商品説明
現代宗教文化研究叢書 9
アジアの公共宗教 ― ポスト社会主義国家の政教関係
櫻井義秀 編著
定価:6,820円(本体価格6,200円+税)
判型:A5 上製
頁数:352
ISBN:978-4-8329-6860-8
Cコード:C3014
発行日:2020-03-31
●本書の特徴
アジア発の新たな公共宗教論の構築を目指し、歴史的な政教関係の構築、グローバル化によるトランスナショナルな宗教運動の影響、急速な社会変動と社会問題による人々の宗教文化への渇望の3点に着目。現代宗教が公共圏に参画する形態を比較社会学的に分析。
●目次
はじめに………櫻井義秀
1 公共宗教論の現代的課題
2 本書の構成
〔第1部 東アジアの公共宗教論〕
第1章 現代中国の政教関係と「宗教と和諧」政策の動向………川田 進
はじめに
1 中国の政教関係と「宗教の中国化」
2 和諧社会の構築と宗教の役割
おわりに
第2章 権威主義体制下の中国におけるキリスト教徒の生存戦略と政教関係──「中国のエルサレム」、浙江省温州の事例から………佐藤千歳
1 はじめに
2 宗教体制下のキリスト教の復興と発展
3 温州キリスト教会をめぐる政教関係
4 おわりに
第3章 戦後台湾の民主化運動における長老教会──三つの宣言と美麗島事件にあらわれた政教関係………藤野陽平
はじめに 台湾の民主化運動と長老教会
1 台湾の公共宗教としての長老教会
2 民主化運動の萌芽期1970年代の長老教会
3 美麗島事件
おわりに(長老教会:三つの宣言から美麗島事件、党外人士:雑誌の出版・選挙から美麗島事件)
[付録]台湾民主化運動年表
第4章 モンゴルにおける政教関係と公共宗教──仏教、社会主義、福音派………滝澤克彦
1 はじめに
2 社会主義体制の確立と宗教弾圧
3 家庭内における「宗教の残滓」
4 モンゴルにおける宗教概念と私的領域
5 ポスト社会主義期における仏教の再興と政治化
6 福音派キリスト教による社会活動と社会主義
おわりに──分析的な公共宗教論はいかにして可能か
第5章 戦後日本における二つの宗教右派運動──国際勝共連合と日本会議………櫻井義秀
1 はじめに
2 アジア的反共産主義運動の隆盛と挫折
3 民族右派から国家保守運動へ
4 政治的右派の社会的支持
5 おわりに
〔第2部 東南・南アジアの公共宗教論〕
第6章 不可視化されるタイのムスリム──イスラームの表象から見たタイ仏教と公共宗教………矢野秀武
1 はじめに
2 先行研究と資料
3 インド世界とイスラーム(1849年から1867年)
4 交渉・統治の対象としてのムスリム(1868年から1932年)
5 希薄化するイスラームとムスリム(1932年から1969年)
6 変化の兆し、変わらぬ眼差し(1970年から)
7 結論
第7章 南アジアから公共宗教論を問い直す──植民地近代とインド社会………外川昌彦
1 近代世界と公共宗教
2 アジアから見た公共宗教論──カサノヴァの問題提起から
3 植民地近代のインドにおける公共宗教
4 「国境を超える想像の共同体」
〔第3部 スラブの公共宗教論〕
第8章 危機時代における公共宗教としてのウクライナの正教会──ポスト社会主義時代の新しい公共宗教のカタチ………高橋沙奈美
1 はじめに──東方正教の世界とウクライナにおける正教会の独立問題
2 ウクライナにおける宗教の公共性
3 危機の時代と正教会
4 今後の展望
第9章 公共宗教の光と影──ポーランドにおけるカトリック教会と公教育………加藤久子
はじめに
1 公共宗教論とポーランド
2 公教育における宗教教育制度の変遷
3 社会主義政権下における宗教教育の実情
4 体制転換後(1989—)
5 結 語
おわりに
索 引
執筆者紹介
●著者紹介
櫻井 義秀(サクライ ヨシヒデ)
1961年 山形県生まれ
1987年 北海道大学大学院文学研究科博士課程中退
現在:北海道大学大学院文学研究科教授
〈単・共著〉
『東北タイの開発と文化再編』北海道大学図書刊行会、2005年.
『⽛カルト⽜を問い直す』中央公論新社、2006年.
『東北タイの開発僧』梓出版社、2008年.
『霊と金』新潮社、2009年.
『統一教会』(共著)北海道大学出版会、2010年.
『死者の結婚』北海道大学出版会、2010年.
『カルト問題と公共性』北海道大学出版会、2014年.
『人口減少時代の宗教文化論』北海道大学出版会、2017年.
〈編著〉
『カルトとスピリチュアリティ』ミネルヴァ書房、2009年.
『社会貢献する宗教』(共編)世界思想社、2009年.
『現代タイの社会的排除』(共編)梓出版社、2010年.
『越境する日韓宗教文化』(共編)北海道大学出版会、2011年.
