商品説明
平和憲法の確保と新生
深瀬忠一・上田勝美・稲 正樹・水島朝穂 編著
定価:3,960円(本体価格3,600円+税)
判型:A5 並製
頁数:402
ISBN:978-4-8329-6701-4
Cコード:C3032
発行日:2008-12-25
●本書の特徴
人権の尊重なくして平和はなく,平和に生きることなくして人権の尊重もありえません。日本国憲法は,国家による平和保障と国家に対する人権保障の一体不可分性を,前文と9条で規定しています。日本国憲法の前文と9条は,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを確認」して,戦争と軍備を放棄し,撤廃しています。人類が絶滅することなく,生き残って発展せよという核・地球時代の最も根源的な至上命題を宣言し,政府の基本政策と法的歯止めとして平和的生存権を確保・尊重することを,国民が監視し,是正・支持しつつ実現する権利と責務があることを明らかにしています。私たちは,50年以上かけて学び考え,批判し創造してきた立憲民主平和主義の理念を,国家百年の大計として培っていきたいと思います。本書は,とくに21世紀に生きる若い世代に対するメッセージとして,平和憲法の確保と新生を願っている憲法研究者と国際法研究者の論文を集成したものです。思想・信条やさまざまの見解を超えて,日本の現実を平和憲法に少しでも近づけていくことを考えている,すべての市民・教員・研究者・学生のみなさんが,実際に本書を手にとって読んでくださることを心より願っています。
●目次
はしがき
〔第1部 平和的生存権の深化と展開〕
第1章 世界平和と人類の生命権確立・・・・・・・・・上田勝美
はじめに戦争と環境と生命権
1 平和と人権に関する普遍的原理
2 人間の生きる権利と人権の生成と確立
3 日本国憲法と生命権
4 生命権を核心とする平和的生存権の登場
5 21世紀の国際社会と人類の生命権確立の課題
第2章 平和的生存権と「人間の安全保障」・・・・・・・・・浦部法穂
はじめに
1 「人間の安全保障」とは何か
2 「人間の安全保障」論の意義
3 日本外交の柱としての「人間の安全保障」?
4 平和的生存権と「人間の安全保障」
第3章 平和憲法の国際協調主義:改憲論への根本的批判のために・・・・・・・・・小林 武
はじめに:軍事的「国際協調」活動の潮流
1 日本国憲法の国際協調主義
2 改憲論における「国際協調」概念の恣意的使用
3 平和的国際協調主義の展望:むすびにかえて
第4章 「平和のうちに生存する権利」と国際人権保障・・・・・・・・・建石真公子
はじめに
1 平和の構築と国際人権保障制度
2 人権条約による国家主権の制限:「合意主義」への制約
3 国連における「平和に対する権利」
おわりに
〔第2部 恒久世界平和の理念〕
第5章 恒久世界平和の理念:社会的責任の時代と国連の再生・・・・・・・・・功刀達朗
1 時代認識と未来構想
2 地球的課題と主要アクター間パートナーシップ
3 新しい多角主義機構の発展
4 平和、安全保障分野での遅れ
結語:国連再生の兆しと日本の進路
第6章 世界平和システムの目標としての「戦争非合法化」・・・・・・・・・河上暁弘
はじめに
1 憲法九条成立の思想的原点・「戦争非合法化」論
2 「戦争」から「法と裁判」へ
3 「戦争非合法化」論者と「世界連邦」論者のめざす国際平和構想
4 「戦争非合法化」論と「世界連邦」論についての検討
第7章 「武力の支配」に代わる「法の支配」・・・・・・・・・藤田久一
はじめに
1 戦争をめぐる憲法と国際法の連係
2 イラク戦争における「力の支配」と「法の支配」
おわりに:21世紀の「法の支配」と憲法
〔第3部 東北アジアの信頼醸成機構の構想〕
第8章 東北アジア非核地帯条約締結の課題・・・・・・・・・山内敏弘
1 問題の所在
