商品説明
荒山 千恵著
判型: A5 上製
頁数: 268
ISBN: 978-4-8329-6789-2
Cコード: C3073
発行日: 2014-02-28
●本書の特徴
本書は、日本列島において遺跡から出土した音響発生器具(楽器)を対象に、人類史における音文 化の考古学的研究をおこなうものである。原始・古代の音文化に関しては、史料が少ないために漠然 とした内容に留まる状況にあった。しかし、近年では考古資料における音響発生器具(楽器)の類例 が増加し、考古学的な評価・見解が必要とされている。本書では、日本列島から出土した楽器関連資 料の集成データをもとに、考古学的な基礎研究の成果を提示する。 第1章では、日本列島における原始・古代の音文化を対象とした音楽学・考古学双方の先行研究を 取り上げ、その議論と研究成果について述べる。また、本研究における問題の所在を示し、本書にお ける研究の枠組みと研究方法について述べる。 第2章から第4章までは、日本列島から出土した音響発生器具(楽器)の候補となる考古資料を選 定し、考古学的な基礎分析を提示する。具体的には、気鳴系の候補である「塤(けん)形土製品(卵 型のオカリナ様)」、打鳴系の候補である「小型青銅製ベル(小銅鐸)」、絃鳴系の候補である「篦 形(へらがた)木製品」・「琴(こと)」・「筑形(ちくがた)木製品」、について取り上げる。これ らの候補となる資料の個別研究を通して、規格性のある音響発生器具の出現と展開について論じる。 第5章では、弥生・古墳時代に属する「琴」の製作・使用・音響に関わる復元的研究について述べ る。製作技術では、実資料に残された加工痕や木取りの観察をとおして、当時の「琴」の製作技術や 構造を復元的に提示する。また、弾琴埴輪の図像学的な分析のもとに、実寸大に復元した「琴」を用 いた絃の固定方法や使用方法の検討結果を提示する。 第6章では、日本列島における原始・古代の音とヒトとの関わりを人類史の観点から論じ、本書の まとめとする。
●目次
はじめに
序 章 考古学からみた「音」の世界
第1章 研究史と研究方法──過去の音文化をどのように捉えるか
1.音文化の考古学的アプローチ
2.研究史──日本列島を対象とした古墳時代以前の音文化に関する先行研究
音楽学における議論と研究──第一段階 / 考古学における発見と研究──第二段階 / 基
礎研究の構築──第三段階 / 学際的な議論・研究へ向けての始動──第四段階
3.研究史からみた日本の音楽学・考古学研究の現状と問題
4.国際的な研究動向
5.検討方法
枠組みの設定 / 資料の選定方法 / 気鳴系・打鳴系・絃鳴系の候補となる考古資料
[註]
第2章 気鳴系音響発生器具の検討──塤(ケン)形土製品について
1.塤形土製品(けんがたどせいひん)とは
2.分 析
塤形土製品の特徴 / タイプ設定 / 出土状況 / 時間的変遷と分布状況
3.塤形土製品の発音機能と原型の検討
仮説 / 機能の検討──塤形土製品は気鳴系音響発生器具なのか / 塤形土製品の原型
4.まとめ
[註]
付図
付表
第3章 打鳴系音響発生器具の検討──小型青銅製ベルについて
1.小型青銅製ベルとは
2.分 析
タイプ設定 / 大きさ / 編年的にみた分布状況
3.考 察
音響発生器具としての機能 / 出土状況 / 小型青銅製ベルの系統性
4.まとめ
[註]
付図
付表
第4章 絃鳴系音響発生器具の検討──篦形-琴形木製品について
1.篦形-琴形木製品とは
2.篦形-琴形木製品の類型設定と編年的整理
類型の設定 / 篦形-琴形木製品の大きさについて / 編年的整理と分布状況
3.篦形木製品
篦形木製品をめぐる二説 / 「琴」の系譜問題と篦形木製品 / 篦形木製品の類型と特徴 / I
類剣身型の時間的変異と分布状況 / 機能・用途の検討 / 系譜の検討 / まとめ──篦形木
製品の検討から
4.筑形木製品(ちくがたもくせいひん)
一類型としての検討から個別検討へ / II類の集成とタイプ設定 / 編年的整理と分布状況 /
編年的推移にみられる斉一性と多様性 / 考察(1)──製作工程・製作技術 / 考察(2)
──機能・用途と使用法 / 考察(3)──歴史的状況について / まとめ──筑形木製品の
検討から
5.まとめ
[註]
付図
付表
第5章 音響発生器具の復元的検討──出土「琴」を対象として
1.問題提起と検討方法
2.類似する箏琴類との比較
箏(ソウ) / 琴(キン) / 和琴(ワゴン) / 弥生・古墳時代の「琴(コト)」
3.弥生・古墳時代における「琴」の特徴
基本構造と大きさ / 維持される形態 / 製作技術と地域的特徴
4.製作技術の復元的検討
資料の選定 / 選定資料の復元
5.使用方法の推定
張絃方法 / 「琴」の使用方法
6.まとめ
[註]
第6章 音の人類史──まとめと課題
引用・参考文献
Summary
索 引
●著者紹介
荒山 千恵
2008年 北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)取得(北海道大学)
北海道大学埋蔵文化財調査室等を経て
現 在 いしかり砂丘の風資料館・学芸員