『日本に生きる移民たちの宗教生活』(共編)ミネルヴァ書房、2012年.
『大学のカルト対策』(共編)北海道大学出版会、2012年.
『アジアの宗教とソーシャル・キャピタル』(共編)明石書店、2012年.
『タイ上座仏教と社会的包摂』明石書店、2013年.
『アジアの社会参加仏教』(共編)北海道大学出版会、2015年.
『カルトからの回復』北海道大学出版会、2015年
『人口減少社会と寺院』(共編)法藏館、2016年.
『現代中国の宗教変動とアジアのキリスト教』北海道大学出版会、2017年.
『しあわせの宗教学』法藏館、2018年.
『宗教とウェルビーイング』北海道大学出版会、2019年.
など
川田 進(カワタ ススム)
1962年生まれ
現在:大阪工業大学教授
〈主著〉
『東チベットの宗教空間:中国共産党の宗教政策と社会変容』北海道大学出版会、2015年(単著).
『天空の聖域ラルンガル:東チベット宗教都市への旅』集広舎、2019年(単著).
佐藤 千歳(サトウ チトセ)
1974年生まれ
現在:北海商科大学准教授
〈主著〉
「宗教の利用から監督への後退:習近平政権の宗教政策からみる政教関係の変化」『21世紀東アジア社会学』第10号:11-27頁、2019年.
「基督教信仰和残障児童教育(プロテスタント信仰と障がい児教育)」『中国法律与宗教観察』第11巻2号:61-78頁、83-103頁、2018年.
「中国浙江省におけるキリスト教会取締りと信仰維権:権威主義体制における異議申し立てとその限界」『日中社会学研究』第25号:96-106頁、2017年.
藤野 陽平(フジノ ヨウヘイ)
1978年生まれ
現在:北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授
〈主著〉
『台湾における民衆キリスト教の人類学:社会的文脈と癒しの実践』風響社、2013年(単著).
「台湾の政教関係にとっての台湾語教会という存在:長老教会と台湾独立派の友好関係」櫻井義秀編著『現代中国の宗教変動とアジアのキリスト教』北海道大学出版会、2017年(分担執筆).
滝澤 克彦(タキザワ カツヒコ)
1975年生まれ
現在:長崎大学多文化社会学部准教授
〈主著〉
『ノマド化する宗教、浮遊する共同性:現代東北アジアにおける「救い」の位相』東北大学東北アジア研究センター、2011年(編).
『無形民俗文化財が被災するということ:東日本大震災と宮城県沿岸部地域社会の民俗誌』新泉社、2014年(高倉浩樹と共編).
『越境する宗教 モンゴルの福音派:ポスト社会主義モンゴルにおける宗教復興と福音派キリスト教の台頭』新泉社、2015年(単著).
矢野 秀武(ヤノ ヒデタケ)
1966年生まれ
現在:駒澤大学総合教育研究部教授
〈主著〉
『現代タイにおける仏教運動:タンマガーイ式瞑想とタイ社会の変容』東信堂、2006年(単著).
『アジアの社会参加仏教:政教関係の視座から』北海道大学出版会、2015年(櫻井義秀・外川昌彦・矢野秀武編著).
『国家と上座仏教:タイの政教関係』北海道大学出版会、2017年(単著).
外川 昌彦(トガワ マサヒコ)
1964年生まれ
現在:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授
〈主著〉
An Abode of the Goddess: Kingship, Caste and Sacrificial Organization in a Bengal Village, Manohar Publishersp, New Delhip, 2006(単著).
『アジアの社会参加仏教:政教関係の視座から』北海道大学出版会、2015年(櫻井義秀・外川昌彦・矢野秀武編著).
高橋 沙奈美(タカハシ サナミ)
1979年生まれ
現在:九州大学大学院人間環境学研究院講師
〈主著〉
『ソヴィエト・ロシアの聖なる景観:社会主義体制下の宗教文化財、ツーリズム、ナショナリズム』北海道大学出版会、2018年(単著).
「地域大国の世界遺産:宗教と文化をめぐるポリティクス・記憶・表象」望月哲男編著『ユーラシア地域大国の文化表象』ミネルヴァ書房、2014年(分担執筆).
「北ロシアにおける聖地と文化遺産:社会主義の経験と景観表象の変容」杉本良男・松尾瑞穂編『聖地のポリティクス:ユーラシア地域大国の比較から』風響社、2019年(分担執筆).
加藤 久子(カトウ ヒサコ)
1975年生まれ
現在:國學院大學研究開発推進機構研究員
〈主著〉
『教皇ヨハネ・パウロ2世のことば:1979年、初めての祖国巡礼』東洋書店、2014年(単著).
「社会主義政権下での宗教実践:スターリン期ポーランドの新興工業都市の暮らし」中野智世・前田更子・渡邊千秋・尾崎修治編著『近代ヨーロッパとキリスト教:カトリシズムの社会史』勁草書房、2016年(分担執筆).
(本書刊行時の情報です)