商品説明
関 孝敏・松田光一編著
判型: B5 上製
頁数: 390
ISBN: 978-4-8329-6824-0
Cコード: C3036
発行日: 2016-05-25
●本書の特徴
本書は1993年7月12日発災「北海道南西沖地震・津波」による激甚被災地奥尻町の災害復興過程に関する20年にわたる考察をまとめたものである。従来の人文・社会科学分野の災害研究において,これほどの長期にわたって災害復興過程を跡付けた例は皆無に等しいが,災害多発国日本においてこのような持続的研究は欠かせないものであり,本書はそのモデルとしての意義を提示する。
北海道内在住・元在住の研究者を中心とした執筆者に加え,被災当事者の執筆論稿や,被災直後の役場職員によるメモを基にしてその後の関連団体と自治体の動きを整理した年表など,克明な記録を収録。被災自治体奥尻町の協力を得た共同研究の成果をまとめており,待望の地元研究者の手になる著書といえる。
また,「東日本大震災」を踏まえて2013年に実施した奥尻町住民意向調査の結果から,かつての被災経験とその後の復興過程が町民にどう受け止められているかを詳述している。
●目次
まえがき
第1部 「災害復興・生活再建」過程の諸相(I)──組織・地域コミュニティ・集団
第1章 激甚災害の緊急時における自治体行政組織の対応過程
──北海道南西沖地震における奥尻町の場合………関 孝敏
1.災害の緊急時における自治体行政組織
2.緊急時における災害情報と被災情報
3.緊急時における救助・救援・救護活動
第2章 激甚災害の初期段階における既成型組織の対応過程──自衛隊の救援活動を中心として
………………関 孝敏
1.激甚被災地と既成型組織としての自衛隊
2.「自衛隊協力会」
3.奥尻町における自衛隊と「自衛隊協力会」
4.自衛隊奥尻分屯基地N司令の災害対応
5.自衛隊の災害派遣活動
第3章 激甚被災地における地域生活の再建過程
──北海道南西沖地震における奥尻町青苗地区の場合………関 孝敏
1.激甚被災自治体奥尻町の地域特性
2.激甚被災地区における地域生活の再建過程
第4章 被災世帯・家族の生活再建過程──1993年北海道南西沖地震における………関 孝敏
1.被災世帯の生活再建──「傷つきやすさ」と「復元力」の概念に関連して
2.激甚被災世帯・家族と生活再建地
3.生活再建過程の諸側面
4.生活再建過程における生活再建マトリックスと資源動員パターン
第2部 「災害復興・生活再建」過程の諸相(II)──意識・態度/地域経済・行財政
第5章 町民調査からみる激甚被災地奥尻町の災害復興………松田光一
1.調査の方法と調査対象者の概要
2.調査の分析
第6章 災害復興と地域経済──北海道奥尻町の事例を通してその意味を問う………松田光一
1.奥尻町の災害被害と復興計画
2.奧尻町の産業と就業構造の変化
3.奥尻町の水産業
4.奥尻町のその他の主な産業
第7章 奥尻町における北海道南西沖地震からの復旧・復興と財政
──東日本大震災からの復興に奥尻町の教訓は活かせるのか………横山純一
1.激甚災害法の適用と奥尻町の災害復興計画
2.奥尻町の復旧・復興事業の特徴と内容
3.奥尻町の復旧・復興事業と財政の状況(1)──1993年度から1995年度まで
4.奥尻町の復旧・復興事業と財政の状況(2)──1996年度から2000年度まで
5.義援金の活用と奥尻町の復興
6.奥尻町の復旧・復興事業の小括と奥尻町の現況
第3部 災害研究の多角的視点─地理学・医学・社会学
第8章 人文地理学における災害研究の動向………祖田亮次
1.はじめに
2.空間論としての災害研究
3.人間—環境関係論としての災害研究
4.自然科学と人文・社会科学の協働,あるいは科学と社会との関係性
5.今後の課題
第9章 激甚災害と地域医療──島嶼部を中心として………前沢政次
1.問われる倫理
2.奥尻島地震と医療対応
3.阪神・淡路大震災と東日本大震災における島嶼医療
4.奥尻島の災害復興と次への備え
第10章 災害とGIS………橋本雄一
1.GISに関する国家計画
