商品説明
北大文学研究科ライブラリ 7
生物という文化 ー 人と生物の多様な関わり
池田 透 編著
定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
判型:四六 並製
頁数:322
ISBN:978-4-8329-3384-2
Cコード:C1039
発行日:2013-03-29
●本書の特徴
文明の発達によって人間社会が多様化すると、生物との関係も、食う・食われるといった単純な関係から、さまざまな形態へと進展を見せ、現代社会ではペットが人間生活の中で重要な役割を果たす一方で、動物の福祉などについても盛んに議論されるようになってきています。文学や歴史の中での人と生物の関係性の研究に加えて、学問分野においても、考古学では動物考古学という分野が確立され、心理学の中でも人間の学習研究に動物を用いる動物心理学が発展するなど、生物学・生態学の分野だけではなく、人文・社会科学の中でも人と生物の諸関係は広く研究対象とされるようになってきました。
●目次
はじめに
〔第1部 歴史・文学の中の人と生物〕
第一章 縄文土器造形に見る‘ヒト-動物関係’の始まり………小杉 康
1 生き物が生きるために生き物を食べる
2 エピソードI:ヒトは狩猟者か、それとも獲物か
3 エピソードII:猟犬の誕生
4 思考実験装置としての「縄文土器型式編年」
5 縄文土器文様発達史(抄)・四つの顔をもつ土器の登場まで
6 4-2=2の土器
7 人体文の出現から人獣土器の成立まで
8 人獣土器の展開
9 縄文中期の神話的思考
10 宮沢賢治の世界へ、ようこそ
第二章 日本最古のテーマパーク?:奈良公園に見る人とシカの関係史………立澤史郎
1 奈良のシカと奈良公園
2 「春日野のシカ」から「春日神鹿」へ
3 保護から管理へ
第三章 生きた唐物:室町日本に持ち込まれ、朝鮮に再輸出された象と水牛………橋本 雄
1 日本に初めてやってきた象
2 政治的象徴物としての象
3 黒象、朝鮮へ贈られる
4 象はなぜ贈られたのか
5 贈った水牛を取り戻す
6 水牛の政治的・文化的寓意
第四章 ありふれた〈動物〉は、いかにしてただならぬ〈怪物〉になるか………武田雅哉
1 〈ありふれた羊〉は〈ただならぬ植物羊〉となる
2 〈ありふれたサイ〉は〈ただならぬ一角獣(ユニコーン)〉となる
3 〈ありふれたゾウ〉は〈ただならぬ……〉に
〔第2部 哲学・思想における人と生物〕
第五章 木は法廷に立てるか:生物を尊重するとはどういうことか………蔵田伸雄
1 動物の解放
2 すべての動物は平等なのか
3 自然の権利訴訟
4 動物解放論
5 非-人間中心主義と生物の内在的価値
第六章 動物たちの孤独………佐藤淳二
1 魔術師とその馬たち
2 声を追放すること
3 吃音者の孤独あるいはイソップのイチジク
4 動物、我らの内なるよそ者
5 自然と文明の差異、オオカミ男はもういない
6 「咳をしてもひとり」、動物のような孤独
7 大いなる分割を越えて
第七章 博物学者アリストテレスとダーウィン:目的論的自然論と進化論は両立可能か………………千葉 惠
1 ナチュラリスト
2 三種類の説明の理論とアリストテレス的可能性
3 ネオダーウィニズム
4 共約性と優越性
5 目的因の存在証明
6 端的必然性と条件的必然性の両立
〔第3部 現代社会における人と生物〕
第八章 人間の幸福と動物の幸福:動物実験者の立場から………和田博美
1 動物実験に対する考え方
2 科学的合理性
3 法規制と自主管理
4 3Rの原則
5 苦痛カテゴリー
6 人道的エンドポイント
7 安楽死処置
8 利用目的による動物の愛護と福祉
9 北海道大学における動物実験
10 適正な動物実験のために
第九章 外来生物のはなし:人間がもたらした生態系への新たな脅威………池田 透
1 多様な問題を包含する外来生物問題
2 外来生物とは?:外来生物の定義
3 日本に外来生物はどれくらい存在するのか?
