商品説明
吉田文和・深見正仁・藤井賢彦編著
判型: A5 並製
頁数: 288
ISBN: 978-4-8329-6748-9
Cコード: C3036
発行日: 2011-03-31
●本書の特徴
温室効果ガスの2020年での25%,2050年においての80%削減は可能なのであろうか。こうした中・長期的な国家戦略を概観すると共に,企業経営,交通計画,都市緑化,都市・農村連携,森林の役割などの各分野における低炭素化政策を解説する。また,低炭素世界をつくるための国際協力や排出量取引,低炭素社会を包含する持続可能な社会・現代文明論など,地域レベルから世界規模までの低炭素社会づくりについてわかりやすく紹介する。 「持続可能な低炭素社会」の第3冊目。第一冊では,地球温暖化を中心とする地球規模環境劣化の要因を自然科学および社会科学の両面から総合的にとらえた。第二冊では,基礎知識の解説と地域における取り組みを具体例をもちいて紹介した。第三冊では,中・長期的国家戦略,各分野における取り組み,そして国際政策について解説する。
●目次
序 文
はじめに——COP16と持続可能な低炭素社会
第1章 低炭素社会概論——目指す社会と政策手法
1.「低炭素社会」とは何か?
2.低炭素社会の数値目標
3.「生活の豊かさ」と低炭素社会
4.低炭素社会の姿
5.低炭素社会実現の阻害要因
6.カーボン・プライシング政策の意義と内容
地球温暖化対策のための税の検討そのほかの税制全体の見直し / 国内排出量取引制度の創
設 / 再生可能エネルギーに係る全量固定価格買取制度の創設
7.カーボン・プライシング政策の課題と日本経済の展望
追 記
引用・参考文献
第2章 日本の温室効果ガス25%削減戦略——環境・経済政策と再生可能エネルギー政策
1.日本の25%削減計画の基本方針はいかにあるべきか
目指すべきは、「よい生き方」と「持続可能性」 / 持続可能性の課題 / 必要な基本方針 / 省
エネの可能性 / 環境省「ロードマップ」の分析 / 経済産業省「エネルギー基本計画」 / 原
子力の位置付け
2.日本の再生可能エネルギー
再生可能エネルギーの普及見通し(1) / 再生可能エネルギーの普及見通し(2) / スマ
ートグリッド(次世代送電網)の役割 / 「環境とエネルギー」を事業の柱・再編軸にする企
業の急増 / バイオマス利用の潜在的可能性、北海道とバイオマス資源
3.日本における再生可能エネルギー普及への課題
高い目標と政治的約束の必要性 / グリーン税制(環境税制など) / 規制改革と政策統合 /
再生可能エネルギー市場の確立(固定価格買取制度など) / 地域再生・雇用創出との政策統
合 / 公共事業の高コスト体質の改革
引用・参考文献
第3章 低炭素社会とこれからの企業経営
1.加速化する気候変動
2.EU諸国の取り組みと日本
3.スターン・レビューの意味
4.EUの排出量取引制度
5.米国の動き
6.日本の取り組み
温室効果ガスの削減状況 / 日本の気候変動政策の問題点
7.日本企業の温室効果ガス削減対策
取り組みの現状調査 / 企業の削減動機と削減費用
8.気候変動対策と経済
2009年の旧中期目標策定の問題点 / 民主党の気候変動政策 / これからの気候変動政策に
望まれる基本的方向 / 低炭素時代の企業経営の基本的方向
引用・参考文献
第4章 京都議定書における国際排出権取引の実際
1.排出権取引システムとしての京都議定書
京都議定書の遵守は排出量とクレジット量のバランス / 京都議定書上のさまざまなクレジ
ット / クレジット取引の基盤 / 京都議定書の遵守プロセス / 京都議定書の柔軟性
2.炭素クレジットのマーケット
国内排出権取引制度 / 制度設計により異なるクレジット / マーケットの状況
3.NEDOにおける排出権取引に関する事業
NEDOのクレジット取得業務の概要 / クレジットの直接取得 / クレジットの間接取得 /
グリーン投資スキームによるクレジット取得 / NEDOのクレジット取得事業の成果
4.まとめ
わが国の京都議定書の達成の見通し / 排出権取引により拡大する環境ビジネスの機会
引用・参考文献
第5章 低炭素社会における交通の計画と施策
1.グローバルで考えローカルで行動を
ストラスブールの場合 / 豊田市の場合 / 富山市の場合
2.都市交通の新しい施策導入の考え方
混雑税による交通渋滞軽減 / HOVレーンとトランジットモールによる交通渋滞軽減 / 公
共交通利用促進のための新しい施策
3.低炭素型交通政策実現のための評価方法と適用
