商品説明
帰山雅秀・永田光博・中川大介 編著
判型: A5 並製
頁数: 312
ISBN: 978-4-8329-8210-9
Cコード: C3045
発行日: 2013-05-30
●本書の特徴
この本を読めば,あなたはもうドクター・サーモン!
生物としてのサケの魅力はもとより,漁業や放流事業などの産業科学的視点,先住民の生活のなかや伝統的食文化としてのサケなどの社会科学・文化的視点といった,あらゆる視点からサケの魅力にせまります。
●版元から
本書はサケのすべて「サケ学大全」である。
「サケ学salmonology」はサケ科魚類の生活とそれらをとりまく環境との関係を解き明かす科学である。その生活と環境は,遺伝子,分子,細胞,器官,固体,個体群,群集,生態系へと続く階層スペクトルとする生物学を基本とする。また,環境には地球生態系の一構成である人類の営みも含まれ,水産学,食品機能学,魚病学などの産業科学,そして人類の文化学,認知科学,環境科学などの社会科学も含まれる。人類が生態系の機能や,生態系を構成する生物から得ているさまざまなベネフィットのことを生態系サービスといい,基盤,調整,供給および文化の4つのサービスがある。
本書はサケによる私たち人類への生態系サービスについて書かれた本であるともいえる。
●目次
口 絵
第I部 サケの生物学
第1章 生態学
01. サケの生活史戦略:負けるが勝ち?(帰山雅秀)
02. サケ科の仲間はなぜ川と海を行き来するのか?:その回遊と生活史の適応・進化(後藤 晃)
03. サケの仲間たち:サケ類の分類と種の検索(帰山雅秀)
04. シロザケの回遊ルートを探る(浦和茂彦)
05. サケ類の人口学:サケ類の個体群動態(帰山雅秀)
06. 風が吹けば,桶屋ならぬサケがもうかる:北太平洋の環境とサケの生活(秦 玉雪・帰山雅秀)
コラム(1) 野生サケって,どんな魚?(永田光博)
07. 温暖化とサケ(帰山雅秀)
08. 縄文時代からのメッセージ:サケの未来(石田行正)
09. サケは海川森連環のかけはし:サケが陸域生態系を豊かにする(帰山雅秀・越野陽介)
10. サケとクマ:知床世界自然遺産地域内での例(越野陽介・帰山雅秀)
11. 生態系モデルのなかのシロザケ:NEMUROモデルとシロザケの成長(岸 道郎)
12. シロザケとサクラマスの遡上行動の違い(三好晃治・上田 宏)
13. 森のサケ,サクラマスは人と生きるサケ(河村 博)
14. 川の地形がサケの多様性を支えている?:目には見えない水の流れとサケの多様性(卜部浩一)
コラム(2) サケ類のバックキャスト的順応的管理のすすめ(帰山雅秀)
15. サケとダム(福島路生)
16. サケの変異性:ベニザケとその仲間たち(帰山雅秀)
コラム(3) 日本産シロザケの高い遺伝的多様性は健全性の指標になるのか?(帰山雅秀)
17. シロザケ野生魚のリカバリー(帰山雅秀)
第2章 生理学
18. 産卵回遊の遺伝子プログラム(浦野明央)
19. サケの母川記銘・回帰メカニズム(上田 宏)
20. サケの母川のニオイはアミノ酸(山本雄三・上田 宏)
21. サケの成熟をコントロールするホルモン(深谷厚輔・上田 宏)
コラム(4) シロザケ孵化放流の技術と技能(帰山雅秀)
22. 雌の魅惑:フェロモン(山家秀信)
23. サケの第二次性徴 背中の盛り上がりの中身は?(工藤秀明)
24. サケの降海回遊と海水適応:環境か遺伝か(清水宗敬)
25. サケの成長をモニタリングする(清水宗敬)
26. サケと寄生虫:役に立つ虫たち(浦和茂彦)
コラム(5) 2000年前後のシロザケ来遊数の著しい減少(帰山雅秀)
第3章 遺伝学とバイオテクノロジー
27. シロザケ孵化場魚の遺伝的多様性と繁殖成功度(北田修一)
28. DNA分析から見えてきたシロザケ集団の遺伝構造とその成立過程(佐藤俊平)
29. 「サケマス」について(市村政樹・柳本 卓)
30. サケ・マス類の性と生殖のコントロール(荒井克俊)
31. サケの発生工学の可能性(山羽悦郎)
32. サケのゲノムとバイオテクノロジー(藤原篤志)
第II部 サケの産業科学
第4章 水産資源学と経済
33. 孵化事業の光と影:持続的資源管理に向けて(永田光博・宮腰靖之)
34. 当たるも八卦,当たらぬも八卦:サケの来遊予測(宮腰靖之)
35. 放流技術の発展と野生魚(宮腰靖之)
36. 病気に負けないサケ(吉水 守)
37. 健康な種苗を育てるために:放流稚魚の健苗性に関する研究(水野伸也)
38. サケ類とエコ・ラベル(石井幸造)
39. サケの消費と価格(宮澤晴彦)
第5章 食と機能性物質
40. サケは神からの贈り物:サケの体の成分は,ヒトにとって無限の利用方途がある(高橋是太郎)
41. 逆転の発想から生まれた鮭節(阿部 茂)
42. 道産アキサケと佐藤水産(松橋正行)
43. シロザケいずしの風味と安全性:非加熱食品の安全性と乳酸菌の機能(川合祐史)
コラム(6) サケと水産エコラベル(永田光博)
44. 漁場からつくる安全・安心なサケ食品(吉水 守)
第III部 サケの社会科学
第6章 先住民とサケ文化
45. アイヌ民族とサケ(瀬川拓郎)
46. 新潟県村上市 伝統の鮭食文化(吉川真嗣)
47. 水涸れの信濃川に「鮭の道」を拓く(大熊 孝)
第7章 サケの多面的利用
48. 水とかかわり,地域を結ぶ(中川大介)
49. 「命の環」に触れる(中川大介)
50. 死んだサケを見て学ぶこと(東 典子)
51. カムバック・サーモン運動とその後(かじ さやか)
52. サクラマスはダムの魚道を遡上するか?(林田寿文・上田 宏)
53. 外来種問題:種間関係よりも複雑な人間関係(長谷川 功)
54. サケと環境教育(菊池基弘)
55. サケ,コミュニケーション,未来(美馬のゆり)
引用・参考文献
●著者紹介
帰山 雅秀
1949年小樽市生まれ
北海道大学大学院水産科学研究院教授を経て北海道大学国際本部特任教授・北海道大学名誉教授
水産学博士
01., 03., 05.〜07., 09., 10., 16., 17.,コラム(2)〜(5)執筆
永田 光博
1955年根室市生まれ
地方独立行政法人北海道立総合研究機構 さけます・内水面水産試験場場長
博士(水産科学)
33.,コラム(1),(6)執筆
中川 大介
1963年釜石市生まれ
北海道新聞記者
48., 49.執筆