商品説明
北大文学研究科ライブラリ 16
恋する人間 ー 人文学からのアプローチ
鈴木幸人 編著
定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
判型:四六 並製
頁数:296
ISBN:978-4-8329-3402-3
Cコード:C1095
発行日:2018-06-29
●本書の特徴
人はなぜ恋こがれるのか、恋にはどう対処すればよいのか、恋は人生を豊かにすることにつながるのか。何かに夢中になっている状態や、他者との関わり合いなども含め、古今東西の文学や芸術、思想や歴史、社会科学などの広い知見から、「恋」のありかたに迫ります。
●目次
はしがき
第1章 恋する顔:トッド・ヘインズ監督『キャロル』について………阿部嘉昭
1 「恋する」とはどういうことか
2 映画を具体的に視る
3 複合によって顔が物質的になること
4 化粧ごっことキスで二人が混ざる
第2章 恋する姿の日本絵画史:恋を絵にする、絵は恋をする?………鈴木幸人
はじめに:乍憚口上(はばかりながらこうじょう)
1 恋の語源、恋のうた、そして、No love, no life
2 恋する姿の絵画史:恋を絵にする
3 見交わす視線:芥川図
4 見やる視線(もの思い):縁先美人
5 閉じる視線(もの狂い):道成寺物
6 覗き見る視線:衆道
おわりに:絵は恋をする(?)
第3章 「ロミオ、この眠り薬、あなたのために飲みます」:追い詰められるジュリエット、操作される私たちの心………宮下弥生
はじめに
1 プロローグの働き
2 劇冒頭で示されるロミオとジュリエットを取り巻く環境
3 登場人物のせりふに二人の死ぬ運命を重ね合わせる
4 決闘から追放へ、そして追い詰められていくジュリエット
5 眠り薬を飲む強い意思
6 まとめ
第4章 ナポレオン 権力者の愛………松嶌明男
はじめに:恋愛におけるイタリア気質とフランス気質
1 英雄ナポレオン、コルシカ島に生を受ける
2 フランス革命とナポレオン
3 ナポレオン、出世の階段を上る
4 独裁者ナポレオン
5 息子のためを思う強権政治が破滅をもたらす
おわりに:敗北に屈しないナポレオン
第5章 ♡♥LOVE憲法♥♡………川口暁弘
はじめに:まずは♡の由来から
1 憲法の二つの見方
2 愛する理由、八月革命と国民主権
3 愛する理由、民定憲法史観
4 愛する理由、平和と人権の憲法学
5 憲法を暮らしの中に生かそう
6 愛は人を狂わせる、こともある
おわりに
第6章 愛(ラヴ) 明治プロテスタントスタイル………ミシェル・ラフェイ
はじめに
1 Loveとその日本語訳について
2 札幌農学校と「フィリア」
3 クェーカーの歴史と信仰の基礎
4 新渡戸稲造と愛
5 内村鑑三と愛
6 キリスト教における愛と結婚:岩倉使節団の女性たち
おわりに
第7章 恋は国境を超えられるか?:国際社会学からのアプローチ………樽本英樹
1 人の移動の不自由さ
2 国家主権を超える方法
3 多文化社会への社会変動
4 国際移民と「恋」の緊張関係
第8章 求め合うこころ:人間と伴侶動物が育んできた絆………瀧本彩加
1 家畜化シンドローム:伴侶動物の見た目や性格が人間好みに?
2 感情の送受信:伴侶動物と人間は表情や声でお互いの感情がわかる?
3 「見つめる・見つめられる」の相互作用:伴侶動物は「見つめる・見つめられる」ことを人間とのコミュニケーションにどう生かしているか?
4 見つめることと絆ホルモンとの相互作用:イヌが飼い主を見つめる行動やオキシトシンは飼い主との社会的絆形成を促すか?
おわりに
第9章 恋と愛の形而上学:プラトンから考える………近藤智彦
1 エロースは「合一」を求める
2 合一する恋/配慮する愛?
3 エロースは「美」を目指す
4 理由のある恋/理由のない愛?
