商品説明
持続可能な低炭素社会
吉田文和・池田元美編著
定価:3,300円(本体価格3,000円+税)
判型:A5 並製
頁数:248
ISBN:978-4-8329-6708-3
Cコード:C3036
発行日:2009-03-25
●本書の特徴
人類が、水の惑星ともいわれる美しい地球を、初めて宇宙から観てから50年が経った。その美しいはずの地球は、人口増加による食糧問題、急激な工業化にともなう水質・大気汚染の顕在化、それに化石燃料などの大量消費によるエネルギー危機など、人間活動により、地球環境の劣化をもたらしてきている。
特に、化石燃料の利用拡大にともなって発生する炭酸ガスは、地球温暖化という地球規模の環境に大きな影響を及ぼすとともに、我々人類の持続的な発展を阻害することにもなる。これまで、大量の化石燃料などを消費してきた我々先進国の責任はきわめて大きいといえる。
本学は2006年、「持続可能な開発」国際戦略本部を設置し、人類のサステナビリティ達成に向けた教育研究を積極的に推進してきた。2008年7月、北海道の洞爺湖において、先進国首脳会議(G8サミット)が開催された折、本学においても、その前後4週間をサステナビリティ・ウィークスと定め、約40のサステナビリティに関する国際シンポジウムやフォーラム、それに市民向けの公開講座を実施した。そのなかで、大学院共通講義として、「持続可能な低炭素社会」を設け、一般の方々も巻き込んだ対話型の講義を実施したが、それをまとめたものが本書である。内容は、環境劣化・地球温暖化といった基本的な環境変化のメカニズムから始まり、続いて、環境経済学や国際環境法といった立場から、低炭素社会に向けての制度論を展開し、最後に低炭素社会の実現に向けての新たな技術開発の現状と近い将来、世界最大の炭酸ガス排出国となるであろう中国の取り組みについて述べていて、国、地方そして我々個人、それぞれのレベルで低炭素社会の実現を考える指標を与えている。わが国を代表する研究者により執筆された本書が多くの方々に読まれるとともに、わが国の低炭素社会への認識が高まり、移行のスピードが早まることを期待する。
2009年1月13日 北海道大学総長・佐伯 浩
(「序文」より)
●目次
口絵
序文………佐伯 浩
はじめに………吉田文和
第1章 地球温暖化の自然科学的メカニズム………藤井賢彦・山中康裕・池田元美
1.温暖化とはどういうことか?
2.温暖化により日本や世界はどうなるか?
3.人為起源二酸化炭素の行方
4.どのくらい二酸化炭素を減らせば温暖化は防げるのか?
引用・参考文献
第2章 温室効果,および気候変化と水資源への影響………山崎孝治・池田元美
1.地球上の水循環
2.地球温暖化のメカニズム
3.近年の気候変化
4.気候の将来予測
5.降水量・水資源の変化予測
6.海面水位と海洋循環への影響
7.おわりに
引用・参考文献
第3章 地球温暖化の進行にともなう森林生態系への影響:北方林に注目して………原 登志彦
1.オホーツク海周辺の気候とカムチャツカ北方林
2.カムチャツカ北方林の更新様式と環境ストレス
3.温暖化にともなう北方林の炭素吸収能力
4.北方林の将来予測と環境問題
引用・参考文献
第4章 森林などの二酸化炭素吸収源に関する温暖化対策………山形与志樹
1.グローバルな炭素循環と陸域炭素吸収源
2.森林などの二酸化炭素吸収源を用いた温暖化対策について
3.植林による温暖化対策効果
4.今後の二酸化炭素吸収源を用いた温暖化対策に関する国際的な論点
引用・参考文献
第5章 低炭素社会の環境経済学………吉田文和
1.温暖化は避けられない時代となった
2.地球環境問題が提起する課題
3.京都議定書と排出削減が進まない最大の問題
4.部門別課題と方法の検討が必要
5.2050年半減へ向けての課題
6.EUのエネルギー政策目標
7.中国とインドとの協力
8.理念・枠組・戦略の必要性と福田ビジョンの実現可能性
9.G8洞爺湖サミットの評価とCOP15への課題
10.北海道にとっての課題
11.京都議定書を超えて豊かな「低炭素社会」への道
引用・参考文献
第6章 地球温暖化問題と国際法………堀口健夫
1.環境問題に対する国際法の伝統的なアプローチ
2.地球温暖化防止のための国際法制度
3.「ポスト京都」に向けた課題
4.結びに代えて
引用・参考文献
第7章 2050年日本低炭素社会実現の見通し………甲斐沼美紀子
1.21世紀は低炭素社会へ
2.日本が70%程度の削減を必要とする理由
3.低炭素社会シナリオ検討手順
4.70%削減した日本低炭素社会の姿
5.低炭素社会実現の可能性
6.70%削減は社会システム改革と技術革新の融合で可能
7.低炭素社会に向けた12の方策
