商品説明
日本サブカルチャーを読む ー 銀河鉄道の夜からAKB48まで
押野武志 編著
定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
判型:四六 並製
頁数:352
ISBN:978-4-8329-3389-7
Cコード:C1095
発行日:2015-03-31
●本書の特徴
宮沢賢治は元祖「セカイ系」だった!? 宮沢賢治・村上春樹など文学作品からミステリ、ラノベ、百合小説、BL、アイドル、ゲームまで、多種多様な対象とジャンルを取り上げ、その現代的意義と可能性を明らかにする。錯綜する日本のサブカルチャーを読み解く視座を提供する試み。
●目次
はじめに:日本サブカルチャーを読むための史的展望
1 本書の目的
2 日本におけるサブカルチャーの定義
3 対抗文化としてのサブカルチャー
4 1970年代のサブカルチャー
5 カルチャー/サブカルチャーの境界の消滅
6 日本文化論とサブカルチャー:1980年代以降の展開
7 サブカルチャー批評の現在
8 本書の構成
〔1 サブカルチャーの多様な展開〕
セカイ系文学の系譜:宮沢賢治からゼロ年代へ………押野武志
1 セカイ系文学とは何か
2 賢治の世界認識
3 「世界」から「セカイ」へ
4 サブカルチャーとしての賢治
5 セカイ系文学の射程
山川直人『100%の女の子』における合成の機能:村上春樹の原作小説との対照………西田谷 洋
1 はじめに
2 合成される『パン屋襲撃』
3 潜勢的なものの現勢化への抵抗
4 潜勢性と現勢性の対立の強化
5 レイヤーのコンポジティングと未了
『食堂かたつむり』試論:倫子のイメージをめぐって………水川敬章
1 はじめに:自然派ワインを導きに
2 強くて可愛い娘の物語:小説『食堂かたつむり』
3 可愛い呆けた娘の物語:映画『食堂かたつむり』
4 小説への接近:絵本『りんごさんとるりこさん』とマンガ『食堂かたつむり』
5 おわりにかえて:倫子を回帰させる『食堂かたつむりの料理』
生と死の狭間で歌う少女:AKB48から美空ひばりへ、リン・ミンメイへ………千田洋幸
1 アイドルの記憶装置としての『Show must go on』
2 焦土に歌う美空ひばり
3 死を呼び寄せるアイドル、リン・ミンメイ
4 \死の天使″ぱるるの誕生
ドライビングゲームにおいて、いかにして「物語」はマウントされるのか、あるいはされないのか………竹本寛秋
1 問題設定
2 「物語」としてのドライビングゲーム:アーケードゲームからコンシューマゲームへ
3 『首都高バトル』が拡張した「プレイ経験」の質
4 二重の「プレイ経験」としての『グランツーリスモ』
5 『Forza Motorsport』における「プレイ経験」の継承と展開
6 おわりに
〔2 キャラクターから複数の物語へ〕
〈操り〉という亡霊:東川篤哉『ここに死体を捨てないでください!』………諸岡卓真
1 ユーモアミステリと〈操り〉
2 〈操り〉の拡張
3 〈操り〉の逆説
4 〈操り〉の崩れ
5 連鎖する勘違い
6 必然としての偶然
7 事件の真相
8 〈操り〉という亡霊
9 〈操り〉の誘惑
pixivという未来:「クィア・アダプテーション」としての二次創作………岩川ありさ
1 pixivとジェンダー
2 「タグ」がつなぐオルタナティブな物語
3 「祈り」としての二次創作
4 「クィアな再解釈」の可能性
5 「腐女子ヘイト」という問題系
6 pixivという未来
〈関係〉を書くことの可能性:百合小説・中里十『君が僕を』論………佐藤 亮
1 はじめに
2 「百合」というジャンル
3 ジャンルの問題
4 中里一の百合論
5 『君が僕を』論(1):枠組みと混交性
6 『君が僕を』論(2):解けない問いをめぐって
7 『君が僕を』論(3):構造の解明と解明不可能な謎
8 『君が僕を』論(4):二つの終わり
9 おわりに
ミステリとライトノベル:谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズにおける物語世界の構成………横濱雄二
1 物語世界の表象
2 物語世界の動態
3 物語世界の操作可能性
4 物語世界の駆動力
5 物語世界の複数性
6 物語世界の代補と代表
〔3 サブカルチャーを理解するための新たな枠組み〕
物語としてのゲーム/テレプレゼンスとしてのゲーム:『バイオハザード』を例として………榊 祐一
1 はじめに
2 理論的考察
3 『バイオハザード』の分析(1):物語の水準に注目して
4 『バイオハザード』の分析(2):プレイ経験に関わる水準に注目して
5 おわりに
サブカルチャー批評の現在と未来:3・11以後のサブカルチャー批評は何を表象すべきなのか………柳瀬善治
1 はじめに
2 原爆とメディア:三島・ハイデガー・データベース
3 サブカルチャー批評における歴史的反復の問題
4 「資本主義の逆説的な帰結」としての「(偽の)崇高」
5 他者に開かれた「崇高」あるいは「絶対的退屈」からの開口部
6 「スーパーフラット」を読み替える:「襞」=「空隙」としてのフラット
7 「平滑空間」としてのサブカルチャーあるいは「死者」と「未生の分子」をめぐる〈線〉
8 おわりに 「倫理的な形象の出現」と「接合可能性」:3・11以後のサブカルチャーは何を表象すべきか
あとがき:戦前期の大衆文学論に触れながら
初出一覧
執筆者紹介
人名索引
●著者紹介
押野 武志(おしの たけし)
1965年、山形県生まれ。
東北大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。
北海道大学教授。専門は日本近代文学、表象文化論。
著書に『宮沢賢治の美学』(2000年、翰林書房)、『童貞としての宮沢賢治』(2003年、ちくま新書)、『文学の権能:漱石・賢治・安吾の系譜』(2009年、翰林書房)、共編著に『日本探偵小説を読む:偏光と挑発のミステリ史』(2013年、北海道大学出版会)、『コレクション・モダン都市文化 第88巻 札幌の都市空間』(2013年、ゆまに書房)など。
