菌根菌の生理的機能
3.菌根菌と火山荒原
4.先駆木本植物の定着と菌根菌の役割
5.植生遷移と菌根菌
第7章 火山環境と地衣類群集の形成………志水 顕
1.地衣類はどのようにして定着し,成長するのか
2.地衣類群集のなかにも,環境選好性や競争がある
3.地衣類は火山遷移のパイオニアか
4.火山の周りの地衣類群集には,どんな特殊性があるのか
5.地衣類の指標生物としての価値
〔第4部 湿原の攪乱と遷移〕
第8章 湿地生態系の化学的攪乱と植物遷移………原口 昭
1.陸上生態系よりはるかに多彩な湿地生態系
2.なぜ湿地生態系は化学的攪乱を受けやすいのか
3.歴史の証人である泥炭湿地
4.泥炭湿地の形成は攪乱の歴史
5.化学的多機能体としての泥炭湿地
6.化学的難所に生きる生物の特性
7.泥炭湿地おける植生変遷と攪乱の因果関係
8.湿地の行く末
第9章 火山噴火降灰物が湿原に与える影響………Stefan Hotes
1.テフラはなぜ面白いか
2.研究へのアプローチ
3.湿原における古生態学的研究
4.野外実験
5.今後の研究課題
第10章 野火跡の湿原植生回復:釧路湿原における攪乱と遷移………神田房行・佐藤千尋
1.釧路湿原と野火
2.火事による低層湿原植生への影響
3.火事によるハンノキ個体群への影響
4.ハンノキ個体群の天然更新
5.伐採後の更新
〔第5部 極地と砂漠の攪乱と遷移〕
第11章 高山における埋土種子動態と発芽戦略………下野綾子・下野嘉子
1.種子の時間的・空間的分散
2.生育地固有の発芽戦略
第12章 砂漠における一年生植物の生存戦略………成田憲二
1.砂漠とは
2.多年生植物Welwitschia mirabilisの生存戦略
3.一年生植物Brepharis sindicaの生存戦略
第13章 高緯度北極氷河後退域における遷移………中坪孝之
1.高緯度北極氷河後退後の遷移パターン
2.維管束植物の生理生態
3.コケ類・地衣類の生理生態
4.氷河後退域の炭素循環
5.地球温暖化と高緯度北極生態系
引用・参考文献
索引
●著者紹介
重定 南奈子(しげさだ ななこ)
1941年 倉敷市に生まれる
1969年 京都大学大学院理学研究科博士課程修了
現在 同志社大学文化情報学部教授・奈良女子大学名誉教授 理学博士(京都大学)
主著:『侵入と伝播の数理生態学』(1992,東京大学出版会),『新人口論』(1998,共訳,製山漁村文化協会),『持続不可能性』(2003,共訳,文ー総合出版)
露崎 史朗(つゆざき しろう)
1961年 高萩市に生まれる
1990年 北海道大学大学院理学研究科博士課程修了
現在 北海道大学大学院環境科学院准教授 理学博士(北海道大学)
主著:『オゾン層破壊の科学』『地球温暖化の科学』(共に2006,分担執筆,北海道大学出版会)
上條 隆志(かみじょう たかし)
1967年生まれ
1989年 東京農工大学農学部環境保護学科卒業
現在 筑波大学大学院生命環境科学研究科講師 博士(農学)
神田 房行(かんだ ふさゆき)
1948年生まれ
1975年 北海道大学大学院理学研究科博士課程中退
現在 北海道教育大学釧路校教授 理学博士(北海道大学)
佐藤 千尋(さとう ちひろ)
1976年生まれ
2002年 北海道教育大学大学院教育学研究科修士課程修了
現在 埼玉県在住
志水 顕(しみず あきら)
1957年生まれ
1981年 北海道大学理学部生物学科卒業
現在 河合塾専任講師 博士(地球環境科学)
下野 綾子(しもの あやこ)
1973年生まれ
2005年 東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了
現在 国立環境研究所NIESポスドクフェロー 農学博士
下野 嘉子(しもの よしこ)
1973年生まれ
2003年 北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了
現在 農業環境技術研究所特別研究員 博士(地球環境科学)
鈴木 英治(すずき えいじ)
1953年生まれ
1979年 大阪市立大学理学研究科博士課程退学
現在 鹿児島大学理学部教授 理学博士
中坪 孝之(なかつぽ たかゆき)
1960年生まれ
1989年 早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了
現在 広島大学大学院生物圏科学研究科准教授 理学博士
奈良 一秀(なら かずひで)
1968年生まれ
1993年 東京大学大学院農学系研究科修士課程修了
現在 東京大学アジア生物資源環境研究センター助教 博士(農学)
成田 憲二(なりた けんじ)
1965年生まれ
1997年 北海道大学大学院環境科学研究科博士課程修了
現在 秋田大学教育文化学部准教授学術 博士(環境科学)
原口 昭(はらぐち あきら)
1961年生まれ
1992年 京都大学大学院理学研究科博士課程修了
現在 北九州市立大学国際環境工学部教授 博士(理学)
HOTES, Stefan(ホーテス・シュテファン)
1970年生まれ
2004年 ドイツ・レーゲンスプルグ大学生物学研究科博士課程修了
2007年 東京大学大学院農学生命科学研究科特任研究員修了
現在 ドイツ・ギーセン大学生圏システム科学研究科特任研究員 理学博士
(本書刊行時の情報です)