商品説明
髙橋信隆・亘理 格・北村喜宣編著
判型: A5 上製
頁数: 648
ISBN: 978-4-8329-6791-5
Cコード: C3032
発行日: 2014-04-24
●本書の特徴
環境法の基本的考え方、個別法のポイント、訴訟解説、重大事件についての現場感覚あふれるコメントを1冊に凝縮。最新の研究成果や判例動向をベースに、一定の水準を確保しつつも平易な叙述により、学部授業、学部ゼミから法科大学院まで対応する新しいテキスト。
●目次
はしがき………髙橋信隆
略語一覧
第I部 環境法の基本的考え方
第1章 環境法における権利と利益——環境権論を中心に………亘理 格
環境法における公益と私的権利利益 / 環境権論 / 環境権論再構成の諸類型 / 環境権
論の将来像
第2章 持続可能な開発………磯崎博司
環境と開発 / 持続可能性の確保 / 行政規則の連携
第3章 環境対策の費用負担………大塚 直
環境対策の費用負担 / 環境法における各局面での費用負担 / 課題と展望
第4章 環境リスク………岸本太樹
科学的不確実性 / 環境リスク——法的対応の難しさ / リスク関連情報の収集とリスク
評価 / リスク予防措置の決定——リスク管理 / 再評価と検証 / リスク評価・管理手続
の体系化
第5章 未然防止と予防………堀口健夫
環境損害の事前対処に関わる概念の発展 / 国際法における未然防止と予防の概念 / わ
が国の国内法における展開 / 展望と課題
第6章 環境法における比例原則………桑原勇進
比例原則の意義 / 環境法における比例原則の限界 / 新たな比例原則——過少禁止的比
例原則
第7章 環境法における国と自治体の役割分担………大久保規子
地方分権と環境行政 / 環境分野における地方分権の経緯 / 現行法における国と自治体
の役割分担 / 自治体環境条例の体系 / 今後の展望
環境法事件簿1 景観利益と国立マンション訴訟………河東宗文
景観の権利性について / 国立マンション訴訟とは / 国立におけるまちづくり /
国立マンション訴訟における裁判状況 / 本件マンションが、地区計画および建
築物制限条例に違反する違反建築物であるかどうか / 景観の権利性について /
最高裁判決の問題点
第II部 環境管理の法的手法
第8章 環境法規制の仕組み………北村喜宣
現代行政法としての環境法 / 意思決定へのアプローチ / 規制手法とその概要 / 個別
環境法の基本構造 / 環境法の実施主体としての中央政府と地方政府
第9章 経済的手法………藤谷武史
経済的手法とは何か / 経済的手法の基本原理と構造 / 経済的手法の具体的設計上の論
点と「ポリシー・ミックス」の意義 / 経済的手法の具体例 / 経済的手法の展開可能性
第10章 情報的手法・自主的手法………黒川哲志
環境影響の「見える化」による規制 / グリーン化した市場を利用した規制手法 / 環境
ラベル / 自主的な取組み / 法律に基づく仕組み / 「見える化」が機能するために
第11章 市民参画………山下竜一
環境法における市民参画の必要性 / 市民参画の概念 / 市民参画の機能・種類 / 参画手
続の種類 / 参画手続の適正化 / 市民参画の要件 / 市民参画の効果
第12章 環境アセスメント法の論点とその評価………田中 充
環境アセスメントの導入と法制度の判定 / 環境影響評価の定義と制度運用の実績 / 環
境影響評価法の改正に至る経緯 / 改正法制度の主な手続の流れ / 改正環境影響評価法
における主な論点 / 環境影響評価法の改正における今後の課題 / 環境アセスメント制
度の発展に向けて
環境法事件簿2 沖縄ジュゴンと米国NHPA訴訟
——米国国家歴史保存法の域外適用条項第402条を中心に………関根孝道
米国NHPA訴訟とは / 本訴訟命令の意義 / 第一次中間命令 / 第二次中間
命令 / 今後の展望
第III部 公害対策法の仕組みと課題
第13章 大気・水環境管理における規制的手法………柳 憲一郎
大気・水環境管理における規制的手法 / 大気・水環境管理に関する法的対応 / 大気・
水質に係る環境基準 / 直接規制の枠組み / 汚染源の多様化に対応する環境保全措置 /
直接規制による履行確保の強化 / 大気・水環境管理法の課題
第14章 土壌汚染対策法制の現状と課題………牛嶋 仁
土壌汚染とその対策法制 / 土壌汚染対策法 / 土壌汚染をめぐる訴訟 / 土壌汚染対策
法の運用と実務 / 土壌汚染対策法の課題
第15章 化学物質管理法制の現状と課題………高橋 滋・織 朱實
化学物質規制の特色 / 化学物質管理政策の変遷 / 化審法 / PRTR法 / 化学物質管
理政策の課題
環境法事件簿3 水俣病とこれからの法………北見宏介
水俣病の確認から公害認定まで / 患者らによる訴えの提起と救済 / 水俣病事
件が示すこと
第IV部 廃棄物・資源循環法制の仕組みと課題
第16章 一般廃棄物・資源循環法制の現状と課題………勢一智子
ゴミと法の視点 / モノからの分離——廃棄物法の成立 / 産業廃棄物との分流——一般
