商品説明
照葉樹林文化論の現代的展開
金子 務・山口裕文 編著
定価:9,350円(本体価格8,500円+税)
判型:A5 上製
頁数:622
ISBN:978-4-8329-6201-9
Cコード:C3020
発行日:2001-09-25
●本書の特徴
照葉樹林帯のコア部分となる動植物学,農学の諸分野である森林生態学・景観生態学・資源植物学・昆虫学・分類学をはじめとして,それらを包む文化的側面—民族学・中国思想史・倫理学・宗教学・科学史・地理学・建築学・環境芸術論にいたる多彩さと猥雑さを通して照葉樹林文化の本質を論考.中尾佐助氏が照葉樹文化論を着想してから半世紀,新たな展望を告げる視点が展開される.
●目次
まえがき
序章 中尾佐助の人と論理………金子 務・保田淑郎・山口裕文
1 足と目のフィールド科学者
2 照葉樹林と食文化あれこれ
3 息遣いの聞こえるコレクション
〔第1部 照葉樹林の自然〕
第1章 対馬・龍良山照葉樹原始林の構造と動態:日本の照葉樹林の雛形………山本進一
1 照葉樹林の概要
2 龍良山原始林の構造
3 龍良山原始林の動態
4 原始林域を取り巻く二次林
5 龍良山原始林の保護
第2章 照葉樹林の林冠生態学:植物の繁殖をめぐる動物との共生………湯本貴和
1 林冠生態学とは何か
2 屋久島の垂直分布と照葉樹林
3 開花フェノロジーと送粉者
4 結実フェノロジーと種子散布者
5 照葉樹林の生態学的特性と照葉樹林文化
第3章 照葉樹林の木々の芽吹きと生活:観察ノートから………矢田洋章
1 ジャワ島西部での調査から
2 照葉樹林の木々の芽吹き
3 成熟枝の生活
おわりに
〔第2部 照葉樹林帯の倫理文化要素〕
第4章 山と森と神:中尾佐助資料と現地調査から………金子 務
1 中尾佐助の問題提起
2 豆酘の龍良山:天道山信仰と照葉樹
3 アニミズム対マナイズム:両墓制と山の問題
4 山の神と神の依り代としての樹木
5 生け垣の精神的原型:図と地の逆転のなかで
第5章 〈茅〉について:その呪術的効用をめぐって………大形 徹
はじめに
1 茅と芒
2 宗教的行事と茅
3 茅葺き屋根
4 茅の輪くぐり
5 薬物としての茅
6 粽子
おわりに
第6章 照葉樹林下のイノシシと人間:対馬の「猪鹿追詰」と「亥の子祭り」をめぐって………平木康平
1 対馬の猪鹿追詰
2 日本の食肉習慣
3 亥の子祭り
おわりに
第7章 ヒョウタンと中国文化………大形 徹
はじめに
1 土器の起源とヒョウタン
2 楽器の起源とヒョウタン
3 瓢という文字
4 文献のなかにみえるヒョウタン
5 ヒョウタンのなかにはいりこむ魂
6 悪霊を吸い込むヒョウタン
おわりに
第8章 唐詩にみる焼畑文化」「畭田考」を読む………古川末喜
何処好畬田、団団縵山腹
鑽亀得雨卦、上山焼臥木
驚麏走且顧、群雉声咿喔
紅焔遠成霞、軽煤飛入郭
風引上高岑、猟猟度青林
青林望靡靡、赤光低復起
照潭出老蛟、爆竹驚山鬼
夜色不見山、孤明星漢間
如星復如月、倶逐暁風滅
本従敲石光、遂致烘天熱
下種暖灰中、乗陽拆牙孽
蒼蒼一雨後、苕穎如雲発
巴人拱手吟、耕耨不関心
由来得地勢、径寸有余陰
第9章 どろくっつぁん・またげ石・子安の石:永田開発技術をもった氏族と石神………中村 治
1 どろくっつぁん
2 またげ石
3 子安の石
第10章 建築と照葉樹林文化………岩切 平
はじめに
1 建築・文化の状況
2 デザインではないもの
3 照葉樹林文化論を通して建築を考える
4 環境芸術としての建築ヘ
第11章 ブータン商店街の構成と建築:パロ商店街を中心として………川窪広明
はじめに
1 商店街の構造
2 商店建築