西田谷 洋(にしたや ひろし)
1966年、石川県生まれ。
金沢大学大学院社会環境科学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
富山大学人間発達科学部教授。専門は日本近代文学。
著書に『語り寓意イデオロギー』(2000年、翰林書房)、『認知物語論とは何か?』(2006年、ひつじ書房)、『政治小説の形成』(2010年、世織書房)、『新美南吉童話の読み方』(2013年、双文社出版)、『文学理論』(2014年、ひつじ書房)、『ファンタジーのイデオロギー:現代日本アニメ研究』(2014年、ひつじ書房)、『テクストの修辞学』(2014年、翰林書房)など。
水川 敬章(みずかわ ひろふみ)
1978年、岡山県生まれ。
名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。
愛知教育大学助教。専門は日本近現代文学・文化。
論文に「サド裁判論:澁澤龍《彦》の戦術とその意義をめぐって」(『日本近代文学』2009年5月)、「太宰治、リパッケージ そして、『嫌われ松子の一生』」(『季刊iichiko』2010年7月)など。
千田 洋幸(ちだ ひろゆき)
1962年生まれ、岩手県出身。
東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了、立教大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。
東京学芸大学教授。専門は日本近現代文学、現代文化、国語教育。
著書に『テクストと教育:「読むこと」の変革のために』(2009年、溪水社)、『ポップカルチャーの思想圏:文学との接続可能性あるいは不可能性』(2013年、おうふう)、共編著に『村上春樹と一九八〇年代』(2008年、おうふう)、『村上春樹と一九九〇年代』(2012年、おうふう)など。
竹本 寛秋(たけもと ひろあき)
1973年、北海道生まれ。
北海道大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。
鹿児島県立短期大学准教授。専門は日本近代文学、日本近代詩。
論文に「山村暮鳥の〈戦後〉」(『人文』2013年8月)、「「風景」は雑誌ではない:山村暮鳥と詩雑誌『風景』」(『雲』2010年9月)など。
諸岡 卓真(もろおか たくま)
1977年、福島県生まれ。
北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
北海道情報大学准教授。専門は日本近現代文学(主にミステリ)、現代視聴覚文化(主にビデオゲーム)。
著書に『現代本格ミステリの研究:「後期クイーン的問題」をめぐって』(2010年、北海道大学出版会)、共編著に『日本探偵小説を読む:偏光と挑発のミステリ史』(2013年、北海道大学出版会)など。
岩川 ありさ(いわかわ ありさ)
1980年、兵庫県生まれ。
東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程在籍。立教大学・文教大学・都留文科大学ほか非常勤講師。専門は日本現代文学、クィア批評、トラウマ研究。
論文に「「痛み」の認識論の方へ:文学の言葉と当事者研究をつないで」(『現代思想』2011年8月)、「境界の乗り越え方:多和田葉子『容疑者の夜行列車』をめぐって」(『論叢クィア』2012年11月)、「「セルフポートレート」の方へ:「イケメン」をめぐるポリティクス」(『ユリイカ』2014年9月)など。
佐藤 亮(さとう りょう)
1986年、宮城県生まれ。
北海道大学大学院文学研究科博士後期課程在籍。専門は日本近現代文学。
論文に「村上春樹「レキシントンの幽霊」論:反復される集約:幽霊、犬、コレクション」(『日本近代文学会北海道支部会報』2013年5月)など。
横濱 雄二(よこはま ゆうじ)
1972年、北海道生まれ。
北海道大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。
甲南女子大学准教授。専門は日本近現代文学、現代視聴覚文化。
共著に『天空のミステリー』(2012年、青弓社)、『日本探偵小説を読む:偏光と挑発のミステリ史』(2013年、北海道大学出版会)など。
榊 祐一(さかき ゆういち)
1968年、福岡県生まれ。
北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
台湾・南臺科技大學應用日語系助理教授。専門は日本近代文学・文化、現代視聴覚文化(主にビデオゲーム、アニメーション)。
共著に『ヴィジュアル・クリティシズム:表象と映画=機械の臨界点』(2008年、玉川大学出版部)、論文に「明治十年代末期における「唱歌/軍歌/新体詩」の諸相」(『日本近代文学』1999年10月)、「ビデオゲーム/物語/テレプレゼンス」(『層——映像と表現』2008年8月)など。
柳瀬 善治(やなせ よしはる)
1969年、三重県生まれ。
広島大学大学院社会科学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。
台湾・靜宜大學外語學院副教授。専門は日本近代文学、文学・文化理論。
著書に『三島由紀夫研究:「知的概観的な時代」のザインとゾルレン』(2010年、創言社)、共著に『近代の夢と知性』(2000年、翰林書房)、『戦間期東アジアの日本語文学』(2013年、勉誠出版)、共訳に『グラウンド・ゼロを書く』(J・W・トリート著、2010年、法政大学出版局)など。
(本書刊行時の情報です)