商品説明
D.ドーリング,S.シンプソン編著/岩井 浩・金子治平・近 昭夫・杉森滉一監訳
判型: A5 上製
頁数: 624
ISBN: 978-4-8329-6411-2
Cコード: C3033
発行日: 2003-07-25
●本書の特徴
イギリス社会の諸分野における統計の作成,その概念規定と測定および統計利用の諸問題を網羅的に取り上げ,批判的視点から平易に解説した集団労作。日本における統計の作成・吟味・利用の方法に対しても,多大な示唆を与えるであろう。
●目次
日本語版はしがき
はしがき
編者・執筆者紹介
1 序 論
——統計が問題になる
【I 統計を集める】
2 人口センサス
——イギリス最大かつ最高のデータ・ソース?
3 政府の世帯調査
——社会研究に政府の世帯調査を使う
4 政府統計の秘匿:隠すための口実
——政府が本当にオープンであれば、データの秘匿についての懸念は縮小するだろう
5 誰が調査・研究にたいして支出しているのか:イギリスの統計素描〈要約〉
——研究開発は新しい知識を生み出しているが、政府統計では隠されている
6 政府とともに政府統計の普及を
——政府統計の普及における、議論を要する関係
〈I 解 説〉
【II モデルと理論】
7 イギリスにおける優生学と数理統計学の興隆
——統計学の数学理論ですら社会状況と政治目的によってつくられうる
8 科学、統計学および3つの心理学〈要約〉
——心理学では科学的主張があまりにも安易に行われ、かつ信じられている
9 日常生活で統計を使う:はだしの統計家から批判的市民まで
——すべての統計利用者が統計学の専門家である必要はない
10 素人統計家と批判的市民のためのリソース〈要約〉
——社会統計を理解する手助けは近くにある
11 質的データと「客観的」事実の主観性
——主観性に注意をはらわない調査研究は失敗する
12 統計学の及ばぬ世界:異文化の理解と誤解
——統計的方法それ自体は世界を理解するための方法ではない
13 モデルは物語であって現実の生活を表したものではない
——統計的モデルは、研究者が変数の意味を構成するための手段である
〈II 解 説〉
【III 人々を分類する】
14 消えている主体か:政府統計にジェンダーを求めて
——ジェンダー問題は政府統計にどのように現れているか
15 年金政策をもてあそぶ:民営化の正当化〈要約〉
——誤解を招く統計のせいで、引退後のジェンダー格差が強まる
16 民族統計:あったほうがいいか、ないほうがいいか
——民族にかんする質問の選択肢には適切でないものが多い
17 宗教にかんする質問:実態を表すのか混乱を深めるのか
——人口センサスでは宗教は調査しないほうがよい
18 食習慣を測る:国民食料調査についての若干の問題〈要約〉
——平均的食事というようなものはあるのか
19 国際移住を測る:測定装置はまだ動いていない
——ヨーロッパにおける国別比較の事例
〈III 解 説〉
【IV 貧困を計算する】
20 貧困と障害児
——障害児をもつ世帯は「貧しい者のなかでも最も貧しい者」のなかにいる
21 剥奪状態にある地域はどこか:都会と地方で剥奪状態を測定する
——剥奪状態を測定するのはそう簡単ではない。
それは何を見つけ出そうとするかによって決まる
22 ホームレス状態にかんする政府統計の限界
——ホームレスの数は実態からますます乖離している
23 ホームレスの人々にかんする統計の利用と誤用〈要約〉
——欠陥の多い今までの統計的研究のせいで、ホームレスの精神的健康状態は誤解されている
24 犯罪と犯罪の恐怖に「貧しい人たち」のほうが出会いやすいか
——より貧しい人々は犯罪の影響をより多く受けている。失う財産は少ないにせよ
〈IV 解 説〉
【V 健康を評価する】
25 民族間の健康格差を人種の違いのせいにする〈要約〉
——民族性はいわゆる遺伝子的なあるいは文化的な属性を反映しているわけではない
