商品説明
畠山武道著
判型: A5 上製
頁数: 394
ISBN: 978-4-8329-6684-0
Cコード: C3032
発行日: 2008-01-25
●本書の特徴
アメリカ環境法研究の第一人者が1970 年代から最近までの環境訴訟の動向を,原告適格論の流れに焦点を合わせて全体的,かつ簡明に叙述。 単なる判例紹介に止まらず,事件の背景や関連する法律の概要,当事者の歴史や沿革,活動内容,社会的評価等にも言及する.
●目次
第1章 アメリカ環境訴訟手続
第1節 裁判制度のあらまし
1 二本立ての裁判制度
2 事物管轄権
3 対人管轄権
4 裁判地
第2節 司法審査訴訟の種類
1 個別制定法による司法審査訴訟
2 一般制定法による司法審査訴訟
3 制定法によらない司法審査訴訟
第3節 司法審査訴訟と訴訟要件
1 司法判断適合性とその根拠
2 司法判断適合性の内容
3 行政救済の完了(exhaustion of administrative remedies)
4 第一次的管轄権(primary jurisdiction)
第4節 環境訴訟の手続
1 トライアル前手続
2 トライアル(正式事実審理)
第5節 環境訴訟と司法審査規定
1 連邦環境法の司法審査規定
2 APA(連邦行政手続法)の司法審査規定(条文番号は、合衆国法典による)
3 市民訴訟規定とAPA
第2章 合衆国における原告適格法理の変遷
第1節 政府を被告とする訴訟と私権訴訟モデル
第2節 行政国家の到来と原告適格法理の登場
1 公的規制の増加と司法権の反発
2 司法消極主義の支配と「法的権利」テスト
3 新たな受益者の登場と「法的に保護された利益」テスト
4 連邦行政手続法の制定と「法的損害」規定
第3節 市民運動の台頭と原告適格論
1 司法積極主義への転換
2 公益の代弁者としての環境団体──ハドソン川揚水式発電所事件
第4節 原告適格の拡大と新たな混迷の始まり──「事実上の損害」テストへの転換
1 フラスト対コーエン事件
2 データ処理サービス団体連合会事件
3 「事実上の損害」テストの意義と評価
第5節 環境の時代の原告適格論
1 ミネラルキング渓谷事件──事実の経過
2 訴えの提起と下級審裁判所判決
3 最高裁判所判決
4 SCRAP事件判決と原告適格の究極の拡大
第6節 保守化の時代の原告適格論
1 憲法訴訟・納税者訴訟等における原告適格の制限
2 原発訴訟の原告適格──デューク電力会社事件
3 小括
4 余録──日本捕鯨協会事件
第3章 スカリアの時代と現代原告適格論の完成
第1節 スカリア裁判官の原告適格論
第2節 全米野生生物連盟事件(ルハンI判決)
1 事実の概要
2 最高裁判所判決
第3節 野生生物の防衛者事件(ルハンII判決)
1 事実の概要
2 最高裁判所判決
3 ルハンII判決(スカリア理論)の評価と批判
第4節 現代原告適格論の構造
1 原告適格要件の定式化
2 「事実上の損害」の態様
3 「事実上の損害」の発生要件
第4章 利益の圏内テストとライプネス
第1節 利益の圏内テスト
1 利益の圏内テストの意義
2 環境訴訟と利益の圏内テスト
3 市民訴訟条項と利益の圏内テスト(ベネット対スピア事件)
第2節 ライプネス(紛争の成熟)
1 ライプネスの意義
2 環境訴訟とライプネス
3 国有林管理計画を争う訴訟
4 オハイオ森林協会事件
第5章 手続違反を主張する者の原告適格
第1節 NEPA訴訟の原告適格
1 NEPAとNEPA訴訟
2 問題の整理
3 ルハンI・II判決以前の控訴裁判所判決
4 全米野生生物連盟事件(ルハンI判決)
5 野生生物の防衛者事件(ルハンII判決)
6 ルハンII判決以降の控訴裁判所判決
7 判例の分析と要約
第2節 エイキンズ事件
第6章 レイドロー事件判決とその波紋
第1節 レイドロー事件
第2節 レイドロー事件以後の控訴裁判所判決
1 「事実上の損害」に関する控訴裁判所判決
2 「手続的損害」、「情報的損害」に関する控訴裁判所判決
3 規則制定を争う原告の「損害」立証の程度
第3節 レイドロー事件以後の最高裁判所判決
第7章 市民訴訟と原告適格
第1節 市民訴訟の概要
1 市民訴訟の意義
2 市民訴訟の沿革
3 主要な市民訴訟条項
第2節 市民訴訟の手続的要件
第3節 市民訴訟の原告適格
1 「事実上の損害」の要否(ルハンII判決)
2 団体の原告適格
3 過去の違法行為に対するペナルティの賦課
第4節 スチール会社事件
第5節 市民訴訟と訴訟手続上の制約
第6節 市民訴訟の推移と評価
第8章 動物に原告適格はあるのか
第1節 種の保存法と捕獲禁止規定
1 種の保存法と「捕獲」の禁止
2 ESAの捕獲禁止規定
第2節 ハワイ島マウナケアにて
1 パリラ(キムネハワイマシコ)
2 事件の発端
3 パリラI判決
4 パリラII判決
5 パリラIII判決
6 パリラIV判決
第3節 スイートホーム事件
1 事実の概要
2 最高裁判所判決
第4節 フロリダ海岸のウミガメ
1 ウミガメの直面する過酷な生存状況
2 アカウミガメI判決
3 その後の本案審理
4 アカウミガメII判決
5 アカウミガメIII判決
6 アカウミガメ判決の波紋
第5節 パリラIV判決を引用して動物の原告適格を認めた判決
1 マダラウミスズメ事件
2 アカウミガメ事件
第6節 原告適格を否定された動物達
1 ハワイガラス(アララ)
2 イルカ(愛称カマ)
3 オポッサム
4 ギンザケ
5 判例集に登場するその他の動物達
第7節 そして、クジラ・イルカ
初出一覧
判例索引
事項索引
●著者紹介
畠山 武道
1944年 北海道旭川市生まれ
1967年 北海道大学法学部卒業
1972年 北海道大学大学院法学研究科博士課程修了
1973年 立教大学法学部専任講師。その後,同助教授,教授
1989年 北海道大学法学部教授
2005年 上智大学大学院地球環境学研究科教授,現在にいたる
主 著
『アメリカの環境保護法』北海道大学図書刊行会,1992年
『環境法入門』〈共著〉日本経済新聞社,初版2000年,第2版2003年,第3版2007年
『環境影響評価実務—環境アセスメントの総合的研究』〈共著〉信山社,2000年
『自然保護法講義』北海道大学出版会,初版2001年,第2版2004年
『生物多様性保全と環境政策—先進国の政策と事例に学ぶ』〈共著〉北海道大学出版会,2006年)