4 外来生物の導入経路
5 外来生物によって引き起こされる諸問題
6 生物多様性条約と外来生物
7 世界で猛威を奮う外来生物
8 外来生物による間接的影響
9 外来アライグマによる影響と対策のあり方
10 外来生物対策の本来の目的
おわりに
図表一覧
執筆者紹介
●著者紹介
池田 透(いけだ とおる)
1958年生、北海道大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。
現在、北海道大学大学院文学研究科教授(地域システム科学講座)。
共編著書に、『日本の外来哺乳類』(東京大学出版会、2011年)、監修書に、『外来生物が日本を襲う!』(青春出版社、2008年)、共著書に、「外来種問題—アライグマ問題を中心に」(高槻成紀・山極寿一編『日本の哺乳類学 第2巻 中大型哺乳類・霊長類』(東京大学出版会、2008年、369-400頁)。
小杉 康(こすぎ やすし)
1959年生、明治大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。
現在、北海道大学大学院文学研究科教授(北方文化論講座)。
著書に、『縄文のマツリと暮らし』(岩波書店、2003年)、編著書に、『心と形の考古学:認知考古学の冒険』(同成社、2006年)、共著書に、『はじめて学ぶ考古学』(有斐閣、2011年)。
立澤 史郎(たつざわ しろう)
1959年生、京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学。理学博士。
現在、北海道大学大学院文学研究科助教(地域システム科学講座)。
著書に、『世界遺産 春日山原始林』(ナカニシヤ出版、分担執筆)、『環境倫理学』(東京大学出版会、2009年、分担執筆)、Sika Deer−Biology and Management of Native and Introduced Population,(Springer, 2009, 分担執筆)など。
橋本 雄(はしもと ゆう)
1972年生、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。
現在、北海道大学大学院文学研究科准教授(日本史学講座)。
著書に、『中世日本の国際関係:東アジア通交圏と偽使問題』(吉川弘文館、2005年)、『中華幻想:唐物と外交の室町時代史』(勉誠出版、2011年)、『偽りの外交使節:室町時代の日朝関係』(歴史文化ライブラリー、吉川弘文館、2012年)。
武田 雅哉(たけだ まさや)
1958年生、北海道大学大学院文学研究科博士課程(中国文学専攻)中途退学。
現在、北海道大学大学院文学研究科教授(中国文化論講座)。
著書に、『よいこの文化大革命:紅小兵の世界』(広済堂出版、2003年)、『楊貴妃になりたかった男たち:〈衣服の妖怪〉の文化誌』(講談社(選書メチエ)、2007年)、『万里の長城は月から見えるの?』(講談社、2011年)。
蔵田 伸雄(くらた のぶお)
1963年生、京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。
現在、北海道大学大学院文学研究科教授(倫理学講座)。
共著書に、『応用哲学を学ぶ人のために』(戸田山和久・出口康夫編、世界思想社、2011年)、『科学技術倫理学の展開』(石原孝二・河野哲也編、玉川大学出版部、2009年)、『環境倫理学』(鬼頭秀一・福永真弓編、東京大学出版会、2009年)。
佐藤 淳二(さとう じゅんじ)
1958年生、東京大学大学院人文・社会系研究科博士課程修了。
現在、北海道大学大学院文学研究科教授(映像・表現文化論講座)。
主な論文に、「「終わりある啓蒙」と「終わりなき啓蒙」」富永茂樹編『啓蒙の運命』(名古屋大学出版会、2011年)所収、「ルソーの思想圏」『現代思想』(青土社、2012年)。
千葉 惠(ちば けい)
1955年生、Oxford大学哲学科博士課程修了(D. Phil)。
現在、北海道大学大学院文学研究科教授(哲学講座)。
著書に、『アリストテレスと形而上学の可能性:弁証術と自然哲学の相補的展開』(勁草書房、2002年)、Aristotle on Essence and Defining−phrase in his Dialectic, Definition in Greek Philospohy, ed. David Charles (Oxford University Press, 2010, pp.203-251), Aristotle on Heuristic Inquiry and Demonstration of What It Is, The Oxford Handbook of Aristotle, ed. Christopher Shields (Oxford University Press, 2012, pp.171-201).
和田 博美(わだ ひろみ)
1957年生、北海道大学大学院環境科学研究科修了。学術博士(環境科学)。
現在、北海道大学大学院文学研究科教授(心理システム科学講座)。
共著書に、『行動心理学』(勁草書房、2006年)、A study of healthy being: From interdisciplinary perspectives (Azusa Syuppan, 2010).
(本書刊行時の情報です)