2.災害に関する基本計画の推移
3.災害のためのGISによる空間モデリング
4.災害に関するGISの展望と課題
第11章 災害史観と災害文化………関 孝敏
1.災害の常襲性と「危険社会」
2.超巨大複合災害と脆弱性
3.災害文化の基層
4.「災害の教訓化」と災害文化の担い手──災害文化の基層の整備・拡充に向けて
5.災害の下位文化──「災害復興の教訓化」の深化のために
第4部 激甚被災地の記憶・記録・教訓化
第12章 災害復興と被災自治体の首長………鴈原 徹
1.南西沖地震・津波災害前の島の状況
2.運命のあの日あの時
3.被災直後の混乱と自治体業務
4.仮設住宅確保・入居者選考・両陛下の行幸啓
5.救援物資・義援金・捜索活動
6.災害復興プロジェクトと基本計画の策定
7.復興計画5ヵ年の始動
8.地震・津波被災後の町財政運営
9.不祥事にみる大きな権力と重い責任
10.町長としての4ヵ年
第13章 激甚被災地奥尻の災害復興・生活再建事業の検証………関 孝敏・新村卓実・明上雅孝
1.時間軸よりみた災害復興・生活再建事業の検証
2.災害復興の反動とひずみの諸相──世帯・家族のレベルを中心として
3.奥尻の「災害復興・生活再建」モデルの吟味
付録1 災害年表(1993年7月12日—1998年3月17日)
付録2 2013年1月「住民意向調査」調査票
索 引
あとがき
執筆者紹介
●著者紹介
関 孝敏
1946年生まれ。北海道大学名誉教授。
単著に『家族と都市移住』(古今書院,2009年)など。
松田 光一
1943年生まれ。北海学園大学名誉教授。
論文に「漁村地域における出稼ぎ労働市場の変化と生活─北海道・熊石町の事例」(『村落社会研究』No. 2,日本村落研究学会,1995年),「高等学校におけるキャリア教育の可能性─職業観・職業意識を育てる視点から」(『北海学園大学学園論集』第143号,2010年),共著に『北海道 季節労働者白書 第3集』(建設政策研究所北海道センター,2003年)など。
横山 純一
1950年生まれ。北海学園大学法学部 教授。
単著に『介護・医療の施策と財源─自治体からの再構築』(同文舘出版,2015年),『地方自治体と高齢者福祉・教育福祉の政策課題─日本とフィンランド』(同文舘出版,2012年),『現代地方自治の焦点』(同文舘出版,2006年)など。
祖田 亮次
1970年生まれ。大阪市立大学大学院文学研究院 准教授。
共編著に『ボルネオの〈里〉の環境学─変貌する熱帯林と先住民の知』(市川昌弘・祖田亮次・内藤大輔編,昭和堂,2013年),単著にPeople on the move: rural−urban interactions in Sarawak(Kyoto and Melbourne: Kyoto University Press and Trans Pacific Press, 2007),共著に『広島原爆デジタルアトラス』(竹崎嘉彦・祖田亮次著,広島大学総合地誌研究資料センター,2001年)など。
前沢 政次
1947年生まれ。北海道大学名誉教授,京極町国民健康保険診療所長。
共編に『診療所で教えるプライマリ・ケア─地域で医師を育てるために』(前沢政次・藤原靖士・高屋敷明由美編,プリメド社,2007年),『家庭医療学ハンドブック』(前沢政次・津田司編著,中外医学社,2004年),共著に『地域空洞化時代における行政とボランティア』(小笠原浩一編,中央法規出版,1996年)など。
橋本 雄一
1963年生まれ。北海道大学大学院文学研究科 教授。
編著に『四訂版 GISと地理空間情報─ArcGIS10.3.1とダウンロードデータの活用』(古今書院,2016年),『QGISの基本と防災活用』(古今書院,2015年),『東南アジアの経済発展と世界金融危機』(古今書院,2014年)など。
鴈原 徹
1943年生まれ。元奥尻町長。
新村 卓実
1953年生まれ。奥尻町長,北海道自治体病院開設者協議会理事,北海道漁港漁場協会理事。
明上 雅孝
1950年生まれ。奥尻商工会会長,㈱明上石油店代表取締役。