3 商店の種類
4 ゼネラルショップの間取り
5 一年間の変化
おわりに
〔第3部 農業景観と照葉樹林文化〕
第12章 照葉樹林帯の中山間地農村の景観をつくる畔道と撹乱依存性植物………山口裕文
はじめに
1 中山間地の農村にみられる景観要素
2 景観要素としての撹乱依存性植物群
3 景観要素としての畔道
4 畦畔植生の多様性
5 雑草の管理と年中行事
6 雑草管理と自然環境の保全
第13章 田舟と撻斗と龍船と………梅本信也・山口裕文
はじめに
1 中国大陸照葉樹林帯における脱穀農具の類型
2 稲脱穀用具の系譜、とくに田舟の起源dadou, loongとの関係
第14章 照葉樹林文化の一要素としてのニホンミツバチの養蜂:対馬のハチドウとハチドウガミを事例として………山口裕文
はじめに
1 調査地
2 多様な対馬のハチドウ
3 三根のハチドウガミ
4 ハチドウのサイズ
5 巣箱の機能性
6 養蜂にみる人と自然と文化と
第15章 森林文化とチョウ相の成り立ち:大阪での考察………石井 実
はじめに
1 都市化とチョウ相の衰退
2 大阪周辺の森にすむチョウ
3 落葉樹林要素の由来
4 照葉樹林のチョウ相はなぜ貧弱か
5 森林文化とチョウ相
第16章 照葉樹林帯上部の焼畑における植生:継続的かつ周期的に加えられる人為的影響下の植生………副島顕子
1 調査地の概要と調査方法
2 焼畑の植生の特徴
第17章 照葉樹林帯の焼畑と日本庭園にひそむフラクタル………森本幸裕・徐 英大
1 ランドスケープ
2 日本庭園とフラクタル
3 フラクタルでないところとコンピュータ設計
4 なぜ焼畑なのか
5 土地利用形態のフラクタルの調べ方
6 土地利用形態のフラクタル
7 焼畑と日本庭園
第18章 宮崎県の照葉樹林文化運動の流れ………上野 登
はじめに
1 自然保護運動の流れ
2 照葉樹林文化シンポジウムの開催
3 シンポジウムの影響と波及
おわりに
〔第4部 照葉樹林文化論の展開〕
第19章 根栽農耕文化と雑穀農耕文化の発見:照葉樹林文化論を生み出した「農耕起源論」の枠組み………佐々木高明
1 照葉樹林文化論を生み出したもの:フィールド・ワークと農耕文化起源論
2 根栽農耕とその文化の確認
3 鍬農耕から犂農耕ヘ:E.Werthの学説とその問題点
4 「雑穀農耕文化」の概念の確立
5 雑穀農耕と「稲作」の位置づけ
6 照葉樹林文化の提唱
7 その後の研究の展開と中尾学説
第20章 照葉樹林と有用植物………堀田 満
1 ドングリの恵み
2 ヤマノイモなど
3 キーウィフルーツの故郷
4 タパと太布
5 ユリとツツジ
6 照葉樹林地域の植物のこれまでとこれから
第21章 照葉樹林文化の一要素としてのチャ利用………山口 聰
はじめに
1 チャの植物学
2 現在の日本のチャの起源研究
3 チャの魅力的特性
4 民族植物学的植物利用法
5 チャの利用方法
6 チャを育てる民族
7 ベトナムに少数民族を訪ねる
8 ハザンを訪ねる
9 カオ・ボー村にて
10 チャ樹原生林に必死で登る
おわりに
第22章 照葉樹林帯の一年生雑草における半栽培の風景………梅本信也・山口裕文・姚 雷
はじめに
1 除草されない一年生雑草の種類と分布
2 除草されない一年生雑草の管理と利用
3 利用と伝播時期
4 半栽培の概念と栽培化
5 半栽培の風景
第23章 赤い植物と照葉樹林文化………湯浅浩史
1 白に先立つ赤
2 縄文赤色のルーツ
3 ユズリハの原義
4 ユズリハの炊葉
5 赤い炊葉
6 赤い実の正月飾り
7 赤い実の照葉樹と行事
8 赤い霊力
9 縄文伝統色の残照
第24章 環境芸術と照葉樹林文化の「縄」………八木マリヨ
