商品説明
オーストラリア文学の地平 ― 「主体の消滅」を問う
有満保江 著
定価:4,950円(本体価格4,500円+税)
判型:四六 上製
頁数:288
ISBN:978-4-8329-6906-3
Cコード:C3098
発行日:2025-05-25
●本書の特徴
グローバル化が進行する中、国民国家を背景とした小説は大きく変容している。本書はその最先端を歩む、アボリジナルを含む多文化社会オーストラリアの文学に即し、作者という「主体の消滅」を検証する。英語圏文学を超え世界文学の新しい可能性を探る野心作。
【この本の出版は、豪日交流基金を通じて、オーストラリア政府外務貿易省の助成を受けています】
●目次
まえがき
第1章 ポストコロニアル作家
はじめに
1 祖国を失った作家たち サルマン・ラシュディとV・S・ナイポール
2 祖国を離れた作家たち ブライアン・カストロとカズオ・イシグロ
おわりに
第2章 文学にみる他者性:日本とオーストラリアの場合
はじめに
1 オーストラリア作家が描くオーストラリアの日本人
2 日本作家が描くオーストラリアの日本人
おわりに
第3章 他者との融合:リチャード・フラナガンと松尾芭蕉
はじめに
1 捕虜収容所と泰緬鉄道
2 ドリゴ・エヴァンズの愛の物語
3 The Narrow Road to the Deep Northと『おくのほそ道』
おわりに
第4章 無国籍作家ナム・リーの短編小説集『ボート』
はじめに
1 ナム・リーの文学的挑戦
2 エスニシティとフィクション
3 他者を他者の視点で描く
おわりに
第5章 主体の消滅〈その1〉:パトリック・ホワイトの後期の小説の場合
はじめに
1 『二度生まれ変わる』における主体の消滅
2 『多くの記憶が一つになる』における主体の消滅
おわりに
第6章 主体の消滅〈その2〉:J・M・クッツェーの『スローマン』の場合
はじめに
1 『スローマン』における主体の消滅
2 エリザベス・コステロの役割
3 クッツェーと主体の消滅
おわりに
第7章 主体の消滅〈その3〉:ミシェル・ド・クレッツァーの『旅の問いかけ』の場合
はじめに
1 移動する主人公《ローラの旅》
2 移動する主人公《ラヴィの旅》
3 ヴァーチャルな世界への旅
4 気候変動と主体の消滅
おわりに
第8章 近代小説と物語:アレクシス・ライトの『地平線の叙事詩』
はじめに
1 アボリジナル文学と叙事詩
2 近代小説と物語
おわりに
あとがき
索引(人名・事項)
●著者紹介
有満 保江(ありみつ やすえ)
同志社大学名誉教授。
日本女子大学大学院文学研究科(英文学専攻)、オーストラリア国立大学大学院(オーストラリア文学専攻)修了、文学修士。
主な著書に『オーストラリアのアイデンティティ:文学にみるその模索と変容』(東京大学出版会、2003年)、共編著にContemporary Australian Studies(音羽書房鶴見書店、2017年)などがある。編訳書に『ダイヤモンド・ドッグ:《多文化を映す》現代オーストラリア短編小説集』(現代企画室、2008年)があるほか、企画・監修を務めた「オーストラリア現代文学傑作選」シリーズ(現代企画室、2012-2023年)のなかの、ミッシェル・ド・クレッツァー著『旅の問いかけ』(共訳、2022年)、アレクシス・ライト著『地平線の叙事詩』(訳、2023年)などがある。
(本書刊行時の情報です)