商品説明
スラブ・ユーラシア叢書 12
北西ユーラシアの歴史空間 ― 前近代ロシアと周辺世界
小澤 実・長縄宣博 編著
定価:3,960円(本体価格3,600円+税)
判型:A5 並製
頁数:342
ISBN:978-4-8329-6821-9
Cコード:C3022
発行日:2016-03-31
●本書の特徴
前近代ロシア世界を、ロシアないしスラブの枠内ではなく、西アジア・地中海世界、中央ユーラシア、スカンディナヴィアなどの史料を通して論ずる意欲的試み。
史料論としての立場から、新しい多様で豊かな北西ユーラシア史像を描き出す。
●目次
まえがき
序章 北西ユーラシア歴史空間の射程………小澤 実
1 北西ユーラシア歴史空間とは
2 越境研究と境域の史料
3 本書の構成
〔第1部 異文化集団との接触(9世紀から14世紀)〕
第1章 《総論》統一国家成立までのロシア………宮野 裕
1 国家形成前夜の東スラヴ地域
2 キエフ・ルーシの成立と発展における開放性
3 キエフ・ルーシの解体と近隣諸国
4 モンゴル支配下のルーシ
5 モスクワの台頭
読書案内
第2章 アラビア語史料に記録された北西ユーラシア世界――とくにイブン・ファドラーン『報告書』による………家島彦一
1 北西ユーラシア世界のダイナミズム
2 北西ユーラシア世界に関するアラビア語史料
3 イブン・ファドラーン『報告書』に記録された北西ユーラシア世界
4 『報告書』研究の可能性
第3章 キエフ・ルーシ形成期の北西ユーラシア世界とスカンディナヴィア――ルーン石碑の検討を中心に………小澤 実
1 ヴァイキング世界の拡大とキエフ・ルーシ
2 ルーシのエスニシティ生成をめぐる視座
3 ルーン石碑と「東方」
4 スカンディナヴィア人にとっての北西ユーラシア
5 北西ユーラシア境域論の可能性
第4章 ロシア/ビザンツ緩衝地帯の蛮族観について――12世紀ビザンツ史書におけるペチェネーグを題材に………草生久嗣
1 ビザンツの歴史叙述
2 ビザンツ帝国のロシア観
3 ペチェネーグとビザンツ帝国
4 ペチェネーグの消滅
5 歴史家アンナ・コムネナのペチェネーグ問題
6 ペチェネーグ後の北西ユーラシア
第5章 コンスタンティノープルのストゥディオス修道院とルーシの修道士――正教文化の伝播について………橋川裕之
1 ベロオゼロから
2 ペチェルスキーとストゥディオス
3 14世紀のルーシとストゥディオス
4 二つの民族と一つの世界
〔第2部 チンギス裔とオスマン朝からの視線(15世紀から17世紀)〕
第6章 《総論》「ロシア帝国」への道のり………濱本真実
1 草原の支配者としてのロシア
2 「キエフの遺産」の回復、あるいは征服
3 全正教徒の守護者としてのツァーリ――オスマン帝国との対立へ
読書案内
第7章 15世紀ジョチ朝とモスクワの相互認識――ロシア語訳テュルク語文書を中心に………川口琢司・長峰博之
1 四通のロシア語訳テュルク語文書
2 第一文書 エディゲイからヴァシーリー・ドミートリエヴィチ大公への書簡
3 第二文書 アフマトからイヴァン・ヴァシーリエヴィチ大公への勅許状または書簡
第三文書 ムルトザからイヴァン・ヴァシーリエヴィチ大公への勅許状または書簡
第四文書 ムルトザからヌルドヴラトへの書簡
4 15世紀ジョチ朝とモスクワの相互認識
第8章 ペルシア語・チャガタイ語諸史料に見えるモンゴル王統系譜とロシア………赤坂恒明
1 中世ロシアとの関係が深いモンゴル諸王統
2 ジョチ裔に関するペルシア語・チャガタイ=テュルク語系譜史料
3 『ムイッズル=アンサーブ』のジョチ裔系譜情報より
4 『勝利の書なる選ばれたる諸史』(『TGNN』)のジョチ裔系譜情報より
5 ロシア系譜書におけるタタール系譜
6 「ハン国」という通説的概念の相対化
第9章 オスマン朝におけるヨーロッパ認識の伝統と革新――17世紀中葉以前の北西ユーラシア観を中心に………小笠原弘幸
1 オスマン朝と北西ユーラシア
2 北西ユーラシア地域に関する用語
3 古典的ムスリム地理学の継承と総合――16世紀後半における北西ユーラシア認識
4 古典的見解の克服と新しい知見――17世紀半ばにおける北西ユーラシア認識の展開
5 北西ユーラシア認識の転換
終章 ロシア近現代史の視点から………長縄宣博
1 問題発見の場としてのユーラシア
2 その後の北西ユーラシア――ヴォルガ・ウラル地域と右岸ウクライナ
3 ロシア帝国とオスマン帝国
4 ウクライナ危機によせて
人名索引
事項索引
●著者紹介
小澤 実(オザワ ミノル)
所属:立教大学文学部准教授
専門分野:北欧中世史、西洋中世史
〈主要著作〉
『辺境のダイナミズム(ヨーロッパの中世三)』岩波書店、2009年(薩摩秀登・林邦夫と共著).