1 都市化の波のなかで:縄と出会う
2 伝統の麻縄づくり
3 照葉樹林の森としめ縄
4 環境芸術のはじまり縄パフォーマンス:縄は身体と環境という空間思想を紐解く鍵
5 縄は宇宙のダイナミズムのシンボル
6 照葉樹林の森と縄のダイナミズムとの関係:縄文文化は森の文化の贈り物
7 照葉樹林の森へ
8 縄の発見から
9 抽象の縄:5つのダイナミズム
10 生きものの性の根源と縄
11 生命の循環と縄
12 森と宇宙はつながっている
13 森は多様でありひとつ
14 大樹と宇宙のリズム
15 森のなかにみつけた縄
16 照葉樹林文化のなかの「縄」:人間との関係の縄、具象の縄
17 縄の宇宙とアニミズムの世界
18 都市環境と縄の宇宙
図表写真出典一覧
索引
●著者紹介
金子 務(かねこ つとむ)
1933年川越市に生まれる
1957年 東京大学教養学部教養学科卒業
現在 帝京平成大学教授,大阪府立大学名誉教授,科学思想史
主著:
『生命ー「もの」と「かたち」』(共編著,学会出版センター)
『大正生命主義と現代』「日本人の自然観』(共に共著,河出書房新社)
『環境倫理と環境教育』(共著,朝倉書店)など
山口 裕文(やまぐち ひろふみ)
1946年佐世保市に生まれる
1977年 大阪府立大学大学院農学研究科博士課程修了
現在 大阪府立大学大学院農学生命科学研究科教授,生態保全学 農学博士
主著:
『雑草の自然史』・『栽培植物の自然史』(共に編著,北海道大学図書刊行会)
『植物の生き残り作戦』(分担執筆,平凡社)など
石井 実(いしい みのる)
大阪府立大学大学院農学生命科学研究科教授,昆虫生態学
岩切 平(いわきり たいら)
岩切平建築研究室,建築家
上野 登(うえの のぽる)
宮崎大学名誉教授,経済地理学
梅本 信也(うめもと しんや)
京都大学大学院農学研究科附属亜熱帯植物研究所助手,雑草学
大形 徹(おおがた とおる)
大阪府立大学総合科学部助教授,中国習俗学
川窪 広明(かわくぼひろあき)
大手前大学社会文化学部助教授,建築学
佐々木 高明(ささき こうめい)
アイヌ文化振興・研究推進機構理事長,国立民族学博物館名誉教授,民族学
副島 顕子(そえじま あきこ)
大阪府立大学総合科学部助手,植物系統分類学
徐 英大(ソ ヨンデ)
元大阪府立大学大学院農学生命科学研究科,緑地学
中村 治(なかむら おさむ)
大阪府立大学総合科学部助教授,宗教学
八田 洋章(はった ひろあき)
国立科学博物館筑波実験植物園主任研究官,植物形態学
平木 康平(ひらき こうへい)
大阪府立大学総合科学部教授,中国哲学
古川 末喜(ふるかわ すえき)
佐賀大学文化教育学部助教授,中国文学
堀田 満(ほった みつる)
西南日本植物情報研究所,鹿児島大学名誉教授,植物分類・地理学,有用植物学
森本 幸裕(もりもと ゆきひろ)
京都大学大学院農学研究科教授,緑地学
姚 雷(ヤオ ライ)
上海交通大学農学院,植物科学
八木 マリヨ(やぎ まりよ)
(株)インターナショナルパブリックアート代表,環境芸術/彫刻家
保田 淑郎(やすだ としろう)
宝塚造形芸術大学教授,大阪府立大学名誉教授,昆虫分類学
山口 聰(やまぐち さとし)
愛媛大学農学部助教授,植物資源科学
山本 進一(やまもと しんいち)
名古屋大学大学院生命農学研究科教授,森林生態学
湯浅 浩史(ゆあさ ひろし)
閲進化生物学研究所主任研究員,東京農業大学教授,民族植物学
湯本 貴和(ゆもと たかかず)
京都大学生態学研究センター助教授,植物生態学
(第2刷〈2002-03-25〉刊行時の情報です)