8.家庭・オフィス,移動,産業における各方策の役割
9.低炭素社会に向けた取組
引用・参考文献
第8章 国際政治から考える温暖化の20年………竹内敬二
1.気候変動論争は「寒冷化説」で始まった
2.京都議定書は不平等条約か
3.京都会議後のドラマ
4.京都議定書は新しい時代のシンボル
5.IPCCの歴史と温暖化の科学
6.各国の位置
7.EU
8.牽引車としての信頼
9.日本
10.20年間の進展
引用・参考文献
第9章 緊急諸課題と低炭素社会の両立,自然・新規エネルギー………池田元美
1.低炭素社会の炭素排出量とエネルギー
2.先進国と途上国の低炭素社会
3.自然システムと社会システムのフィードバック
4.緊急諸問題
5.人類の浅知恵の歴史
6.地球未来学の構築
引用・参考文献
第10章 北海道農業とバイオマスエネルギー………松田從三
1.日本のバイオマスエネルギーの問題点
2.バイオガスエネルギーの出口を探す
3.バイオエタノール製造による北海道の農業再構築
引用・参考文献
第11章 水素エネルギーを活用する低炭素社会の実現………市川 勝
1.水素・燃料電池とともに暮らす「水素エネルギー社会」
2.水素・燃料電池導入による社会的インパクトと二酸化炭素排出削減効果
3.水素の製造技術の課題
4.ゴミや家畜糞尿も水素資源
5.風力・太陽光を利用する水素製造と二酸化炭素排出 削減効果
6.水素を石油で運ぶ有機ハイドライド技術
7.第二のエネルギー幹線
8.水素を利用する北の街づくり
9.石油と共生する低炭素社会への道
引用・参考文献
第12章 市民風車の試み………鈴木 亨
1.政策不在の議長国・日本
2.広がる市民風車
3.日本の市民風車
4.市民風車の取り組みの意義
5.今後の展望と新たな挑戦
6.北海道大学に期待すること
第13章 低炭素世界に向けた中国の位置,挑戦と戦略………張 坤民(吉田文和 監訳)
1.低炭素経済の意味するところと国際動向
2.中国の世界経済における位置
3.中国が直面している挑戦
4.中国が選択する戦略
5.総合的政策決定と協調行動の必要性
引用・参考文献
おわりに………池田元美
索引
●著者紹介
吉田 文和(よしだ ふみかず)
1950年生まれ
京都大学大学院経済学研究科博士課程修了
北海道大学公共政策大学院教授 経済学博士(京都大学)
著書として『循環型社会』(中公新書,2004),『IT汚染』(岩波新書,2001),『北海道からみる地球温暖化』(岩波ブックレット,岩波ブックレット,2008,共著)など
*はじめに・第5章執筆,第13章監訳
池田 元美(いけだ もとよし)
1946年生まれ.
東京大学大学院工学系研究科博士課程修了
北海道大学大学院環境科学院教授 工学博士(東京大学)
著書として『地球温暖化の科学』(北海道大学出版会,2007,共著).Oceanographic Applications of Remote Sensing(Eds. Ikeda,M. and F.Dobson, 1995, CRC Press)など
*第1章・第2章・第9章・おわりに執筆
市川 勝(いちかわ まさる)
東京農業大学総合研究所客員教授・北海道大学名誉教授
理学博士(東京大学)
*第11章執筆
甲斐沼 美紀子(かいぬま みきこ)
国立環境研究所温暖化対策評価研究室室長
工学博士(京都大学)
*第7章執筆
佐伯 浩(さえき ひろし)
北海道大学総長
工学博士(北海道大学)
*序文執筆
鈴木 亨(すずき とおる)
NPO法人北海道グリーンファンド事務局長
*第12章執筆
竹内 敬二(たけうち けいじ)
朝日新聞社編集委員
工学修士(京都大学)
*第8章執筆
張 坤民(チャン クンミン)
清華大学教授・中国人民大学教授
*第13章執筆
原 登志彦(はら としひこ)
北海道大学低温科学研究所教授
理学博士(京都大学)
*第3章執筆
藤井 賢彦(ふじい まさひこ)
北海道大学大学院環境科学院特任准教授
地球環境科学博士(北海道大学)
*第1章執筆
堀口 健夫(ほりぐち たけお)
北海道大学公共政策大学院准教授
東京大学大学院博士課程単位取得
*第6章執筆
松田 從三(まつだ じゅうぞう)
ホクレン農業総合研究所顧問・北海道大学名誉教授
農学博士(北海道大学)
*第10章執筆
山形 与志樹(やまがた よしき)
国立環境研究所地球環境研究センター主席研究員
学術博士(東京大学)
*第4章執筆
山崎 孝治(やまざき こうじ)
北海道大学大学院環境科学院教授
理学博士(東京大学)
*第2章執筆
山中 康裕(やまなか やすひろ)
北海道大学大学院環境科学院准教授
理学博士(東京大学)
*第1章執筆
(本書刊行時の情報です)