商品説明
小林 学著
判型: A5 上製
頁数: 320
ISBN: 978-4-8329-8207-9
Cコード: C3042
発行日: 2013-03-13
●本書の特徴
蒸気機関発達の歴史は科学と技術の相互関係を検討する上での典型的事例である。科学史家と技術史家の研究はそれぞれに成果を収めてきたが,それらを結合する研究は少なかった。本書は諸要因を整理し19世紀までの蒸気機関の歴史を包括的に詳述した。研究者待望の研究書。
●目次
はじめに
第1章 序 論
1.先行研究と問題設定
2.本書の課題
3.本書の構成
第2章 蒸気機関の多様化——陸用・舶用蒸気機関の作動形態と各用途に対応した機構
1.最初の実用的な蒸気機関——セーバリーとニューコメンの蒸気機関の違い
2.揚水機関から回転機関へ——作業機の変更のためのワットの挑戦
3.舶用蒸気機関の成立——推進方式の模索から確立へ
4.蒸気機関車用機関の発明と普及——高圧蒸気の使用
5.揚水、蒸気機関車用、工場用、舶用における蒸気機関発展形式の違い
6.小括
第3章 高圧機関への展望と限界——水車の理論から熱素説に基づく蒸気機関の理論へ
1.高圧蒸気機関への道
2.大気圧機関から蒸気圧機関へ——ワットによる膨張作動原理の発明と応用
3.水車の改良——水力が持つ最大効率の探求
4.水の持つ動力源——水位と速度と圧力との関係
5.熱の本性に関する理論展開——水柱機関と蒸気機関とのアナロジー
6.熱運動説の登場と高圧蒸気機関開発への影響について
7.デービス・ギディとコーンウォール地方の技術者たち
8.熱素説に基づく熱理論の混迷と「蒸気機関の理論」の誕生
9.カルノーの功績と熱素説の限界
10.「蒸気機関の理論」の展開にインジケーターが果たした役割
11.小括
第4章 舶用ボイラの高圧化と舶用2段膨張機関の開発
1.舶用蒸気機関の高圧化の背景
2.海洋運航を目的とした改良——箱形ボイラの登場
3.船体構造と推進方式の変更による効率の改善とその限界——ブルネルの挑戦
4.19世紀中葉におけるイギリスの船舶技術者の熱に対する理解——熱素説に基づく熱理論
5.イギリスにおける新しい技術革新の土台
6.ジョン・エルダーによる舶用2段膨張機関の導入と熱力学の普及
7.イギリス海軍における高圧蒸気の使用と2段膨張機関について
——コンスタンス号と2段膨張機関
8.箱型ボイラvs.円筒形ボイラ——高圧蒸気への誘因
9.箱形ボイラの終焉——H.M.S. Thundererのボイラ事故(1876)
10.小括
第5章 陸用定置蒸気機関高圧化への技術的諸問題
1.ボイラ事故とボイラ製造技術について
2.18世紀のボイラ製造技術
3.トレビシックによる円筒形1炉筒ボイラ(コーニッシュ・ボイラ)と
使用材料の変化について——鋳鉄からパドル鉄への移行
4.ウルフの2段膨張機関——ウルフの熱に対する理解とボイラ開発とボイラへの鋳鉄の採用
5.アメリカ合衆国における高圧蒸気機関の開発
6.初期の高圧蒸気機関が鋳鉄製であった理由
7.円筒形2炉筒ボイラの開発とボイラ製造技術の発展
8.陸用高圧蒸気機関と円筒形ボイラへの鋼の使用
9.高圧陸用蒸気機関用ボイラにおける材料技術の影響
10.小括
第6章 舶用蒸気機関高圧化への技術的諸問題
1.舶用蒸気機関高圧化への道のり
2.初期の舶用円筒形ボイラ導入の試みとその挫折
3.海水から純水へ——表面復水器の発明、挫折とその再導入
4.舶用3段膨張機関と全鋼鉄製円筒形ボイラ
5.水管ボイラの導入と管の製造技術について
6.帆船から蒸気船の時代へ
7.舶用蒸気機関用ボイラの蒸気供給圧力と石炭消費量の推移
8.小括
第7章 結論
注と文献
引用・参考文献一覧
●著者紹介
小林 学
1975年 福島県大熊町に生まれる
2007年 東京工業大学大学院社会理工学研究科経営工学専攻博士後期課程修了 博士(学術)
2007〜2012年 東京工業大学特別研究員
2008〜2009年 東京工業大学21世紀COE研究員
現在:千葉工業大学工学部教育センター助教
【主論文】
「19世紀後半の舶用ボイラ発達における鋼の重要性について」『科学史研究』第49巻254号(2010年),46−77頁.
「19世紀舶用ボイラ発達過程—ボイラ史の研究方法によせて—」『科学史研究』第44巻236号(2005年),191−202頁.
「ガリレオの材料強度学における研究方法について—『新科学対話』「第一日」「第二日」の詳細検討」日本科学史学会技術史分科会『技術史』第5号(2004年),41−60頁.
「蒸気機関用ボイラの発達と材料技術との関係に関する研究」『科学史研究』第41巻221号(2002年),14−25頁.