商品説明
北東アジアの歴史と文化
菊池俊彦編
定価:7,920円(本体価格7,200円+税)
判型:A5 上製
頁数:606
ISBN:978-4-8329-6734-2
Cコード:C3022
発行日:2010-12-25
●本書の特徴
北東アジア地域の歴史的動態と諸民族の形成過程を、歴史学のみならず、考古学、人類学、文化人類学、言語学の側面から総括。各分野の第一線で活躍する研究者が、最前線の研究の現状と課題を提示する。北東アジアを学際的視点から総合的に論じる我が国初の研究書。
●目次
はじめに………菊池俊彦
〔第1部 北東アジアの考古学世界〕
第1章 北東アジアの人類集団………松村博文・石田 肇
はじめに
1.初期の北東アジア人アメリカ大陸への拡散
2.シベリアの集団:頭蓋形態から見た系譜
3.シベリアの集団:歯の形態から見た系譜
4.ヨーロッパ人との交流:チャンドマン遺跡の例
5.北東アジア系集団の南下:東南アジアへの拡散
第2章 出シベリアの人類史………加藤博文
はじめに
1.人類のシベリアへの進出時期
2.中期旧石器から後期旧石器への移行期問題:人類進化史との関わり
3.北極圏への人類の進出
4.出シベリアのプレリュード
5.シベリアからの旅立ち
おわりに
第3章 アムール下流域のオシポフカ文化………長沼正樹
はじめに
1.研究史とオシポフカ文化の範囲
2.遺跡の発掘調査
3.オシポフカ文化の遺物
4.オシポフカ文化の諸問題
5.オシポフカ文化以前の探索
おわりに
第4章 北東アジア新石器社会の多様性………大貫静夫
1.「極東」とは
2.極東新石器社会の成立
3.極東平底土器社会の展開
4.極東平底土器社会をめぐる諸問題
おわりに
第5章 北東アジアの初期鉄器文化………村上恭通
はじめに
1.北東アジア初期鉄器文化の諸相
2.鉄器から見た北東アジアの初期鉄器文化
結語
第6章 草原の考古学………林俊雄
はじめに
1.騎馬遊牧民はいつ頃現れたか?
2.スキタイの起源
おわりに
[コラム]モンゴル高原のヘレクスルと鹿石の発掘………高濱 秀
〔第2部 北東アジアの古代国家〕
第1章 蝦夷と粛慎………蓑島栄紀
はじめに
1.日本古代国家の形成過程における北方問題
2.8世紀—城柵設置と「東北大戦争」の時代
3.9世紀—元慶の乱へ、元慶の乱から
おわり
第2章 辰韓・濊【ワイ】・秦韓・新羅・統一新羅………東 潮
1.辰韓と濊【ワイ】
2.新羅の墓制:積石木槨墳から横穴式石室墳へ
3.新羅の冠位制と衣冠制:5-6世紀の領域関係
4.新羅領域と秦韓・濊【ワイ】
5.新羅の統治形態と領域拡大:真興王の巡狩碑
第3章 「靺鞨罐」の成立について………木山克彦
はじめに
1.靺鞨罐成立前代の様相
2.靺鞨罐成立前の地域間関係
3.初期靺鞨罐の構成と系譜
4.靺鞨罐の成立過程
おわりに
第4章 東亜考古学会の東京城調査………酒寄雅志
はじめに
1.東京城第1期調査 昭和8年度
2.東京城第2期調査 昭和9年度
おわりに
第5章 クラスキノ城跡井戸出土土器群の考察………小嶋芳孝
はじめに
1.井戸の構造
2.土器の紹介
3.土器の検討
4.土器群とクラスキノ城跡
まとめ
第6章 女真の考古学………臼杵 勲
はじめに
1.靺鞨から女真へ
2.金・東夏代女真へ
結語
〔第3部 環オホーツク海の古代世界〕
第1章 オホーツク文化を担った人々………石田 肇
はじめに
1.オホーツク文化の人々の系統
2.オホーツク文化の人々の生活
第2章 オホーツク文化成立以前の先史文化………福田正宏
1.極東ロシア考古学と北海道考古学の接点
2.アムール川流域・サハリン・北海道の狩猟採集文化
3.北海道の歴史変遷に見られる北方性の意味
第3章 オホーツク文化前期・中期の地域開発と挫折………天野哲也
はじめに
1.礼文島香深井1遺跡
2.奥尻島青苗砂丘遺跡
3.佐渡島
4.奥尻島宮津チャシ遺跡
おわりに
第4章 元地式土器に見る文化の接触・融合………熊木俊朗
1.緒言と研究小史
2.元地式土器の概要
3.稚内市シュプントー遺跡出土資料の再評価
4.土器型式から見た道北端部の「接触・融合」過程
第5章 国後島の大規模竪穴群と擦文文化………澤井 玄
はじめに
1.国後島の考古学調査