『アイスランド・グリーンランド・北極を知るための65章」明石書店、2016年(中丸禎子・高橋美野梨と共編著).
宮野 裕(ミヤノ ユタカ)
所属:岐阜聖徳学園大学教育学部准教授
専門分野:中近世ロシア史
〈主要著作〉
『「ノヴゴロドの異端者」事件の研究』風行社、2009年.
「15世紀末ロシアにおけるカトリックの受容と排除」深沢克己編『ユーラシア諸宗教間の受容と排除をめぐる比較史論』勉誠出版、2010年.
家島 彦一(ヤジマ ヒコイチ)
所属:東京外国語大学名誉教授
専門分野:イスラーム世界交流史
〈主要著作〉
『イスラム世界の成立と国際商業:国際商業ネットワークの変動を中心に』岩波書店、1991年.
『海域から見た歴史:インド洋と地中海を結ぶ交流史』名古屋大学出版会、2006年.
草生 久嗣(クサブ ヒサツグ)
所属:大阪市立大学大学院文学研究科准教授
専門分野:ピザンツ帝国史、研究テーマは西洋中世宗教問題、異端学
〈主要著作〉
「ビザンツ帝国における宗教的《境界》の生成:正教会異端論駁書を題材に」『歴史学研究』833号、2007年、180-188頁.
「ビザンツの「民衆的宗教運動」とその「霊性」について:異端メッサリアノイの射程」『クリオ」22号別冊、2008年5月、63-72頁.
橋川 裕之(ハシカワ ヒロユキ)
所属:静岡県立大学国際関係学部講師
専門分野:ビザンツ史・ギリシャ文化史
〈主要著作〉
「皇帝権力とテクスト:第二リヨン公会議へのビザンツの反応について」『歴史学研究』937号、2015年.
「プロコピオス『秘史』:翻訳と註(三)」『早稲田大学高等研究所紀要』7号、2015年(共訳).
濱本 真実(ハシモト マミ)
所属:日本学術振興会
専門分野:中央ユーラシア史
〈主要著作〉
「「聖なるロシア」のイスラーム:17-18世紀タタール人の正教改宗』東京大学出版会、2009年.
『共生のイスラーム:ロシアの正教徒とムスリム(イスラームを知る)』山川出版社、2011年.
川口 琢司(カワグチ タクシ)
所属:藤女子大学文学部講師
専門分野:中央ユーラシア史、テュルク語・ペルシア語文献学
〈主要著作〉
『ティムール帝国支配層の研究』北海道大学出版会、2007年.
『ティムール帝国』講談社選書メチエ、2014年.
長峰 博之(ナガミネ ヒロユキ)
所属:北嶺中・高等学校教諭
専門分野:中央ユーラシア史、ジョチ朝諸政権史
〈主要著作〉
「「カザク・ハン国」形成史の再考:ジョチ・ウルス左翼から「カザク・ハン国」へ」『東洋学報』90巻4号、2009年、1-226頁.
「カーディル・アリー・ベグの史書について:ジョチ・ウルス継承政権史料の史料的価値とその歴史認識」「イスラム世界』81号、2014年、1-31頁.
赤坂 恒明(アカサカ ツネアキ)
所属:内蒙古大学蒙古学研究中心専職研究員、東海大学・聖学院大学・埼玉学園大学・玉川大学非常勤講師
専門分野:モンゴル帝国史を中心とする内陸ユーラシア史、東方イスラーム史料文献学
〈主要著作〉
『ジュチ裔諸政権史の研究』風間書房、2005年.
「モンゴル帝国期におけるアス人の移動について」塚田誠之編『中国国境地域の移動と交流:近現代中国の南と北(人間文化叢書 ユーラシアと日本:交流と表象)』有志舎、2010年、144-174頁.
小笠原 弘幸(オガサワラ ヒロユキ)
所属:九州大学大学院人文科学研究院准教授
専門分野:オスマン帝国史
〈主要著作〉
『イスラーム世界における王朝起源論の生成と変容:古典期オスマン帝国の系譜伝承をめぐって』刀水書房、2014年.
「歴史教科書に見る近代オスマン帝国の自画像」秋葉淳・橋本伸也編『近代・イスラームの教育社会史:オスマン帝国からの展望』昭和堂、2014年、165-185頁.
長縄 宣博(ナガナワ ノリヒロ)
所属:北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター准教授
専門分野:中央ユーラシア近現代史 ロシアのイスラーム
〈主要著作〉
『越境者たちのユーラシア(シリーズ・ユーラシア地域大国論5)』ミネルヴァ書房、2015年(共編).
Volgo-Ural’skii region v imperskom prostranstve: XVIII-XX vv.(Moscow: Vostochnaia Literatura, 2011) (共編).
(本書刊行時の情報です)