廃棄物処理法体制の確立 / 産業廃棄物との部分的合流——リサイクル制度による変化 /
モノへの再合流——資源管理としての一般廃棄物法政策 / ゴミと法の将来——一般廃
棄物・資源循環法制の課題と展望
第17章 産業廃棄物法制の現状と課題………福士 明
産業廃棄物法制の課題 / 産業廃棄物法制と処理の責任主体 / 産業廃棄物法制と適正処
理の法政策——2000年改正廃棄物処理法以前 / 産業廃棄物法制と「産業廃棄物分野の
構造改革」——2000年法以降の法政策 / 循環型社会における産業廃棄物法制の課題
環境法事件簿4 大量生産・大量消費社会と豊島事件………小川一茂
豊島事件の概要 / 調停・判決の内容 / 事件の影響
第V部 自然保護・都市環境管理法の仕組みと課題
第18章 自然環境保全………髙橋信隆
「自然保護」から「生物多様性の保全」へ / 自然保護法制の展開と環境法体系における
位置づけ / 環境政策の新たな枠組みとしての環境基本法 / 保護と利用の調和的両立に
向けた自然保護の方向性 / 環境法としての自然保護法制の確立に向けた若干の課題
第19章 都市環境管理………荏原明則
問題の所在 / 都市計画法制の展開 / 現行法制の概要と問題点 / 都市環境問題 / 都市
環境問題と景観保護 / 残された課題
第20章 公共事業と環境保全………下井康史
公共事業についての法 / 土地収用法 / 都市計画法
環境法事件簿5 アイヌ民族と二風谷ダム訴訟………鈴木 光
訴訟に至るまでの経緯 / 札幌地方裁判所判決 / 事件の意義
第VI部 環境法と隣接学問分野
第21章 環境経済学………有村俊秀
経済学と環境問題 / 市場の効率性 / 市場の失敗——外部不経済 / 政策手段 / 環境権
利の利用——排出量取引 / 各国で進む温暖化対策としての排出量取引制度 / 経済的な
アプローチの可能性
第22章 環境社会学………柿澤宏昭
本章で論じる内容 / 環境社会学の特徴 / 環境問題の社会学研究 / 環境共存の社会学
研究災害と環境社会学 / 環境ガバナンスの構築に向けて
第23章 環境倫理学………交告尚史
生態系への配慮と環境倫理学 / 欧米の環境倫理——奄美「自然の権利」訴訟の訴状から /
関係性理論の創造——奄美「自然の権利」訴訟の第2ステージ / ノルウェーの環境倫理
と環境法 / 生態学的共同体の概念
環境法事件簿6 奄美「自然の権利」訴訟の価値………籠橋隆明
アマミノクロウサギ訴訟の始まり / 事件の背景 / 「自然の権利」 / 自然保護
思想としての「自然の権利」 / 奄美「自然の権利」と原告適格 / 沖縄ジュゴ
ン「自然の権利」訴訟
第VII部 環境保全と被害救済
第24章 環境民事訴訟………前田陽一
損害賠償訴訟 / 差止訴訟 / 今後の課題
第25章 環境行政訴訟………越智敏裕
環境行政訴訟とは / 環境行政訴訟の歴史と分野 / 環境行政訴訟の形式と紛争類型 /
環境行政訴訟の諸課題と課題解決の方向性 / 環境行政訴訟の展望
第26章 公害紛争処理と公害被害補償………下村英嗣
行政救済の必要性 / 環境紛争の行政的解決——公害紛争処理法 / 公害被害の行政的救
済 / 特定原因物質に特化した救済制度——石綿救済法 / 行政救済に関する今後の課題
と期待
環境法事件簿7 西淀川公害訴訟………村松昭夫
大気汚染公害訴訟の経過 / 西淀川公害訴訟の経過 / 訴訟の和解内容と意義 /
積み重ねた貴重な成果
第VIII部 国際環境法と国内環境法
第27章 地球温暖化をめぐる国際法と日本の温暖化法制………高村ゆかり
地球温暖化問題に対処する法の役割 / 地球温暖化をめぐる国際条約の展開 / 日本にお
ける温暖化防止の国内法の展開 / 温暖化をめぐるEUの法制度 / 日本の温暖化法制の
特質 / 国内法制の今後の課題
第28章 生態系保全・絶滅種保護対策………及川敬貴
生物多様性をめぐる国際・国内制度——その増殖と相互関係 / 国際制度の発展——条約
レジームの生成と展開 / 国内制度の発展——条約レジームと基本法の重なりと距離 /
基本法新時代の制度間関係——国内制度から国際制度へのフィードバック
第29章 有害廃棄物対策………鶴田 順・島村 健
バーゼル条約採択の背景とその内容 / バーゼル条約の日本における実施のための国内
法整備 / バーゼル法の運用の実態と問題点 / 再生可能資源貿易の潜在的汚染性と潜在
的資源性
環境法事件簿8 鞆の浦世界遺産訴訟………日置雅晴
提訴の背景 / 訴訟戦略と画期的な差止判決 / 公判における訴訟活動と支援の拡大
結 語 環境基本法体制——20年の歩みと展望………畠山武道
環境基本法の10年と20年 / 環境基本法制定時の日本の環境政策 / 環境基本法体制
10年の成果と課題 / 環境基本法体制20年の成果と課題 / 残された課題——21世紀
の環境法制の拡充に向けて
畠山武道先生 主要著作目録 / 畠山武道先生 略歴
事項索引 / 判例索引 / 執筆者紹介
●著者紹介
髙橋 信隆
立教大学法学部教授
亘理 格
北海道大学大学院法学研究科教授
北村 嘉宣
上智大学法学部教授