2.航空・衛星写真読み取りによる国後島南端部の竪穴群の検討
3.考察
おわりに
〔第4部 北東アジアの中世世界〕
第1章 北日本の古代末から中世………小口雅史
はじめに
1.北日本における交易と交流をめぐって
2.北日本における交易の主体者について
3.北方交易の展開と「防御性集落」の出現
4.防御性集落の終焉と中世的世界の展開
おわりに
第2章 契丹国(遼朝)の成立と中華文化圏の拡大………武田和哉
はじめに
1.シラムレン川流域の歴史的変遷と契丹の出現
2.唐代における契丹の動向について
3.契丹国の成立と漢人の関与
4.契丹国の政治制度
5.契丹国の社会組織
6.契丹国における宗教、文化、文字・言語の様相
7.契丹国の成熟と中華化:結びに代えて
第3章 イェケ=モンゴル=ウルスの成立過程………白石典之
1.検討の視点
2.氏族社会から部族社会へ(6-10世紀)
3.部族社会から首長制社会へ(11-12世紀)
4.首長制社会から国家へ(13世紀前半)
第4章 モンゴル高原から中央アジアへの道:13世紀のチンカイ城を通るルートをめぐって………村岡 倫
はじめに
1.長春真人一行のモンゴル高原から中央アジアへの旅程
2.ウイグル、カルルクの帰順とチンカイ城の建設
3.チンカイ城と唐代の回鶻路
おわりに
第5章 「北からの蒙古襲来」をめぐる諸問題………中村和之
はじめに
1.モンゴル帝国・元朝の骨嵬に対する攻撃
2.元朝によるアムール川下流域での屯田経営
3.果夥の位置と白主土城
4.モンゴル帝国・元朝のサハリン島侵攻とその影響
おわりに:「北からの蒙古襲来」はあったか?
第6章 ガラス玉の道………越田賢一郎
はじめに
1.大陸の玉
2.北海道の玉
おわりに
〔第5部 北東アジアの民族接触〕
第1章 明代女真氏族から清代満洲旗人へ………杉山清彦
はじめに
1.明初のジュシェン諸集団と羈縻衛所制
2.建州三衛の成立と西遷
3.16世紀の秩序変動と勢力再編
4.王杲勢力:ヌルハチ登場前夜
5.八旗制下のジュシェン=マンジュ氏族
おわりに
第2章 近世日本から見た千島列島史………菊池勇夫
1.「蝦夷が千島」から「千島」へ
2.クルミセ、ラッコ島、東海諸島
3.ラッコ島=ウルップ島観の登場
4.東蝦夷諸島、チュプカ(千島)
第3章 漂流民が見た千島のアイヌ………川上 淳
はじめに
1.伊勢松坂七郎兵衛船のエトロフ島漂着
2.仙台藩領石巻五郎兵衛船のシコタン島漂着
3.正徳2年(1712)大隅国浜之市船のエトロフ島漂着
4.宝暦6年(1756)の紀州船エトロフ島漂着
5.宝暦11年(1761)の勢州今一色今富丸のシコタン島漂着
6.南部慶祥丸漂流民とパラムシル島・ラショワ島アイヌ
7.薩摩永寿丸漂流民とオンネコタン島アイヌ
まとめに代えて
第4章 サンタン交易の経済学………佐々木史郎
はじめに
1.サンタン交易の経済的側面に関する先行研究
2.サンタン交易の商品の価格
3.サンタン、スメレンクルたちの儲け
おわりに
第5章 セイウチの来た道………津曲敏郎
はじめに
1.日本語「セイウチ」の語源と初出
2.サハリンの諸言語
3.ツングース諸語
4.チュクチ・カムチャツカ語族
まとめ
[コラム]『秘帳坎々奇話』と『北征秘談』………松浦 茂
あとがき
人名索引
事項索引
地名・遺跡名索引
執筆者一覧
●著者紹介
菊池 俊彦(キクチ トシヒコ)
1943年 群馬県伊勢崎市に生まれる
1967年 北海道大学文学部史学科(東洋史学)卒業
同年 北海道大学文学部助手(北方文化研究施設考古学部門)
1978年 北海道大学文学部助教授(一般教育歴史学)
1991年 北海道大学文学部教授(総合文化論講座東洋文化史)
1995年 同上(東洋史学講座)
2000年 北海道大学大学院文学研究科教授(同上)
2006年 北海道大学定年退職、北海道大学名誉教授
博士(文学、北海道大学)、濱田青陵賞受賞(1997年)
主著
『北東アジア古代文化の研究』北海道大学図書刊行会、1995年
『環オホーツク海古代文化の研究』同上、2004年
『オホーツクの古代史』平凡社新書、2009年
松村 博文(マツムラ ヒロフミ)
1959年生.札幌医科大学医学部解剖学第2講座准教授.形質人類学・東南アジアの人類史.
