商品説明
スラブ・ユーラシア叢書 4
近代東北アジアの誕生 ― 跨境史への試み
左近幸村 編著
定価:3,520円(本体価格3,200円+税)
判型:A5 並製
頁数:400
ISBN:978-4-8329-6700-7
Cコード:C3022
発行日:2008-12-25
●本書の特徴
これまでロシアや清帝国の「辺境」とみなされ、研究上の空白となっている19世紀東北アジア地域史について、国境を越えた相互作用に着目し、執筆者間で各章を相互参照し議論する「跨境史」的手法によって、新たな歴史像を提示。19世紀におけるロシアの進出と東アジアの在来秩序の変化が、東北アジアにどのような影響を及ぼしたのかということを、さまざまな角度から検証することで明らかにする。新進気鋭の研究者たちによるトランスボーダー・ヒストリー構築の試み。
●目次
序論 東北アジアから見える世界………左近幸村
1 本書の目的
2 「帝国論」の興隆
3 東北アジア地域史研究史
4 各章の紹介
5 むすびに代えて
〔第1部 ロシアとアジアのネットワーク〕
第1章 近代東北アジア交易ネットワークの成立――環日本海圏を中心に………原 暉之
はじめに――地域間関係の再発見
1 交易拠点の相互関係
2 平底帆船と地域交易圏――沿海ネットワーク
3 対岸航路と対岸交易――環海ネットワーク
おわりに――ロシアの「入亜」、ロシアの「脱亜」
第2章 国際的環境から見た日露間の航路形成………麓 慎一
はじめに
1 日露直通定期航路の募集
2 日露直通定期航路の形成
3 航路拡張建議案の提出
4 船舶ノ出入及貨物積卸許可法案
5 第5回および第4回帝国議会の審議
6 シベリア鉄道と大蔵省官吏の視察
7 ロシア義勇艦隊の増強
おわりに
第3章 サハリン石炭と東北アジア海域史………天野尚樹
はじめに
1 上海での挫折――外資・民間資本導入の失敗
2 ウラジオストクでの挫折――日本炭・国内炭との競争
おわりに――サハリン石炭の需要
補注 北海道とロシア極東のあいだの貿易構造
第4章 キャフタからウラジオストクへ――国境地帯おける貿易構造の変化と関税政策………左近幸村
はじめに
1 茶貿易と関税
2 キャフタの変容
3 ストルイピンとクリヴォシェインのシベリア・極東拓殖計画
4 満州穀物の流入と軍兵站部
5 穀物政策の転換
6 ブラゴヴェシチェンスクとウラジオストク
まとめ
〔第2部 変容する中国の内と外〕
第5章 19世紀中国における自由貿易と保護関税――「裁釐加税」の形成過程………岡本隆司
はじめに
1 南京条約の締結――「自由貿易」と税率問題
2 天津条約とオルコック協定――関税率と内地課税
3 保護関税観念の出現
4 芝罘協定以後の釐金交渉
5 保護関税から「裁釐加税」へ
まとめと展望
第6章 露亜銀行(1910―26年)覚書………矢後和彦
はじめに
1 前史――露清銀行と北方銀行
2 創設と業務――合併問題と支店展開を中心に
3 顚末――ロシア革命後の露亜銀行
むすびに代えて――ロシアとアジアの「金融インフラストラクチャー」
第7章 利益独占と「門戸開放」――ドイツ山東鉄道事業をめぐる秩序形成………浅田進史
はじめに
1 山東鉄道会社の設立認可条件をめぐって――営利と「開放」
2 沿線住民による山東鉄道事業の秩序づけ
3 山東鉄道事業への山東地方当局・地方エリート層による対抗戦略
むすびに代えて
第8章 1900―20年山東半島の移民と農村経済………荒武達朗
はじめに
1 送出地域の農村経済
2 ルーブル紙幣・円系通貨の還流構造
小結
〔第3部 東北アジアからの露清帝国再考〕
第9章 大清帝国のマンチュリア統治と帝国統合の構造………杉山清彦
はじめに
1 大清帝国の形成と八旗制
2 マンチュリア統治体制の展開
3 大清帝国のマンチュリア統治の特質
4 帝国の支配構造とマンチュリア
おわりに
第10章 中国東北統治の変容――1860―80年代の吉林を中心に………塚瀬 進
はじめに
1 北京条約以前の吉林の状況
2 北京条約以後の吉林
3 銘安による改革
4 中国東北、朝鮮、ロシアの関係変化と吉林統治
おわりに
第11章 プリアムール総督府の導入とロシア極東の誕生………松里公孝
はじめに
1 ロシア帝国の総督制
2 「失われた20年」という言説
3 ロシア極東における中国人と朝鮮人
4 極東新領土の獲得と、アジア・ロシア全体の行政区画改革構想(1860―65年)
5 対清関係の緊張と国境管理の統合(1882―84年)
6 アヌチン東シベリア総督とザバイカル問題
まとめ
第12章 ロシア帝国の辺境統治と領域拡張――東部辺境の国境監督官制度………オイドフ・バトバヤル
はじめに
1 東部国境地帯における国境監督官の設置過程
2 ウシンスク国境管区設立と国境監督官の設置
3 ウリャンハイ地方担当官の設置
おわりに
補論 海域史、地域研究と近代東北アジア………桃木至朗
1 東南アジア地域研究と海域アジア史
2 東北アジアと東南アジアの対比
3 初歩的なまとめと今後の課題
索引
●著者紹介
左近 幸村(サコン ユキムラ)
所属:北海道大学大学院文学研究科博士後期課程
専門分野:ロシア近代史
原 暉之(ハラ テルユキ)
所属:北海道情報大学
専門分野:ロシア極東近現代史
麓 慎一(フモト シンイチ)
所属:新潟大学人文社会・教育科学系(教育学部)
専門分野:日露関係史・北方史
天野 尚樹(アマノ ナオキ)
所属:北海道大学大学院文学研究科博士後期課程、北海道情報大学非常勤講師
専門分野:北東アジア国際関係史、ロシア近現代史
岡本 隆司(オカモト タカシ)
所属:京都府立大学
専門分野:近代中国史
矢後 和彦(ヤゴ カズヒコ)
所属:首都大学東京経営学系
専門分野:国際金融史
浅田 進史(アサダ シンジ)
所属:千葉大学大学院人文社会科学研究科公共研究センター
専門分野:ドイツ植民地主義の歴史 ドイツ 中国関係史
荒武 達朗(アラタケ タツロ)
所属:徳島大学総合科学部
専門分野:中国近現代史
杉山 清彦(スギヤマ キヨヒコ)
所属:駒澤大学文学部
専門分野:大清帝国史
塚瀬 進(ツカセ ススム)
所属:長野大学産業社会学部
専門分野:中国史
松里 公孝(マツザト キミタカ)
所属:北海道大学スラブ研究センター
専門分野:脱共産主義諸国の政治と歴史
Oidov Batbayar(オイドフ バトバヤル)
所属:北海道大学大学院文学研究科博士後期課程
専門分野:ロシア外交史、露蒙関係史
桃木 至朗(モモキ シロウ)
所属:大阪大学大学院文学研究科
専門分野:東南アジア史、海域アジア史
(本書刊行時の情報です)