商品説明
北大文学研究科ライブラリ 11
新渡戸稲造に学ぶ ー 武士道・国際人・グローバル化
ゆはず和順・佐々木 啓 編著
定価:1,980円(本体価格1,800円+税)
判型:四六 並製
頁数:284
ISBN:978-4-8329-3391-0
Cコード:C1091
発行日:2015-05-29
●本書の特徴
新渡戸稲造ってどんな人? 『武士道』ってどんな本?――新渡戸稲造や『武士道』について興味はあるけどよく知らないというあなたも,そんなのけっこう知ってるよというあなたも,きっと満足するにちがいない,コンパクトで深い内容の1冊! 新渡戸の母校の後身,北海道大学の文学研究科で教える先生たちが中心になり,新渡戸と『武士道』をわかりやすく,深く解説! 今日における「国際人」や「グローバル化」の意味を検討したパネルディスカッションの記録も収録.
* * *
本書は三部構成です.第一部では,『武士道』の内容や新渡戸の信仰といった基本的な情報を丁寧にまとめます.新渡戸が考える理想的な日本人像を投影したものとしての「武士道」,儒教や中国古典にかんする新渡戸特有の理解,実践的倫理としてキリスト教を受容しつつ,自身の信仰について多くを語らない新渡戸の姿勢,といったテーマが議論されます.第二部では,国際人としての新渡戸の姿を,ユニークで,ときに批判的な視点から見つめ直します.日本におけるキリスト者という特異な立場から,当時の国際社会を相手に日本文化を紹介したことの意味,新渡戸を含めた札幌農学校関係者のエピソードから見た,普段はあまり意識されないような国際化の諸相,日本の植民地支配に対する新渡戸の評価を介して見えてくる,愛国心と国際心の調和という課題の困難,といったテーマが考察されます.第一部と第二部を読めば,新渡戸と『武士道』についてちょっとした専門家になれるかも!
第三部は、もし新渡戸が生きていたなら,熱くなって参加したいと思ったかもしれない!?,そういったパネルディスカッションの記録です.ここでは,新渡戸の時代から時計の針を進めて,いまのグローバル化の時代において国際人であることの意味を検討します.外国語の学習,外国における他者との関係,教養の意味などが議論され,人文学の役割と可能性が問われます.さらに付録として,新渡戸の生きた時代の雰囲気を伝える略年表と,新渡戸にかんする読書案内を収録しています.
●目次
まえがき
〔第1部 新渡戸稲造と『武士道』〕
第1章 日本人論としての『武士道』………山本博文
はじめに
1 新渡戸が『武士道』を書いた理由
2 道徳体系としての武士道
3 武士道の源泉と徳目
4 外国人の誤解を解く五章
5 理想的日本人論としての『武士道』
6 もうひとつの武士道
7 日本文化論の嚆矢としての『武士道』
おわりに――現代人にとっての『武士道』
第2章 新渡戸稲造『武士道』と儒教………ゆはず 和順
はじめに
1 新渡戸稲造の生涯
2 『武士道』の執筆
3 『武士道』の構成
4 武士道の定義
5 武士道の源泉
6 武士道における徳目
7 武士道における「義」
8 武士道における「勇」
9 武士道における「仁」
おわりに
第3章 新渡戸稲造の宗教………佐々木 啓
はじめに
1 キリスト教徒、クエーカーの一員となるまで
2 クエーカー
3 クエーカーとしての新渡戸稲造
4 新渡戸・宮部・内村と彼らの間――結論に代えて
〔第2部 歴史の中の国際人 新渡戸稲造〕
第4章 21世紀に読む『武士道』………トレント・マクシ
はじめに
1 『武士道』と現代の国際化
2 新渡戸稲造の略歴
3 『武士道』の世界
4 新渡戸の「武士道」論
5 「武士道」と身分制度
6 「武士道」とキリスト教
7 歴史の中の「武士道」
おわりに
第5章 新渡戸稲造と札幌農学校の国際人………ミシェル・ラフェイ
はじめに
1 「積極的国際化」と「消極的国際化」
2 『武士道』と『代表的日本人』による「積極的国際化」
3 フォークと箸
4 ブルックスと大豆
5 内村ロード
6 「制度に従わない」内村鑑三の影響
7 国際結婚
おわりに
第6章 新渡戸稲造にみる「国民的立場」と「人類的立場」の問題………権 錫永
はじめに
1 新渡戸稲造の日本理解の態度――自己弁護の態度
2 新渡戸稲造の朝鮮理解の態度――「検事」の立場
3 国際心に包まれた愛国心――人類の福利増進と日本の膨張との接点
4 近代人のジレンマ――国民的立場と人類的立場、そして中道
5 石橋湛山と矢内原忠雄の場合――むすびに代えて
〔第3部 パネルディスカッション〕
人文学研究のグローバル化とその可能性………トレント・マクシ、ミシェル・ラフェイ、権 錫永、日野峰子、白木沢旭児
はじめに
1 日本の国際化の現状
2 グローバル化と海外留学
3 グローバル化と外国語の学習
4 グローバル化と「寂しさ」
5 グローバル化とコミュニケーション
6 他国におけるグローバル化
7 グローバル化と日本人の国民性
8 文学研究科・文学部の果たす役割
9 グローバル化とリーダーシップ
10 人文学研究の可能性
読書案内
新渡戸稲造略年譜
あとがき
写真・図出典一覧
●著者紹介
山本 博文(ヤマモト ヒロフミ)
1957年岡山県生、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了.博士(文学).
