商品説明
宇都宮 輝夫 著
判型: 四六 並製
頁数: 262
ISBN: 978-4-8329-3390-3
Cコード: C1014
発行日: 2015-03-31
●本書の特徴
医療技術の発展や社会の高齢化に伴い,生と死をめぐる諸問題が社会問題として注目され,死生観の果たす役割も見直されている。本書は,長く宗教学を研究してきた著者が,「いかに生き,いかに死ぬか」という死生学の根源的問題について,死生観と宗教との関係から,深く考察した。エリザベス・キューブラー=ロス,ジェフリー・ゴーラー,エリック・エリクソン,ヴィクトール・フランクルをはじめ,多くの思想家・研究者の考えを紹介しながら,著者の思索をわかりやすく提示した1冊。
●目次
まえがき
序 章
第一章 人生の受容と死の受容
——老いゆく人生に向かいあいて気張りもせず絶望もせず
一 はじめに——学問と批判的精査
二 人の死に方——エリザベス・キューブラー=ロス
三 よい死という規範的表象
四 やり残した仕事
五 おわりに
第二章 わずかばかりの勇気もて、死を迎えるを得ば
——受容と絶望のはざまで死への道を求めて
一 いにしえのよき死に方と現代における往生際の悪さ?
1 伝統から現代への大変化
2 批判的検証
二 悟りと円熟の老年期?
1 よい死という規範的表象
2 エリクソンによる老年期の調査
3 人生は解釈であり不断に再構成される
三 よき老いと死という神話と強迫観念
1 英知ある老人?——エリクソンについて
2 ゴールは穏やかな死の受容?——キューブラー=ロスについて
四 導き出される実践知
1 アイデンティティは一朝一夕に成らず
2 人生の完結=やり残したことはないという境地はあり得るのか
3 悲しくない死はない
4 かっこよく死ねるわけがない——達人と大衆
5 幸福度
第三章 生まれて愛して死んでゆく、なんの不服があろうか
——生の意味の根底を求めて
一 はじめに——「何の役に立つのか」という問い
二 有用性と道徳性
三 エウダイモンな人間
四 人生理想と社会倫理
五 有意味・無意味の根源
六 理由を挙げることは貶めることである
七 死後存続の宗教教説
第四章 死生観を学ぶこと、生死への勇気を得ること
一 はじめに——死生学の課題と死生観研究
二 論証・実証の難しさ
三 思想の力——学習の効果
四 医療の全能化
五 何が本当に人を支え救うのか
六 展 望——むすびに代えて
第五章 死を前にした人への心のケア
——スピリチュアル・ケアと宗教
一 死と宗教
二 スピリチュアルな領域と宗教
三 スピリチュアル・ケアで何が問題か
第六章 死別によって生に意味を見失う
——立ち直る力
一 はじめに
二 世界と生の意味
三 カオスのコスモス化および苦難の神義論
四 コスモス化する宗教の力
五 神義論の現実の力
第七章 生と死を考える
一 はじめに
二 『夜と霧』
三 人生で大切な知恵はすべて小中学校で学んだ
四 フランクルを補足すると
五 倫理性を精査すると
六 結 論
あとがき
参考文献
索 引
●著者紹介
宇都宮 輝夫
1950年生まれ。1972年北海道大学文学部卒業。1976年北海道大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。室蘭工業大学助教授,北海道大学文学部助教授,同教授,文学研究科教授を経て,2013年より北海道大学大学院文学研究科特任教授。専門は宗教社会学,キリスト教学,死生学。
著書に『生と死の宗教社会学』(1989年,ヨルダン社),『岩波講座・宗教 第三巻・宗教史の可能性』(共著,2004年,岩波書店),『死生学・第二巻』(共著,2008年,東京大学出版会),『ケア従事者のための死生学』(共著,2010年,ヌーヴェルヒロカワ),『宗教の見方』(2012年,勁草書房)ほか。