商品説明
北海道大学大学院文学研究科研究叢書 14
ロマンス語再帰代名詞の研究 ― クリティックとしての統語的特性
藤田 健 著
定価:8,250円(本体価格7,500円+税)
判型:A5 上製
頁数:254
ISBN:978-4-8329-6725-0
Cコード:C3087
発行日:2010-03-22
●本書の特徴
本書は著者の十数年にわたる研究を集成したものである。本書では,現在の統語論において中心的な位置を占めている言語理論の一つである生成文法の枠組を用いて,ロマンス諸語に属するフランス語・スペイン語・のイタリア語の再帰代名詞クリティックに関する言語事情を対照的に分析した。
再帰代名詞クリティックの機能のなかで統語論において分析されるべきものとして再帰用法、受動用法、非人称用法の三つを取り上げた。非対格用法を分析対象としないのは、この機能が統語論ではなく語嚢意味論のレベルで分析すべきものであるという理由による。
再帰用法については、特に重要な現象とし七使役構文における分布と複合時制における過去分詞の一致現象についてフランス語を中心に論じた。受動用法においては、スペイン語における名詞句の格標示の問題、フランス語における時制上の制約の問題並びにイタリア語を中心とした複合時制における過去分詞の一敦現象について論じた。非人称用法においては、イタリア語を中心にその続語的分布と複合時制における過去分詞の一敦現象について論じた。これらの議論を通じ、3言語において再帰代名詞クリティックが統語論上どのように特徴づけられるかを議論した。
本書では,ロマンス語における再帰代名詞クリティックという統語論において重要な位置を占める現象を,新たな言語事実を提示すると同時に,従来の研究にはない独自の視点を展開した。この研究成果は再帰代名詞にとどまらず代名詞クリティック全体につながるものであり,今後のロマンス語統語論研究の発展に大いに貢献するものである。
●目次
まえがき
凡 例
第1章 再帰代名詞クリティックの概観
1.クリティック
2.再帰代名詞
3.ロマンス語における再帰代名詞クリティック
4.再帰代名詞クリティックの用法
5.再帰代名詞クリティックに関する先行研究
第1章注
第2章 再帰用法の再帰代名詞クリティック
1.再帰用法の再帰代名詞クリティックの統語的ステイタス
2.複合時制文における過去分詞の一致現象
3.使役構文における再帰用法の再帰代名詞クリティック
4.総括
第2章注
第3章 受動用法の再帰代名詞クリティック
1.スペイン語の再帰受動構文
2.イタリア語の再帰受動構文における過去分詞の一致現象
3.フランス語の再帰受動構文に見られる制約
4.総括
第3章注
第4章 非人称用法の再帰代名詞クリティック
1.イタリア語における再帰非人称構文
2.スペイン語における再帰非人称構文
3.フランス語における非人称構文
4.総括
第4章注
参考文献
あとがき
索引
Index
●著者紹介
藤田 健(フジタ タケシ)
1968年 青森県弘前市に生まれる
1998年 京都大学大学院文学研究科博士課程修了
現在 北海道大学大学院文学研究科准教授 博士(文学)(京都大学)
〈主論文〉
「フランス語における“se−moyen”の統語的特性」『ロマンス語研究』第41号, pp.32-41, 2008.
「スペイン語における使役構文の統語構造について」『ロマンス語研究』第39号, pp.31-40, 2006.
「イタリア語における再帰非人称構文の統語構造」『北海道言語文化研究』第6号, pp.43-64, 2008.
「ポルトガル語における名詞句の統語構造」『北海道大学文学研究科紀要』第124号, pp.103-135, 2008.
「ルーマニア語における間接目的語のクリティック・ダブリング現象の統語的分析」『認知科学研究』第4号, pp.25-44, 2006.
(本書刊行時の情報です)