現在、東京大学史料編纂所教授.
〈著書〉
『赤穂事件と四十六士』吉川弘文館、2013年.
『歴史をつかむ技法』新潮新書、2013年.
『武士道の名著』中公新書、2013年. など
ゆはず 和順(ユハズ カズヨリ) ※ゆはずは正しくは、ゆみへんに、巾
1959年三重県生、北海道大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学.
現在、北海道大学大学院文学研究科教授(中国文化論講座).
〈著書〉
『論語 珠玉の30章』大修館書店、2007年)00
『概説 中国思想史』分担執筆、ミネルヴァ書房、2010年.
佐々木 啓(ササキ ケイ)
1959年東京都生、北海道大学大学院文学研究科博士後期課程退学.
現在、北海道大学大学院文学研究科教授(宗教学インド哲学講座).
〈著書〉
『中川秀恭先生85歳記念論文集 なぜキリスト教か』分担執筆、創文社、1993年.
『聖と俗の交錯』分担執筆、北海道大学図書刊行会、1993年.
『聖書解釈学』ポール・リクール著、共訳、ヨルダン社、1995年.
トレント・マクシ(Trent Maxey
1974年鹿児島県生、アメリカ合衆国コーネル大学博士課程修了.Ph.D.
現在、アメリカ合衆国アマースト大学准教授(歴史).
〈著書〉
The "Greatest Problem" : Religion and State Formation in Meiji Japan (Harvard University Asia Center, 2014).
Re-Inventing Tokyo: Japan's Largest City in the Artistic Imagination (contributing author, New England University Press, 2012).
ミシェル・ラフェイ(Michelle La Fay
1967年アメリカ合衆国アイダホ州生、北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了.博士(文学).
北海道教育大学旭川校を経て、2014年4月より北海道大学大学院文学研究科特任准教授(国際交流室).
〈著書〉
『なまら内村鑑三なわたし:二つの文化のはざまで』柏艪社、2011年.
「新渡戸稲造と内村鑑三の武士道」『基督教學』第45号、2010年.
権 錫永(クォン ソギョン)
1964年韓国生、北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了.博士(文学).
現在、北海道大学大学院文学研究科教授(歴史文化論講座).
〈著書〉
『オンドルの近代史:オンドルをめぐる朝鮮人の暮らしと歴史』一潮閣〔ソウル〕、2010年).
『岩波講座文学 第二巻 メディアの力学』分担執筆、岩波書店、2002年.
「帝国主義と「ヒューマニズム」:プロレタリア文学作家を中心に」『思想』第882号、1997年.
日野 峰子(ヒノ ミネコ)
1959年北海道生、北海道大学文学部卒業.
現在、会議通訳者・ISSインスティテュート講師.20年にわたり世界医師会総会および理事会での通訳を務める.ほかに日経フォーラム世界経営者会議、国連防災世界会議パブリックフォーラム等、年間220日は会議通訳者として稼働するかたわら、25年にわたり後進の指導・育成にも精力的に取り組む.2008年より官公庁向け政策情報誌『毎日フォーラム』にコラムを連載中.ブログ「通訳クラブ」にも転載.
白木沢 旭児(シラキザワ アサヒコ)
1959年宮城県生、京都大学大学院農学研究科博士課程単位取得退学.博士(経済学).
現在、北海道大学大学院文学研究科教授(日本史学講座).
〈著書〉
『大恐慌期日本の通商問題』御茶の水書房、1999年.
『日中両国から見た「満洲開拓」:体験・記憶・証言』共編著、御茶の水書房、2014年.
(本書刊行時の情報です)