商品説明
北海道大学大学院法学研究科研究選書 8
ことばと暴力 ― 政治的なものとは何か
中村研一 著
定価:8,250円(本体価格7,500円+税)
判型:A5 上製
頁数:656
ISBN:978-4-8329-6738-0
Cコード:C3031
発行日:2017-03-31
●本書の特徴
暴力とは何か、紛争とは、価値とは、ユートピアとは……。
基本概念を丹念に検討し、人がなぜ政治を必要とするのか、その本質に迫る。細分化する現代政治学の潮流に対して包括的な視野を提示する、待望の一書。テロリズムの事例として9・11を詳細に分析した部を付す。
●目次
凡例
〔第1部 人間文化の問題性〕
第1章 暴力
1.暴力の定義
2.暴力における本能と文化
3.進化における投擲と火の操作
4.投石の神聖化
5.飛翔体――不確定性とあそび
6.誘惑する暴力
7.カラヴァッジョの二重の自画像
第2章 ことば
1.言語と人間
2.具体的な発語行為・社会制度としての言語
3.コミュニケーションとその限界
4.言語記号の機能
5.命名する権力
6.ことばの創造性
7.カオスと記号システム
第3章 価値
1.価値と欲
2.象徴とフェティシズム
3.価値の類型 1 効用価値
4.価値の類型 2 承認価値
5.価値の類型 3 アイデンティティ価値
第4章 共存――政治入門
1.政治の定義――共存の活動
2.バーナード・クリックによる政治の定義
3.政治ではない活動――非政治と反政治
4.秩序というキーワード
5.完全秩序は政治か
6.反政治の類型
7.政治の人間観――可変性
8.政治の偶発性――不確定性と創造性
9.奇蹟を信じないものは現実的でない
〔第2部 ことばと暴力の臨界域〕
第5章 強制権力
1.強制権力――ウェーバーの定義
2.強制権力の成立条件
3.暴力性能とらしさ
4.脅しのことば
5.相互作用の片面成型
6.機能した脅し
7.脅迫者の強いられた選択
8.強制権力の〈より少ない悪〉性
第6章 紛争
1.紛争の三条件
2.両立不能性の認識
3.敵味方構造
4.対立行動
5.原紛争
6.競技ゲーム
7.ゲームの時空
8.議会ゲーム
9.メタ対立による原紛争の代行
第7章 国家の暴力
1.国家と暴力問題
2.法維持の暴力
3.法措定の暴力
4.見せない暴力――握りつぶしの権力
5.魔女裁判――喝采される暴力
6.真理レジームと洗脳する権力
7.暴力のガバメンタリティ
第8章 テロリズム――歴史的考察
1.テロリズムの歴史的変遷
2.テロリズム――ことばの誕生
3.ギロチン――見せる暴力
4.テロリズム現象の起源――1880―1910年
5.爆弾の表象――テロリズム現象を生み出した要因
6.暴力による宣伝――テロリズム現象を生み出したもう一つの要因
7.暴力主体と暴力表象――ロシア
8.英国本土のダイナマイト攻撃
9.テロリズムの定義――暴力の第三者への表象
〔第3部 暴力の劇場〕
第9章 9・11事件
1.前 提
2.北タワー衝突
3.南タワー衝突
4.衝突による破壊
5.タワー崩壊
6.犠牲者たち――大量殺戮
7.反応者――テロリズム取締り担当官たち
8.大統領官邸のディック・チェイニー
9.ペンタゴンと危機の政治利用
第10章 ツインタワーの表象
1.ツインタワーと標的選択の基準
2.どれほど高い楼観にひそんでみても甲斐はない
3.ツインタワーは米国の象徴であったか
4.敵を攻撃する
5.ユセフはなぜツインタワーを標的にしたのか
6.〈タワー倒壊〉の失敗――未完の大量殺戮
7.象徴的収斂点――倒壊と航空機
第11章 攻撃手法――シェイク・モハメドの航空機攻撃
1.標的と手法の掛け合わせ――「航空機攻撃×超高層タワー」
2.カリド・シェイク・モハメド
3.「ボジンカ」作戦
4.アイディアの形成
5.手法の転換――爆弾の限界から航空機攻撃へ
第12章 標的の選択
1.航空機作戦
2.ビンラディンの標的――ペンタゴン
3.戦士的叙事詩の破綻
4.ジハード志願者たち――ハンブルグ4人組
5.標的の焦点移動
6.アタの消した標的――大統領官邸
〔第4部 統治の言語的構成〕
第13章 制度
1.アナーキカルな交差点
2.制度としての交通整理
3.制度の全体構図
4.ルール
5.構成的ルールと制度的事実
6.行動の型
7.制度のコミュニケーション体系
8.信号と共通知識
9.制度における多数性
第14章 儀礼
1.人間は儀礼的動物である
2.象徴によるコミュニケーション体系
3.儀 礼
4.劇場国家――国家の儀礼的起源
5.天皇儀礼――伝統の発明
6.慣習の生成と維持
7.統治構造の諸部分
第15章 主権
1.主権ということば
2.主権の定義問題
3.構成主義概念としての主権
4.主権の一次的構成
5.国際政治における二次的構成
6.国内政治における二次的構成
第16章 ユートピア
1.アトランティスと哲人の理想的統治
2.始源と終末のユートピア
3.モアのユートピア
4.コロンブスの世界地図
5.ニュー・アトランティスとイドラ
6.マルクスとコミュニスト宣言
7.マンハイムのユートピア的思考
8.ユートピアの枯渇
あとがき
索 引
●著者紹介
中村 研一(ナカムラ ケンイチ)
1948年 神奈川県藤沢市生まれ
1972年 東京大学理学部物理学科卒業,74年 同法学部卒業
1974年 東京大学法学部助手
1977~2012年 北海道大学法学部助教授,同教授
1978~80年,90~92年 英国オクスフォード大学セントアントニーズ・カレジ上級研究員
1999~2000年 英国ケンブリッジ大学クレアホール客員フェロー
2003~05年 北海道大学副学長・理事・留学生センター長
現在 北海道大学名誉教授,同公共政策大学院特任教授
〈主著〕
・『地球的問題の政治学』岩波書店,2010年
・『新中学校公民』(中村研一・岡崎哲二ら10名による共著)清水書院,2000年~現在
・『現代政治経済』(中村研一・吉川洋ら計12名による共著)清水書院,1984年~現在
・「連合の安定と変動」篠原一編『連合政治Ⅱ』岩波書店,1984年
・佐々木隆生・中村研一編著『ヨーロッパ統合の脱神話化』ミネルヴァ書房,1994年
・「テロリズムのアイロニー」『思想』2009年4月号
・「リスボン地震と神の退場」『文学』2011年9/10月号
(本書刊行時の情報です)