26 政府の保健統計は何を測定しているのか
——保健行政をモニターするだけでは、健康や保健サービスを測定できない
27 健康の不平等にかんする統計について考える
——注意深く調べると健康の不平等が全国的に拡大していることがわかる
28 貧困と健康
——地方統計を利用すれば、イギリスでは富める者と貧しい者の間の健康格差が
広がっていることを明らかにできる
29 統計と国民保健サービスおよび社会サービスの民営化
——統計を使って保健サービスと社会的介護サービスのひそかな民営化を突きとめる
30 労働災害統計
——労働災害にかんする政府統計は安全に適切に測定していない
〈V 解 説〉
【VI 教育を評価する】
31 教育では何を比較するべきなのか
——水準にかんする議論は生産的でないことが多い。
というのは、それらの議論は不可能な課題に焦点を当てているからである
32 教育での実績指標というもの
——実績指標というものの不確かさを知れば、その誤用を防げる
33 読む能力の水準の変化は測定できるか
——読む能力の水準の変化を評価するために、
ナショナル・カリキュラムの水準査定試験が使われている
34 査察システムの査察
——教育水準局の査察統計は、この国の誤った学校像を与えている
35 特殊教育のための特殊な統計〈要約〉
——特殊教育統計は、必要ではなく供給しようとする意欲の程度を測っている
〈VI 解 説〉
【VII 雇用を測定する】
36 労働市場への参加の測定にかんする諸問題
——労働市場がどのように動いているかを理解するためには、
労働市場への参加の測定範囲を定めることが必要である
37 失業・雇用統計の政治と改革
——イギリスで最も有名な2つのデータ系列にかんする問題と解決
38 ミッド・グラモーガンにおける失業と長期疾病〈要約〉
——地方統計は、収集するのは難しいが、重要な結果を生み出すことができる
39 魔術的経済学:雇用予測における「芸術」と「科学」
——雇用予測は的外れ
40 歴史統計によって貧困と経済的困窮を研究する
——統計は社会とともに変化するが、注意深く取り扱うと、比較することができる
〈VII 解 説〉
【VIII 経済と政治】
41 イギリス経済を測る
——測り直せば、イギリスの国民経済計算は企業家の投資不足を示している
42 世帯推計:オオカミの皮を着た羊
——統計は政策設計の議論に情報を与えるべきであって、それに取って代わってはならない
43 軍拡の統計学
——軍事統計は軍事産業の利益に役立つ
44 コンピュータを数える:どうして情報化社会についての情報があまりないのか
——情報産業が情報化社会についてわれわれのもっている知識を大きく決定している
45 イギリス選挙制度と有権者〈要約〉
——有効投票と無効投票
46 社会統計を彩る〈要約〉
——円グラフや棒グラフよりもましなグラフがある!
〈VIII 解 説〉
47 結論:統計と「真実」
——社会統計は社会的生産物である
付録:ラディカル統計学の出版物一覧
参考文献
訳者あとがき
索引
訳者紹介
●著者紹介
D.ドーリング
ジョゼフ・ロウントリー基金の特別研究員や、ニューカッスル大学での英国アカデミー特別研究員として数年の研究生活を送り、現在はブリストル大学地理学校で人文地理の講師。1996〜97年にはS.シンプソンとともに、ラディカル統計学グループのNewsletterの共同編集者を務めた。
S.シンプソン
1989〜92年にラディカル統計学グループを主宰していたが、現在はブラッドフォード市評議会およびマンチェスター大学に勤める。彼の関心は、人口統計学および地域や政府による統計利用にある。
近 昭夫
西南女学院大学人文学部教授
*監訳者
金子 治平
神戸大学農学部助教授
*監訳者
杉森 滉一
中央大学経済学部教授
*監訳者
岩井 浩
関西大学経済学部教授
*監訳者