石田 肇(イシダ ハジメ)
1956年生.琉球大学大学院医学研究科人体解剖学講座教授.解剖学・形質人類学.
加藤 博文(カトウ ヒロフミ)
1966年生.北海道大学アイヌ・先住民研究センター教授.考古学・先住民考古学.
長沼 正樹(ナガヌマ マサキ)
1974年生.北海道大学アイヌ・先住民研究センター学術研究員.先史考古学・比較考古学.
大貫 静夫(オオヌキ シズオ)
1952年生.東京大学大学院人文社会系研究科教授.東北アジア考古学.
村上 恭通(ムラカミ ヤスユキ)
1962年生.愛媛大学東アジア古代鉄文化研究センター・センター長ならびに法文学部教授.東アジア考古学.
林 俊雄(ハヤシ トシオ)
1949年生.創価大学文学部教授.中央ユーラシア史.
髙濱 秀(タカハマ シュウ)
1949年生.金沢大学歴史言語文化学系教授.中央ユーラシアの考古学.
蓑島 栄紀(ミノシマ ヒデキ)
1972年生.苫小牧駒澤大学国際文化学部准教授.日本古代史・北方史・アイヌ史.
東 潮(アズマ ウシオ)
1946年生.徳島大学大学院ソシオアーツサイエンス研究部教授.東アジア考古学.
木山 克彦(キヤマ カツヒコ)
1975年生.北海道大学スラブ研究センター博士研究員.北東アジア考古学.
酒寄 雅志(サカヨリ マサシ)
1949年生.國學院大學栃木短期大学日本史学科教授.日本古代史・東北アジア史.
小嶋 芳孝(コジマ ヨシタカ)
1949年生.金沢学院大学美術文化学部教授.東北アジア考古学.
臼杵 勲(ウスキ イサオ)
1959年生.札幌学院大学人文学部教授.北東アジア考古学.
福田 正宏(フクダ マサヒロ)
1974年生.東北芸術工科大学芸術学部歴史遺産学科専任講師.東北アジア考古学.
天野 哲也(アマノ テツヤ)
1947年生.北海道大学総合博物館/理学院教授.考古学.
熊木 俊朗(クマキ トシアキ)
1967年生.東京大学大学院人文社会系研究科准教授.北東アジア考古学.
澤井 玄(サワイ ゲン)
1964年生.北海学園大学非常勤講師.擦文・オホーツク文化.
小口 雅史(オグチ マサシ)
1956年生.法政大学文学部教授.日本古代中世史・北方史.
武田 和哉(タケダ カズヤ)
1965年生.奈良市教育委員会技術職員(学芸員).北アジア史・考古学、日本古代史・考古学.
白石 典之(シライシ ノリユキ)
1963年生.新潟大学超域研究機構教授.モンゴル考古学.
村岡 倫(ムラオカ ヒトシ)
1957年生.龍谷大学文学部教授.モンゴル時代史.
中村 和之(ナカムラ カズユキ)
1956年生.函館工業高等専門学校教授.アイヌ史・北東アジア史.
越田 賢一郎(コシダ ケンイチロウ)
1948年生.札幌国際大学教授.物質文化史学.
杉山 清彦(スギヤマ キヨヒコ)
1972年生.駒沢大学文学部准教授.大清帝国史.
菊池 勇夫(キクチ イサオ)
1950年生.宮城学院女子大学教授.日本近世史・北方史.
川上 淳(カワカミ ジュン)
1954年生.札幌大学文学部教授.日本北方史.
佐々木 史郎(ササキ シロウ)
1957年生.人間文化研究機構国立民族学博物館教授、総合研究大学院大学教授.文化人類学.
津曲 敏郎(ツマガリ トシロウ)
1951年生.北海道大学大学院文学研究科教授.北方少数民族言語学.
松浦 茂(マツウラ シゲル)
1950年生.京都大学大学院人間・環境学研究科教授.清朝史・東北アジア史.
(本書刊行時の情報です)