商品説明
村上 隆編著
判型: B5 上製
頁数: 450
ISBN: 978-4-8329-6371-9
Cコード: C3060
発行日: 2003-02-28
●本書の特徴
サハリン島北東部大陸棚で進められている,石油・天然ガス開発とそれに伴う海洋汚染の蓋然性に関する問題を,自然科学・社会科学・人文科学による学際的立場から詳細に分析。オホーツク海圏の資源開発と環境保全の二律背反を検討,その環境面に力点をおいて解決の方途を探る共同研究の成果。
●目次
まえがき
I サハリン大陸棚の開発
第1章 サハリン大陸棚の石油・天然ガス開発………村上 隆
はじめに
1.旧ソ連における海洋石油開発の発端
2.サハリン沖での石油開発に対する旧ソ連の対日アプローチ
3.サハリン—Iプロジェクトの概要
4.サハリン—IIプロジェクトの概要
5.その他のサハリンプロジェクトの状況
6.生産物分与法(PS法)の採用
7.サハリンプロジェクトの開発の利点
8.サハリンプロジェクトの問題点
第2章 サハリン大陸棚開発と水産資源利用者の立場………荒井信雄
はじめに
1.ロシアにおける水産資源の管理・利用システム
2.現行の水産資源配分システムのもとでの漁業企業の行動
II 油防除体制
第3章 ノルウェーにおける大陸棚開発関連の危機管理体制………皆川修吾
はじめに
1.危機管理システムの必要性
2.環境・開発行政機構
3.汚染事故管理体制
4.国際協力
5.汚染防除対策・対応の公共性
6.結論
第4章 アラスカ、英国における石油流出に関する危機管理体制………村上 隆
はじめに
1.危機管理体制の法的基盤
2.緊急時対応計画の計画化
3.指揮系統
4.ESIマップの作成
5.分散剤(油処理剤)の使用
6.地域住民の参加
7.国際協力
第5章 ロシアと日本における石油流出に関する危機管理体制………皆川修吾・村上 隆
はじめに
1.ロシア
2.日本
おわりに
第6章 海岸地域の管理と環境保全——日米の比較から………畠山武道
はじめに
1.日本の海岸法制の現状
2.アメリカ合衆国の海岸と土地利用規制の特徴
3.沿岸域管理法(CZMA)の制定
4.適合審査を巡る州と連邦の確執
5.面源汚染規制プログラム
6.CZMAの実績
III 油汚染の影響と補償
第7章 界面活性剤(ノニルフェノールエトキシレート)が沿岸底生二枚貝に与える影響
………中尾 繁
はじめに
1.材料および方法
2.結果
3.考察
第8章 油濁汚染による損害の賠償補償問題——ナホトカ号事故を事例として………吉田文和
はじめに
1.現行の油濁損害賠償制度
2.ナホトカ号事故への条約の適用
3.損害賠償・補償の範囲についての基準
4.ナホトカ号事故による被害の全容
5.国際基金による対応
6.まとめ
IV 流氷の勢力の変化と氷海
第9章 流氷と地球環境………青田昌秋
はじめに
1.流氷と海氷
2.世界の海氷分布
3.オホーツク海の流氷
4.流氷と地球環境のかかわり
5.海洋の大循環と流氷
6.流氷と海洋生物環境
7.流氷の功罪——流氷と浜の人々の暮らし
8.流氷勢力の減少——自然からの警告
9.オホーツク海を守ろう
おわりに
第10章 オホーツク海・北海道沿岸域における流氷勢力の減少傾向(1892-2000年)
………青田昌秋
はじめに
1.観測域および資料
2.流氷勢力の定義
3.1892—1929年の流氷勢力の算出
4.網走の流氷勢力および気温の代表性について
5.網走における過去110年間の気温と流氷勢力の年々変動
6.平均気温と流氷勢力の関係
7.網走における流氷勢力と平均気温の長期変動
8.海水温降下と氷厚についての理論的考察
おわりに
第11章 タンカーの氷海運航上の技術的問題………北川弘光
はじめに
1.タンカー
2.航行上の問題
3.ポーラー・コードとアイス・クラス
4.油流出をもたらす作業
5.ポートステートコントロール(PSC)
6.運航量の増加と人為的ミス
おわりに
V 流出油の対応準備
第12章 地理情報システムによるサハリンの地域環境分析………山村悦夫
はじめに
1.モデル規範適応理論
2.地理情報システムと衛星測位システム
3.サハリン島の環境と開発の分析
4.結論
第13章 流出油の漂流軌跡の想定と回収方法………佐伯 浩・大塚夏彦
はじめに
1.海面に流出した原油
2.流出原油の漂流軌跡の想定
3.想定事故による被害の検討
4.流出油の回収技術
5.まとめ
第14章 環境脆弱性指標地図(ESIマップ)をどのように作るか………濱田誠一
はじめに
1.NOAAのESIマップ
2.ナホトカ号事故に見られた海岸形態の影響
3.ESIマップの整備に向けた情報収集状況
4.ESIマップの試作内容
おわりに
VI 開発がもたらす社会的影響
第15章 移行社会における環境意識——サハリン沖石油・ガス開発に関する市民の意識調査
………赤羽恒雄・Anna Vassilieva
はじめに
1.1998年調査
2.2000年4—5月調査
3.結論
第16章 石油・天然ガス開発の原住民に及ぼす影響………井上紘一
はじめに
1.サハリン・エコウオッチのリシーツィン事務局長
2.アボリゲン・サハリナ社のクルマングジノヴァ総支配人
3.サハリン州原住民協議会のリマンゾ会長
4.国営小企業ワールのボリソフ社長
5.ニブフ民族の作家サンギ
6.牧夫リーダーのマカロフ
資料
1 ロシア連邦の生産物分与法について
2-1 生産物分与修正法について
2-2 生産物分与協定(PSA)の準備および実施に関与する連邦機関
3 ロシア連邦の大陸棚法について〔抜粋〕
4 ロシア連邦の地下資源法について〔抜粋〕
5 ロシア連邦の水法典〔抜粋〕
6 石油・石油製品の事故による流出の防止と除去に関する
緊急対策についてのロシア連邦政府決定
7 石油・石油製品の事故による流出の防止と除去に関する
計画作成にあたっての基本的な必要条件
8 ロシア連邦の海洋汚染の通知手続きに関する指令
9 ロシア連邦の環境保護法について
10 ロシア連邦の環境監査について〔抜粋〕
11 サハリン州内の流出油防除に関する臨時規制
あとがき
索引
●著者紹介
村上 隆
北海道大学スラブ研究センター教授*