札幌都心部の持続可能な交通計画策定 / 自動車利用費用の増加に対する自動車利用意思の
変化
引用・参考文献
第6章 ヒートアイランドと都市緑化——札幌と東京を事例として
1.ヒートアイランド現象の実態
2.ヒートアイランドをめぐる行政の動き——東京都
3.都市緑化の現状
引用・参考文献
第7章 低炭素社会構築に果たす森林・林業の役割
1.低炭素社会の構築に向けた森林・林業の役割
二酸化炭素の吸収源としての森林 / 木材資源の利用を通した貢献 / 蓄積機能 / 省エネル
ギー機能 / 化石エネルギー代替機能 / 木材を使う意味
2.低炭素社会構築を支える森林管理・森林資源活用のあり方
木材の有効・効率的な利用 / 近くの森林で生産される材を使う / 木材を長く使う / 持続
的な森林管理の確保 / 低炭素社会を支える仕組み
追 記
引用・参考文献
第8章 生物多様性と地球温暖化——対策の類似性と相違性
1.生物多様性に関する国際的な動向
生物多様性に関する国際環境条約 / 生物多様性条約 / 生物多様性に関する指標例
2.生物多様性対策と温暖化対策の類似点と相違点
二酸化炭素排出削減の必要性を多面的に考える / 温暖化の観点から / 生物多様性の観点
から / 生物多様性条約と気候変動枠組条約 / 森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減 /
生物多様性対策と温暖化対策の対比 / 経済との兼ね合い
3.持続可能な社会を目指して
引用・参考文献
第9章 地球温暖化防止の国際法制度と予防原則
1.はじめに
2.温暖化関連条約における予防原則の意味
「防止」と「予防」 / 予防原則がなぜ正当化されるのか? / いかなる予防措置が求められ
るのか? / 小括
3.温暖化防止の条約制度における予防原則の機能
気候変動枠組条約における「原則」 / 締約国による予防原則の援用 / 予防原則の規範的意義
4.結びに代えて
引用・参考文献
第10章 気候変動対策と国際協力——途上国支援の実態
1.政府開発援助と気候変動
2.気候変動は起こっているのか
3.国際会議における先進国と途上国との意見の対立
4.洞爺湖サミットまでの政府の関心
5.「美しい星50」から鳩山イニシアティブまで
「美しい星50」での資金メカニズム / クールアース・パートナーシップ / 鳩山イニシアテ
ィブ
6.国際協力機構・気候変動対策室
7.洞爺湖サミット後の途上国支援
8.北海道大学が関係する途上国支援
インドネシア・泥炭・森林における火災と炭素管理 / ブルキナファソ・アフリカサヘル地域
の持続可能な水・衛生システム開発プロジェクト
9.今後の気候変動に係る途上国支援について
10.市民や学生に期待すること
引用・参考文献
第11章 環境の時代とは何か——近代の終わるとき
1.「近代」とは何か
2.人口、経済成長と近代の終焉
3.エネルギー——地球システムと人類系を駆動する動力
太陽エネルギー / 化石燃料とEPR / 地球温暖化? / 原子力
4.水——地球システムと人類系を作動させる主媒体
水文大循環と水使用 / 都市 / 水の持続可能性 / 食料
5.近代の終焉と将来の社会
引用・参考文献
おわりに
索 引
●著者紹介
吉田 文和
1950年生まれ
京都大学大学院経済学研究科博士課程修了
北海道大学大学院経済学研究科教授 経済学博士(京都大学)
第2章,はじめに執筆
深見 正仁
1961年生まれ
京都大学法学部卒業
北海道大学公共政策大学院特任教授
第1章執筆
藤井 賢彦
1972年生まれ
北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了
北海道大学大学院地球環境科学研究院特任准教授
博士(地球環境科学)(北海道大学)
第8章,おわりに執筆
一方井 誠治
京都大学経済研究所教授
京大博士(経済学)
第3章執筆
加賀屋 誠一
北海道大学大学院工学研究院教授
学術博士(北海道大学)
第5章執筆
柿澤 宏昭
北海道大学大学院農学研究院教授
博士(農学)
第7章執筆
佐伯 浩
北海道大学総長 工学博士(北海道大学)
序文執筆
清水 康弘
環境省官房審議官
第4章執筆
丹保 憲仁
北海道立綜合研究機構理事長・元北海道大学総長・前放送大学学長・北海道大学名誉教授
工学博士(北海道大学)
第11章執筆
堀口 健夫
北海道大学大学院法学研究科准教授
第9章執筆
松永 龍児
北海道大学国際本部国際協力マネージャー(前国際協力機構変動対策室副室長)
第10章執筆
山口 隆子
東京都環境局自然環境部環境課主任
博士(学術)(お茶の水大学)
第6章執筆