商品説明
里麻克彦著
判型: A5 並製
頁数: 284
ISBN: 978-4-8329-6754-0
Cコード: C3033
発行日: 2011-05-25
●本書の特徴
本書は,経済,経営,商学部などの1・2年生を対象とした教科書である。ここ数年来,スポーツや健康を冠した学部,学科の新設や増設はめざましいものがある。スポーツ系社会科学の授業の主流はスポーツマネージメントであり,経営学・マーケティング・ファイナンス・リスク管理・法務・会計学・経済学など,広い分野からなりたっている。本書は,はじめに経済学の分析手法を学んだ後,そのことをスポーツの具体的事例で理解することで,スポーツマネージメントに必要な経済学とファイナンスを学ぶ構成となっている。 すなわち,①ミクロ経済学の理論,②ゲームの理論,③推測統計学とオペレ−ションズ・リサーチ(OR),④デリバティブ理論を中心とするファイナンス理論について,見る・する・経営するスポーツに対応させる。具体的には,①ミクロ経済学の理論では,スポーツサービスと財貨に対する需要と供給,競争や独占などの市場と価格の決まり方を理解する。②ゲームの理論では,個人と人間関係,企業の交渉と競争などの分析理解を通じ,スポーツプレーヤー間の競争について,勝利するための意志決定のしかたを学ぶ。③推測統計学では,メジャーリーグやバレーボールのサインは,統計解析を通じたデータ処理によるところが多いことを例に,過去のプレイ結果を確率変数として処理して将来を推計する方法について学ぶ。そして推測統計の理解から,セイバーメトリックスとして知られるオペレ−ションズ・リサーチの活用例を理解する。④デリバティブ理論では,選手補強や人材発掘は投資の理論に置き換えることが可能であり,基礎となる金融投資の理論を学ぶ。投資の理解から,移籍金や投資価値の評価を伝統的な金融理論とデリバティブファイナンスから具体例をあげて理解する。
●目次
はじめに
序 章 スポーツを経済学で考える
1.スポーツ
2.スポーツ産業
Do(する)スポーツ / Spectate(見る)スポーツ
3.スポーツ支援
4.スポーツ経済学とは
5.経済学とは——何を,どのように,誰のために
6.ミクロ経済学とマクロ経済学
第1章 価格の決まり方
1.消費者はどのように選ぶのか
どちらの満足がより大きいか / (例1)落札価格と満足度 / 効用と無差別曲線 / (例2)野
球のスタジアムでポップコーンとペプシが販売されている / 無差別曲線は交わらない / 予
算制約
2.需要を考える
ポップコーンの需要曲線 / 予算が増えて好みが変わったら / 仕事と自由時間,スポーツする
時間をどう配分するか
3.企業はどのように生産を決めるか
生産計画を立てる / (例3)薄型テレビを製造する / 生産量と必要な総費用 / 企業の生産工
程 / 総費用曲線
第2章 スポーツとミクロ経済学
1.費用とは
平均費用と限界費用 / 平均費用と限界費用の性質 / 損益分岐点と供給曲線 / 生産量と利潤 /
供給曲線と損益分岐点,企業閉鎖点 / 企業閉鎖点
2.メーカー(生産者)はどのように価格を決めるか
スポーツの記録とハイテクギア / スポーツグッズ販売の限界収入と需要線 / スポーツ用品
メーカーの生産量と利潤の決定
3.スポーツグッズの生産量を決める弾力性
弾力性とは何か / 需要の価格弾力性 / 需要線と価格弾力性 / 勝つためには不可欠で高価だ
が替えがないもの / 競争市場と独占市場では価格決定が異なる
第3章 統計学とスポーツ
1.統計データとは
データの整理・統計 / 統計データとは / 母数 / 統計データの特性をつかむ / チームデータ
の整理
2.統計データの特性
データの位置に関する代表値・平均値 / グループ間の比較・視覚的理解・箱ひげ図 / データ
からチームのばらつきを比較する / 分散と標準偏差でばらつきの大きさを比較 / 標準偏差
と偏差値
3.変数同士の関係・相関係数
領域分割,偏差積和,共分散で打点,本塁打,盗塁の関係を調べる / 偏差積和と共分散,相関
係数から相互関連を明らかにする / 相関係数の値と散布の状況
4.確率変数とは,期待値とは
コイントスと確率変動 / 確率とは / 確率の性質 / 確率変数の平均値 / 平均と分散,平均と
期待値を確率変数から考える
5.でたらめさから規則性を見つける
不良品を見つけ出す方法と釣り鐘 / 二頂分布から正規分布へ / 正規分布の特徴
第4章 野球と統計学・セイバーメトリックスで勝つ
1.セイバーメトリックス
セイバーメトリックスの変遷 / セイバーメトリックスの主張 / 評価ポイントの要点
2.優れた打者と投手を評価するもの
セイバーメトリックスのデータ指標——打者-1 / セイバーメトリックスのデータ指標——打