2 岐路に立つ核不拡散条約(NPT)体制
3 世界の非核地帯化への動向
4 東北アジア非核地帯条約の締結に向けて
5 むすびにかえて
第9章 台湾海峡をはさむ法律戦:中国「反分裂国家法」の定位をめぐって・・・・・・・・・鈴木 賢
序言
1 「反分裂国家法」制定の経緯
2 「反分裂国家法」の規定内容
3 中国における評価と位置づけ
4 台湾における評価と位置づけ
結語
第10章 日本の植民地支配下の抵抗の軌跡:信頼醸成のためには相手の苦悩を知る必要がある・・・・・・・・・笹川紀勝
はじめに
1 玄錫七外事件の予審終結決定
2 玄錫七外に対する公州地方法院の判決
3 公州地方法院の予審終結決定と判決の分析
むすびとして
第11章 アジアにおける人権メカニズムの試み・・・・・・・・・稲 正樹
1 東南アジア諸国連合における人権メカニズム設立の取り組み
2 南アジア地域協力連合の人権条約と社会憲章
3 東北アジアにおける展望
〔第4部 核廃絶・軍縮実現の国際協調〕
第12章 核兵器の廃絶と通常兵器の軍縮・・・・・・・・・黒澤 満
はじめに
1 核兵器の廃絶
2 日本核武装論への批判
3 通常兵器の軍縮と人間の安全保障
4 兵器廃絶と通常兵器軍縮に向けて
第13章 「永世中立」構想による安全保障政策・・・・・・・・・澤野義一
はじめに
1 永世中立の意義と形態
2 西欧における永世中立国と中立主義国の協調的な安全保障政策
3 コスタリカの非武装永世中立
4 むすびにかえて:スタリカの非武装氷世中立が示唆するもの
第14章 平和政策への視座転換:自衛隊の平和憲法的「解編」に向けて・・・・・・・・・水島朝穂
はじめに
1 自衛隊をめぐる環境変化:新たな「軍拡」へ
2 自衛隊から軍隊への離陸
3 自衛隊の平和憲法的「解編」に向けて
むすびにかえて:まず発想の転換から
第15章 日本国憲法9条をアメリカ憲法に:オーバビー博士のアメリカ憲法修正運動と日本の「第九条の会」運動・・・・・・・・・太田一男
第16章 グローバルな立憲主義の現段階:NGOのプロジェクト"GPPAC"を契機とする若干の考察・・・・・・・・・君島東彦
はじめに
1 GPPACの展開・成果・文脈
2 グローバルな立憲主義に関する若干の考察
おわりに
終章 ポスト経済大国の理念としての立憲民主平和主義:まとめにかえて・・・・・・・・・深瀬忠一
1 発想の原点としての「憲法革命」
2 「明文改憲」の拒否:理想と現実の矛盾
3 実質的改憲に対する国民的批判・抵抗と建設・創造
4 21世紀に選択する3つの道と平和のたたかい
Summary
編者・執筆者紹介
●著者紹介
深瀬 忠一(ふかせ ただかず)/編者
北海道大学名誉教授
上田 勝美(うえだ かつみ)/編者
龍谷大学名誉教授
稲 正樹(いな まさき)/編者
国際基督教大学教養学部教授
水島 朝穂(みずしま あさほ)/編者
早稲田大学法学学術院教授
浦部 法穂(うらべ のりほ)
名古屋大学大学院法学研究科教授
建石 真公子(たていし ひろこ)
法政大学法学部教授
小林 武(こばやし たけし)
愛知大学法科大学院教授
功刀 達朗(くぬぎ たつろう)
国連大学高等研究所客員教授
河上 暁弘(かわかみ あきひろ)
広島市立大学広島平和研究所講師
藤田 久一(ふじた ひさかず)
関西大学名誉教授
山内 敏弘(やまうち としひろ)
龍谷大学法科大学院教授・一橋大学名誉教授
鈴木 賢(すずき けん)
北海道大学大学院法学研究科教授
笹川 紀勝(ささがわ のりかつ)
明治大学法学部教授
黒澤 満(くろさわ みつる)
大阪女学院大学教授・大阪大学名誉教授
澤野 義一(さわの よしかず)
大阪経済法科大学法学部教授
太田 一男(おおた かずお)
酪農学園大学名誉教授
君島 東彦(きみじま あきひこ)
立命館大学国大関係学部教授
(本書刊行時の情報です)