商品説明
梶 光一・宮木雅美・宇野裕之編著
判型: B5 ソフトカバー
頁数: 266
ISBN: 978-4-8329-8171-3
Cコード: C3045
発行日: 2006-11-25
●本書の特徴
本書はエゾシカの絶滅と大発生を防止し,長期的に個体数を安定に導くための管理密度,生物学的適正密度や被害許容水準からみた適正密度を検討したものである。ニホンジカの大発生は,日本各地で農林業への激害や天然林への悪影響をもたらし,人間の生産活動や自然生態系を脅かす存在となった。このようなシカ類の大発生は北米やヨーロッパでも同時代的に生じており,生態学や保護管理上,高い関心が寄せられている。本書では,エゾシカの爆発的増加がもたらした農林業被害や自然生態系への悪影響を低減するための個体群管理方法や,密度上昇がシカ自身の体サイズや繁殖,生息地,農作物,牧草地,人工林へ与える影響評価手法を解説している。また,エゾシカの有効利用の取り組みなど持続的な資源管理の施策についても提言されている。これらの分野は生態学,数理生態学,農学,林学,畜産学,疫学などの学際領域にまたがり,基礎と応用の研究領域に貢献するほか,エゾシカ一種のみならず,他の野生動物や植生保全を含めた生態系管理のあり方を考える上でも資すること大である。研究者や行政担当者待望の書といえる。
●目次
第I部 エゾシカの歴史と生態
第1章 北海道の自然環境とエゾシカの歴史
第2章 分布と生態-
第3章 調査地の概要
第II部 個体群管理と生息地評価
第4章 道東地域個体群のフィードバック管理
第5章 高密度化がエゾシカに及ぼす影響
第6章 土地利用と積雪からみたエゾシカの生息地
第7章 広葉樹林における餌資源量と森林構造
第III部 農林業被害第
第8章 牧草地で飽食? シカはどのような牧草地を好むか
第9章 農作物の食害指標を得るために
第10章 人工林のエゾシカ被害
第11章 天然林への影響
第IV部 採食生態と外部寄生虫
第12章 エゾシカはどれぐらいの栄養を必要とするか?
第13章 エゾシカ寄生マダニ類の生態
第14章 人獣共通感染症
第V部 エゾシカとの共存を求めて
第15章 鳥獣行政の歩み
第16章 適正密度とは
第17章 保護管理への提言
第18章 保護管理計画の策定と実践
引用文献
●著者紹介
梶 光一
1953年 東京都生まれ
東京農工大学大学院共生科学技術研究院 教授
北海道では27年間にわたるエゾシカの研究をもとに,エゾシカのモニタリングシステムのベースラインと保護管理システム策定に従事。 知床世界自然遺産地域科学委員のエゾシカワーキンググループ座長,エゾシカ保護管理計画検討委員などを務め,エゾシカの管理計画を害獣管理から資源管理へ,さらには生態系管理へと発展させてきた。2006年4月より東京農工大学教授。野生動物保護管理の担い手養成の拠点作りを目指す。
著書 『知床の動物』(分担執筆,北海道大学図書刊行会),『世界遺産をシカが喰う−シカと森の生態学』(分担執筆,文一総合出版)など
宮木 雅美
1949年 京都府生まれ
北海道環境科学研究センター自然環境部 主任研究員
北海道林務部,北海道立林業試験場勤務から現在に至るまで,森林の管理や,齧歯類による種子散布やエゾシカによる森林植生への影響など動物と森林との関わり合い,湿原,海岸地域など自然環境のモニタリング,希少植物の保全等の調査研究を行っている。
著書 『雑木林の植生管理』(分担執筆,ソフトサイエンス社)など
宇野 裕之
1961年 東京都生まれ
北海道環境科学研究センター 道東地区野生生物室長
美幌博物館学芸員を経て現在に至るまで, 北海道東部地域のエゾシカの生態調査・研究に従事している。また,エゾシカ対策連絡協議会などを通じて,地域の農林業被害対策,植生保全や有効活用など,保護管理全般に現場の研究者として関わっている。
著書 『知床の動物』(分担執筆,北海道大学図書刊行会),『エゾヒグマ−その生活をさぐる』(分担執筆,汐文社)など