者-2 / セイバーメトリックス指標と打率の評価 / セイバーメトリックスのデータ指標——投
手-1 / セイバーメトリックスのデータ指標——投手-2
3.データ野球と作戦評価
野球選手の出塁確率を求めるには / データ野球,リンゼイ・モデル / データ野球(1)——盗
塁のサインは適当か / データ野球(2)——送りバントのサインは適当か / データ野球(3)
——打てのサインは適当か
第5章 ゲームの理論と戦略
1.ゲームの理論とは
牛丼戦争とスポーツ戦術 / 同時ゲームと基礎的ないくつかの概念 / 戦略と利得 / 利得行列
(ペイオフ・マトリックス) / じゃんけんの利得行列 / プレーヤー・牛丼店の戦略 / 牛丼戦
争と利得 / ナッシュ解
2.ミクロ経済学とゲーム
不完全競争市場の複占企業価格決定モデル / 複占企業の生産活動とクールノー解 / クール
ノー・ナッシュの均衡点 / シュタッケルベルクの複占ゲーム / リーダー・フォロワーとリー
ダー・リーダーの解,利潤
3.社会関係と囚人のジレンマ
囚人のジレンマ / 囚人のジレンマ解決法(1) / 囚人のジレンマ解決法(2)
第6章 ゲームと勝負に勝つために
1.ミニマックスでゲームを解く
男女の争いと2つのナッシュ均衡 / ゼロサムゲーム / 負けを小さくすることを最重要視する
戦略・マキシミニ戦略 / ゼロサムゲームとナッシュ均衡 / マキシミニとミニマックスはゲー
ムの表と裏
2.バッターとピッチャーの対決
野球をゲームの理論で考える / マキシミニとミニマックスが一致せず,純粋戦略解が見つか
らない / 混合戦略とマキシミニの併用 / 混合戦略の解を図から求める
3.サッカーPK合戦の戦略
サッカーとゲームの理論 / キーパーはどちらに跳ぶべきか / キッカーはどっちに蹴るか /
得意な手の内を使わない理由は / 最適応答グラフで解を見つける
4.スポーツと恋愛のゲームの理論
アメリカンフットボールとテニス / 支配戦略,ナッシュ均衡,ミニマックス戦略 / 恋愛とゲ
ームの理論(1)——野球かショッピングか / 恋愛とゲームの理論(2)——講義かデートか
第7章 ファイナンス入門
1.ファイナンスとキャッシュフロー
ファイナンス / キャッシュフロー / 利子と利回り,単利と複利の運用——利子の再投資 / 短
期金利と複利年利率 / インカムゲイン,キャピタルゲイン,利回り / 現在価値と将来価値
2.投資の管理
財産の管理・ポートフォリオ選択 / 最適な現金の保有・何回で換金するか / 貨幣保有の平方
根ルール / 債券と価格の関係 / 現在価値と割引価値による運用比較 / 債券運用と内部収益
率 / 変動金利を予測するには / 株式投資の物差し指標 / 株式価格変動の予想
3.分散投資の理論
リスクを織り込むパフォーマンス評価・シャープの測度 / リスクの分散効果——平均—分散
アプローチ / [Step1] 期待収益率(リターン)を計算する / [Step2] 標準偏差(リスク)
を考慮する / [Step3] 異なる相関係数でリスクを計算する / [Step4] 分散投資の効果
第8章 スポーツファイナンス
1.スポーツ投資とファイナンス
ラクロスチームの招待試合 / 正味現在価値(NPV)ルール / NPVによる不動産投資評価の例 /
ラクロスチームへの協賛金を評価 / 企業クラブチームの相次ぐ廃部・休部
2.契約金のファイナンス
チームを移籍するためには / フリーエージェント / ポスティング制度 / MLBのキャッシュ・
インフローとテレビ広告収入 / MLBのキャッシュ・アウトフロー / MLBのキャッシュ・イン
フローとテレビ放映権・広告料 / 日本人投手移籍のキャッシュ・インフロー / 日本人投手移
籍による収入とNVP,移籍金の推定
3.クラブチームのファイナンス技術・金利対策
証券発行か銀行融資か / デリバティブによる危険回避 / 固定金利と変動金利LIBOR / ファ
イナンステクニック(1) 金利変動リスクの回避——金利スワップ取引 / 金利スワップと金
利オプション / ファイナンステクニック(2) 調達コスト増加の歯止め——キャップ取引 /
ファイナンステクニック(3) 資産価値目減り対策——フロア取引 / キャップとフロアの戦
略的利用法 / ファイナンステクニック(4) カラー / ファイナンステクニック(5) スワッ
プション——より進んだファイナンステク
理解と復習のための参考文献
索 引
●著者紹介
里麻 克彦
大阪学院大学経済学部教授。1955年生まれ。名古屋市立大学大学院経済学研究科博士課程単位修得退学。主著:『入門 国際金融工学』(中央経済社,2005),『金融経済論』(税務経理協会,2001),『金融・為替と価格・投資』(多賀出版,1992;第2版 1995)