商品説明
カントの世界論 ー バウムガルテンとヒュームに対する応答
増山浩人 著
定価:6,050円(本体価格5,500円+税)
判型:A5 上製
頁数:246
ISBN:978-4-8329-6816-5
Cコード:C3010
発行日:2015-11-13
●本書の特徴
本書の目的は、「世界の統一」の問題を軸にして、カントの批判哲学に基づく世界論と伝統的世界論との間の連続性と断絶を示すことである。そのために本書では「複合体」と「系列」という世界を考察する二つの観点に着目して議論の中心に据え、主にバウムガルテンとカントの世界論の比較検討により、カントも「世界の統一」の問題を主題的に論じていたこと、この問題に対してカントが従来の哲学者とは異なる仕方で応答を試みていたことの二点を示す。 本書はカントの世界論がアンチノミー論よりも広範で豊かな内容を持つ議論であること、そしてこの新たな世界論を根拠付けている点にも批判哲学の意義が見出されることを明らかにした。
●目次
序論
第1節 本書の目的
第2節 ヴォルフ学派とヒュームの双方に対する応答としてのカント批判哲学
第3節 バウムガルテンの『形而上学』とカントの講義録・メモの重要性
第4節 世界論の対象
第5節 伝統的世界論の世界の考察方法──「複合体」と「系列」という二つの観点
第6節 本書の問題設定
第7節 本書の方法と概要
第1章 バウムガルテンの世界論
はじめに
第1節 バウムガルテンの『形而上学』の特色と体系構成
第2節 世界論の二つの主題──複合的存在者としての世界と実体としての世界の部分
第3節 存在論によるモナドの諸属性の導出
第4節 モナドの表象性格の受容
第5節 モナド間の相互性と予定調和説の証明
第6節 バウムガルテンの物体論
第7節 バウムガルテンにおける「系列の全体性」の問題──「無限への進行」の不可能性
おわりに
第2章 カントにおける世界考察の方法
はじめに
第1節 「世界の質料」、「世界の形式」、「世界の全体性」という三分法の典拠
第2節 「世界の質料」、「世界の形式」、「世界の全体性」という三分法の導入の目的
おわりに
第3章 カントの自然概念──「名詞的自然」としての世界
はじめに
第1節 『純粋理性批判』における世界と自然の区別
第2節 「形容詞的自然」と「名詞的自然」の区別とその歴史的源泉
第3節 バウムガルテンの自然概念──「存在者の自然(natura entis)」と「全自然(natura universa)」
第4節 カントによるバウムガルテンの自然概念の受容
第5節 「質料的な意味での自然」と「形式的な意味での自然」
おわりに
第4章 第二類推論と充足根拠律
はじめに
第1節 ヴォルフ学派による「充足根拠律」の証明とその問題点
第2節 物の「充足根拠律」の限界確定──「あらゆる偶然的な物は根拠を持つ」という命題をめぐって
第3節 物の「充足根拠律」の新たな証明としての「第二類推論」
第4節 「ヴォルフ学派に対するカントの応答」としての「第二類推論」の位置づけ
第5節 「第二類推論」をヒュームに対する応答として読む際に発生する問題点──ヒュームの実体と力の観念に関する批判
おわりに
第5章 モナド論に対する応答としての「第三類推論」
はじめに
第1節 「第三類推論」の証明構造
第2節 原因性のカテゴリーと相互性のカテゴリーの役割の違い
第3節 『就職論文』における実体間の相互性の問題
第4節 「第三類推論」における「現象的実体」
第5節 「第三類推論」における空間の役割
おわりに
第6章 デザイン論証とAls-Obの方法──ヒュームの『自然宗教に関する対話』に対するカントの応答
はじめに
第1節 カントの『対話』解釈──「擬人神観」と「有神論」の不可分性と両立不可能性
第2節 『対話』に対する応答の前提としてのカントの因果論
第3節 Als-Obの方法と「有神論」の擁護
おわりに
結語
文献表
あとがき
バウムガルテン『形而上学』引用箇所索引
著作名索引
人名索引
事項索引
●著者紹介
増山 浩人(マスヤマ ヒロト)
1983年 東京都福生市に生まれる
2002年 啓明学園高等学校卒業
2006年 学習院大学文学部哲学科卒業
2014年 北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了 博士(文学)
現在 日本学術振興会特別研究員PD(上智大学)
日本カント協会 第6回濱田賞(2011年)
〈論文等〉
「第二類推論と充足根拠律」『カントと幸福論(日本カント研究11)』理想社,2010年,123-138頁.
「デザイン論証とAls−Obの方法――ヒュームの『自然宗教に関する対話』に対するカントの応答」日本哲学会『哲学』第64号,191−205頁,2013年.
酒井潔・佐々木能章(監修)『ライプニッツ著作集 第Ⅱ部 第1巻 哲学書簡』工作舎,2015年(共訳者として参加).
など
(本書刊行時の情報です)