おわりに
あとがき:思案の外を思案すること
執筆者紹介
●著者紹介
鈴木 幸人(すずき ゆきと)
1966年生、京都大学大学院修士課程美学美術史学専攻修了。
現在、北海道大学大学院文学研究科准教授(芸術学講座)。
著書に『太宰府系天神縁起絵の世界』(共著、財団法人太宰府顕彰会、2012年)、論文に「金沢・崇禅寺の天神縁起絵について:「版本」「扁額」の天神縁起絵」 (『北海道芸術学会紀要芸術論評』9号、2017年)。
阿部 嘉昭(あべ かしょう)
1958年生、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。
現在、北海道大学大学院文学研究科准教授(映像・表現文化論講座)。
著書に『映画監督大島渚』(河出書房新社、2013年)、『平成ボーダー文化論』(水声社、2015年)、『詩の顔、詩のからだ』(思潮社、2018年)。
宮下 弥生(みやした やよい)
1963年生、北海道大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。修士(文学)。
現在、北海道大学大学院文学研究科助教(西洋文学講座)。
論文に、“Juliet's Acquisition of Independence and Patriarchy in Romeo and Juliet”(『北海道大学文学研究科紀要』第106号、35-48頁、2002年2月)、“An Application of a Narrative Theory to Romeo and Juliet: Orientation and Manipulation of the Audience's Sympathy” 『北海道大学文学研究科紀要』第114号、115-136頁、2004年11月)、“Hamlet vs Claudius: A Structural Analysis of Hamlet's “Tardiness””(『北海道大学文学研究科紀要』第141号、35-79頁、2013年)。
松嶌 明男(まつしま あきお)
1966年生、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。
現在、北海道大学大学院文学研究科准教授(西洋史学講座)。
著書に『礼拝の自由とナポレオン』(山川出版社、2010年)、『図説ナポレオン』(河出書房新社、 2016年)。
川口 暁弘(かわぐち あきひろ)
1972年生、学習院大学大学院人文科学研究科史学専攻博士後期課程中退。修士(史学)。
現在、北海道大学大学院文学研究科准教授(日本史学講座)。
著書に『明治憲法欽定史』(北海道大学出版会、2007年)、『きのうの日本』(共編著、有志舎、2012年)、『ふたつの憲法と日本人』(吉川弘文館、2017年)。
ミシェル・ラフェイ(Michelle La Fay)
1967年生、北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
現在、北海道大学大学院文学研究科准教授(国際交流室)。
著書に『なまら内村鑑三なわたし:二つの文化のはざまで』(柏艪舎、2011年)、論文に「新渡戸稲造と内村鑑三の武士道」(『基督教學』第45号、30-39頁、2010年)。
樽本 英樹(たるもと ひでき)
1965年生、東京大学大学院人文社会系研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。
元、北海道大学大学院文学研究科教授。現在、早稲田大学文学学術院教授。
著書に『よくわかる国際社会学(第2版)』(ミネルヴァ書房、2016年)、『国際移民と市民権ガバナンス:日英比較の国際社会学』(ミネルヴァ書房、2012年)、『現代人の国際社会学・入門:トランスナショナリズムという視点』(西原和久・樽本英樹編、有斐閣、2016年)。
瀧本 彩加(たきもと あやか)
1984年生、京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
現在、北海道大学大学院文学研究科准教授(行動システム科学講座)。
著書に『岩波講座 コミュニケーションの認知科学(4) 社会のなかの共存』(山本真也との共著、山岸俊男・亀田達也編、分担執筆、岩波書店、2014年)、『日本のサル学のあした:霊長類研究という「人間学」の可能性』(中川尚史・友永雅己・山極寿一編、分担執筆、京都通信社、2012年)。論文に「共感関連現象を説明する組み合わせモデルとヒト以外の霊長類における事例」(山本真也との共著、『心理学評論』58号、255-270頁、2015年)。
近藤 智彦(こんどう ともひこ)
1976年生、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。
現在、北海道大学大学院文学研究科准教授(倫理学講座)。
著書に『西洋哲学史Ⅱ 「知」の変貌・「信」の階梯』(神崎繁・熊野純彦・鈴木泉編、分担執筆、講談社、2011年)、『愛・性・家族の哲学①愛:結婚は愛のあかし?』(藤田尚志・宮野真生子編、分担執筆、ナカニシヤ出版、2016年)、Yosef Z. Liebersohn, Ivor Ludlam, Amos Edelheit(eds.), For a Skeptical Peripatetic: Festschrift in Honour of John Glucker (Studies in Ancient Moral and Political Philosophy, vol. 3), Academia Verlag, 2017.(分担執筆)
(本書刊行時の情報です)